経験の浅い22歳がローテーションの一角で個性を発揮
小野寺祥太は22歳。チームメートの中山拓哉のように今年の春に大学を卒業したルーキーたちと同学年だが、高校卒業と同時に岩手ビッグブルズに加入したため4シーズンのプロ経験がある。地元の岩手での4年間でシーズンを重ねるごとにプレータイムを伸ばしてきた小野寺は、この夏に秋田に加入した。スタメン出場5試合、ここまで1試合平均約20分のプレータイムを得て開幕からの11連勝に大きく貢献している。
B1を戦っていた昨シーズン、秋田のポイントガードは安藤誓哉が33.8分出場とほとんどの時間を担っていた。しかし今シーズンはタイムシェアを徹底。安藤が去ったポイントガードは36歳の水町亮介、30歳の徳永林太郎、そして若い小野寺の3人がローテーション起用されている。
若い自分が、チームに入ってすぐこれだけのプレータイムを得られるとは思っていなかった。「そこは本当にチャレンジでした。他のポイントガードの選手に勝てるのか不安はあったし、練習から苦しいところもありましたが、先輩方のアドバイスのおかげで今があります」と小野寺は言う。
「水町選手はコートでコントロールできますし、ディフェンスでプレッシャーをかけられます。徳永選手はエネルギッシュにディフェンスやルーズボールに絡むし、得点能力もあります」と先輩たちを評する小野寺。自分については「前からプレッシャーをかけ、アグレッシブにアタックすることが求められています」と話す。
自分がどんなポイントガードなのか、そのスタイルはこれから作っていくものだ。昨シーズンまでの小野寺はシューティングガードであり、本格的にポイントガードに取り組むのは秋田のヘッドコーチ、ペップ・カナルスによりコンバートされたこの夏から。試行錯誤の中で結果を出しているのが秋田加入から現在までの小野寺なのだ。
シューティングガードからのコンバートは「大変」
ポイントガード転向を言い渡された時のことを「不安のほうが大きかったです」と明かす。キャリア初の移籍と同時にコンバートされるのだから、不安を抱くのも無理はない。しかし、激しいディフェンスを第一に掲げるコーチペップの下、前からプレッシャーをかける役割を小野寺は全力でこなしている。「これまでやったことのないプレーを求められているので最初は大変だったし、今もまだミスが多いですが、ペップが求めることを確実にやるのが今の目標です」
ポイントガードに転向した彼にとって一番の課題は試合のコントロール。ポイントガードだけが託され、経験がモノを言うこの役割を小野寺は猛勉強中だ。「コントロールすることはすごく難しいです。常に試合の状況を見てコールを出してボールを持っていく、その部分ですごく苦労しています」
ポイントガードとしての経験は浅くても、相手のプレッシャーが来てもボールをコントロールし続け、状況を見てコールを出し、チーム全体を動かさなければならない。悩めるチーム最年少にとって心強いのは周囲のサポートだ。「みんな僕が言ったプレーをしっかり遂行してくれるので、その点はすごく助かります」と言う小野寺は、加入当初のことを振り返り「先輩たちがすごく明るく接してくれて、すぐに馴染めました」と周囲への感謝を忘れなかった。
『B1仕様』のプレーヤーを目指して切磋琢磨
小野寺の強みは今シーズンここまで平均7.5得点を記録している得点力。本人も「得点にはアグレッシブに絡んでいるので、あとはもう少しアシストを増やしていければいいですね」と、ディフェンスやゲームコントロールが話題だった時とは違って自信をのぞかせる。「もともとドリブルは得意じゃなかったのですが、秋田に来てからの数カ月で上達したと感じているんです。ターンオーバーも少ないので、ドリブルはうまくなったと思います」
指揮官ペップは「全員が戦力で、そこに序列はない」というポリシーの持ち主。プレータイムをシェアするのはもちろん、スタメンも日替わりで、それは試合開始直前まで選手にも明かされない。ただ、この方針は選手のモチベーションを常に刺激するという意味でプラスに働いている。若い小野寺にとっては特にそうだ。「練習の日はもちろん、試合前のアップの間もヘッドコーチにアピールするつもりでエネルギッシュにやっています。先発でもベンチでも、いつでも準備できているのが大事だと思っています」
地元の岩手を離れて秋田にやって来たのは、もっともっとレベルアップして、B1でプレーするため。だから今シーズンのB1昇格は最低限のノルマで、小野寺はこの1シーズンで『B1仕様』のプレーヤーになるべく切磋琢磨している。開幕から11連勝、チームには勢いがあり、小野寺もそこに貢献している自信がある。「B1を目指して、この調子で頑張っていきます」と力強く語る、若きポイントガードの成長のスピードはまだまだ上がりそうだ。