「最終的な目標はチームジャパンがどうなるか」
3人制バスケ『3×3』の男子日本代表は東京オリンピックに向けた強化を進めている。
昨年、5人制のバスケ日本代表が21年ぶりに自力でのワールドカップ出場を果たしたことは記憶に新しいが、その出場権を争うアジア2次予選で、ケガのニック・ファジーカスに代わって2試合で日の丸を背負ったアイラ・ブラウンが、東京オリンピックでは3人制で日の丸を背負うかもしれない。
年が明けてすぐの強化合宿に参加したアイラは、抜群の跳躍力から繰り出される豪快なダンクで存在感を発揮。ディレクターコーチのトーステン・ロイブルが「選手選考は難しいチョイスになってくる」とコメントしたように、現在は様々な選手の組み合わせを試している段階だが、突破力のあるスラッシャーやシールの上手い選手、2ポイントシュートを決められる選手など、一芸に秀でた選手を求めているとロイブルコーチは明かす。
その言葉通りであるならば、10名の中でトップクラスの身体能力を持つアイラが代表に選出される可能性は高い。
アイラは「誰もが与えられる機会ではないことは分かっている」と、代表候補に入ること自体が光栄だと理解している。それでも、「自分が外れたらその選手を応援するし、自分が選ばれてもみんなが応援してくれると信じている。最終的な目標はチームジャパンがどうなるか」と、自分よりもチームのことを案じている。
ファジーカスが日本国籍を取得し、5人制の日本代表に定着した際も「日本のためには良いことだと思う。ニックの代表入りを応援する」と発言しており、チームファーストの姿勢が変わっていないことがうかがえる。
言葉だけを聞くと、競争意識が乏しいように思えるが、決してそうではない。どんな時も競争意識を持って行動しているからこそ、特別感がないだけだ。
「トップの世界で競争があるのは当たり前。Bリーグでもたくさん友達はいるけど、コート上では『絶対に倒してやる』という気持ちでやっている。アメリカのシステムではチームに残るための競争が常にあるんだ。そういう戦いでの楽しみ方はアメリカで覚えたし、このチームでの戦いもそれと同じだね」
指揮官の意図を理解し、それを体現
練習の最後は3チームに分かれて実戦形式の試合が行われた。目まぐるしく攻守が入れ替わりマークマンもスイッチが続く中、アイラはペイントエリアで面を取り、ゴール下のシュートを次々と沈めていった。
「特に今日はミスマッチが生まれて、小さい選手が自分についてきた時にポストアップしたよ。それがロイブルコーチが求めていることだと思って、意識的にシールしたんだ」
5人制と比べ、2人少ない分スペースは広がる。Bリーグではダブルチームに行くシーンをよく目にするが、3×3ではヘルプのリスクが5人制よりも高まるため、攻守ともに個での打開が必要となる。そして、5人制と同様に、インサイドは日本のウイークポイントになりやすく、アイラはそこを自らが補うことでチーム力が増すと考えている。
「実際、インサイドゲームは日本に一番足りないところだと思っている。もし自分がその部分をカバーできれば、アウトサイドの選手も楽になる。自分の役割を果たしながら、どうすればチームに貢献できるかを探しているんだ」
3×3は5人制以上に高さやパワーの差がスコアに表れやすい。だからこそ、世界に比べて体格で劣る日本はスピードとシュートの正確性で勝機を見いだすしかなく、アイラも「日本は速いしシュート力もある。自分も負けずにそれについていかないといけない」と、日本のストロングポイントを理解している。
だが、そうした強みを最大限に生かすには、スクリーンやリバウンドなど周りのサポートが必要不可欠だ。得点能力がありながらもチームプレーを重んじ、なおかつ日本人離れした肉体を持つアイラであればそうした役割も担うことができる。日本にとってこれ以上心強い存在はいないはずだ。
3×3バスケットボール男子日本代表チーム 第4次合宿参加メンバー
アイラ・ブラウン(F/大阪エヴェッサ)
小松昌弘(F/ TOKYO DIME.EXE)
落合知也(F/越谷アルファーズ・TOKYO DIME.EXE)
小林大祐(G/茨城ロボッツ・UTSUNOMIYA BREX.EXE)
永吉佑也(F/京都ハンナリーズ・KYOTO BB.EXE)
藤高宗一郎(F/大阪エヴェッサ・EVESSA.EXE)
橋本拓哉(G/大阪エヴェッサ)
保岡龍斗(G/秋田ノーザンハピネッツ・SEKAIE.EXE)
杉浦佑成(F/サンロッカーズ渋谷・TACHIKAWA DICE.EXE)
西野曜(F/専修大学3年・BEEFMAN.EX)