「みんなで分かち合える優勝です」
サンロッカーズ渋谷は78-73で川崎ブレイブサンダースを下し、5年ぶり2度目の天皇杯優勝を成し遂げた。
5年前の優勝を知る広瀬健太は、多くのメディアから「以前の優勝との違い」について聞かれたという。それでも、広瀬は自然体で「苦しいシーズンが続いたというのはありますが、比べられないのが正直なところです。純粋にうれしい」と語る。
SR渋谷は昨シーズンから7人のメンバーを入れ替え、新しいチームへと生まれ変わった。皆でタイムシェアし、それぞれがコート上ですべてを出し切ることでタイトルをつかんだ。当時とはチームメートやリーグの状況も異なり、比較ができないのは当然だ。そして、組み合わせや相手チームの状況などを加味した上で、今回の結果には自信があったと明かした。
「誰が出てもいいわけじゃなくて、誰が出ても自分の持ち味を出せるチームです。今シーズンは手応えがあったので、ジャイアントキリングじゃなく積み重ねたモノが出たなと。組み合わせもそうですし、いろいろな運とかが重なった一発勝負。これをモノにできないようじゃ、という思いもありました」
広瀬が言うようにSR渋谷には運もあった。決勝に進出した川崎は文字通りの満身創痍であり、リーグ戦での順位を考えればファイナルラウンドの組み合わせもSR渋谷に分があったという見方が強く、準決勝の試合時間もSR渋谷のほうが早かった。
だが、こうした利があったとしても、SR渋谷が実力で優勝をつかみとった事実に変わりはない。広瀬も「今回優勝したのは、たまたまこの大会が良かったからじゃなくて、新チームが始動してから積み上げた結果だと思っています」と胸を張った。
そして、ロスター入りしたすべての選手が出場する、文字通り全員バスケでの優勝となり、「みんなも充実感を持ってこの優勝を味わっていると思うし、みんなで分かち合える優勝です」と笑顔を見せた。
「怖いと思われてることが多いみたい」
今でこそSR渋谷の先発として活躍している広瀬だが、昨年3月31日には、左ひざ前十字じん帯断裂の重傷を負った。選手生命も危ぶまれるケガであり、広瀬も「このまま復活できるのかどうか」と不安に陥ったそうだが、結果的にこのケガが広瀬とチームを好転させた。
「33歳でケガをして、ここから頑張れるところを見せられれば周りの人に勇気を与えられると思いました。逆にチャレンジできるチャンスをもらったと。淡々と過ごすのではなく、未知なことにチャレンジできたのが良かったですし、前向きにリハビリも頑張れました」
広瀬は寡黙にプレーするタイプで、クールなイメージが強い。実際、「若い選手や敵チームの選手からは怖いと思われてることが多いみたいで、そう思ってましたって言われます(笑)」と、広瀬も言う。
だが、今シーズンの広瀬は、若手とも分け隔てなくコミュニケーションを取る姿が目立つ。以前は自分にフォーカスすることが多く現在のようなコミュニケーションの取り方をしてこなかったという。こうした変化もケガがきっかけのようだ。
「ケガをしてベンチから見る時間が長くなった時に、自分だけにフォーカスするのではなく、チームが勝つためにはどうすれば良いのかという目線になったのはあります。ベテランが盛り上げると若い選手も取っつきやすいですし、本当はもともとこういう性格なので。これが好転というのであればそうですね(笑)」
「僕らは積み上げている途中」
久しぶりにビッグタイトルを獲得したSR渋谷。今後は初年度以来出場を果たせていないチャンピオンシップ進出が最低限の目標となる。
現在19勝9敗で東地区3位と、ワイルドカードでのチャンピオンシップ出場圏内につけてはいるが、チャンピオンシップの先にある栄光を目指すには、順位にもこだわる必要がある。
広瀬も「今が100%だとしたら、150%にしないと優勝はできないと思う」と、さらなるチームのレベルアップに意欲を燃やし、「僕らは積み上げている途中なので、上積みを増やし、チャンピオンシップに出場して2冠を勝ち取りたい」と、最大の目標を語った。
大ケガを乗り越え、チームとともに生まれ変わった広瀬。悲願達成のためには、これからも彼の存在が欠かせない。
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