吉田亜沙美

「私がボールを持てばみんな必ず走ってくれる」

皇后杯ファイナルラウンドの準々決勝、JX-ENEOSサンフラワーズはアイシンAWウィングスと対戦した。

立ち上がりこそ動きが重く、思い切りの良さでアイシンAWが上回ったが、それも開始数分のこと。リバウンドを確実に確保してはポイントガードの吉田亜沙美にボールを託し、そこから相手の急所を鋭く突くJX-ENEOSのバスケットが機能し始めると、吉田から渡嘉敷来夢のハイロー、渡嘉敷のスクリーンを受けた吉田のミドルジャンパー、縦から横へと距離のあるパス2本で完全に崩しての宮澤夕貴の3ポイントシュートと、取るべき選手が立て続けに得点を奪う。アイシンAWはたまらずタイムアウトを取るが、走り始めたJX-ENEOSはもう止まらなかった。

「ディフェンスとリバウンド。ここから走れるというのが強み。私がボールを持てばみんな必ず走ってくれる」

そんな言葉通りのプレーで攻守の良い流れを作った吉田亜沙美は、アイシンAWがタイムアウトを取ったタイミングでベンチに下がる。次の出番は後半の頭から。ここでも5分半のプレータイムでチームを勢いに乗せ、後はベンチでチームメートの戦いぶりを見守った。チームは75-41で快勝。決勝までは3連戦、その初戦で吉田は11分20秒とプレータイムを制限しながらも、4得点7アシストを記録している。

「体力がまだ戻っていないので、そこが一番の不安要素ではあったんですけど、疲れてきたらフレッシュな選手が出てこれるので、まずはゲームの流れを作ってあげるのが私の役割だと思っています。今日はちょっと遅くなりましたが、できたと思います。明日は出だしから周りの選手の良さを引き出せるようにやっていきたい」と吉田は自身の仕事を振り返る。

吉田亜沙美

皇后杯優勝に「自信はあります」

一度は引退したが、現役復帰を決断。「試合にちょこちょこ出るようになった時よりはもつと思うんですけど、明日のトヨタさんだったり、強いチームとやった時にどれだけやれるか。出だしであんまり飛ばしすぎないように、ペース配分を考えてやっていきたい」と言うように、まだコンディションが100%ではなくプレータイムは伸びないにせよ、スキルや経験など『吉田亜沙美らしさ』に錆び付いた部分は一切ない。何よりバスケットボールを楽しむ気持ちを取り戻すことができた。

「6カ月間バスケットから離れてしっかり気持ちは休めました。それで戻って来て、みんなとまたバスケットができて、開幕してからすごく楽しい思いをさせてもらっています。皇后杯でチームに貢献することはその恩返しだと思っています。ずっと一緒にやってきた選手とまたバスケットができるっていうのは、すごく幸せだと思います」

今日の準決勝ではトヨタ自動車アンテロープスと対戦する。打倒JX-ENEOSの一番手と呼ぶべき相手だが、「個々が強い、最後のシュートの確率も良い」と評価しながらも「そこを抑えることが大事になってくる」と、ディフェンスとリバウンドから自分たちのバスケットに持ち込む考えにブレはない。

一度は現役を引退したことで失ったものを取り戻していく過程で、自分とチームへの自信もまた元に戻りつつある。それを確実なものとするためにも、この皇后杯を落とすわけにはいかない。吉田は7連覇へ向けて「自信はありますし、そこを目標にチームとしてやってきています」と言う。

「どこが相手でもJXのバスケットをすることで、結果はついてきます。しっかり40分間、自分たちのバスケットをすることが大事になってきます」