文=大島和人 写真=B.LEAGUE

5選手が2桁得点を挙げるバランスの良い攻めを披露

5勝3敗同士で迎えた西地区の首位攻防戦。琉球ゴールデンキングスは21日、22日の島根スサノオマジック戦で痛い連敗を喫していた。中2日ということもあり沖縄へ戻らず『合宿』を継続して乗り込んだ京都ハンナリーズ戦で、チームはカムバックに成功した。

佐々宜央ヘッドコーチが「出だしのディフェンスを強調した」と振り返るように、第1クォーターで京都に許したポイントははわずか8点。アグレッシブに守った結果としてファウルは増えたが、フリースローが9本中3本成功という低確率だった京都の不出来にも助けられた。

京都の浜口炎ヘッドコーチは「第1クォーターの出だしでピック&ロールのディフェンスが機能せず、イージーなスコア、特にゴール下のレイアップが増えてしまった」と悔いる。18-9のダブルスコアで第1クォーターは終了した。

オン・ザ・コート数が「2」同士になった第2クォーターは点差こそあまり離れなかったが、琉球は津山尚大、須田侑太郎らを中心にアウトサイドからのシュートが高確率で決まる。前半の3ポイントシュート成功率は良い流れから打てていた琉球の6本中3本成功に対して、京都は17本中3本と低迷。琉球が41-30で前半を折り返す。

京都も7点差、8点差まで追い上げる時間帯はあったが、試合は後半も琉球ペース。京都はジュリアン・マブンガ、永吉佑也らの3ポイントシュートが決まらず、ジョシュア・スミスのポストも脅威は限定的だった。

最終スコアは84-62。琉球はハッサン・マーティンがペイント内の破壊力を見せて19得点を挙げる一方で、アウトサイド陣も好調。津山と須田が12得点ずつを挙げ、岸本隆一とアイラ・ブラウンも含めて5名が2桁得点を記録した。

「守備で相手を苦しめつつオフェンスを発展させていく」

琉球のアシスト数22は、ボールをシェアしただけでなく淀みなく動かした証明でもある。

岸本隆一は「ゲームを作る立場として5人が2桁得点というのは気持ちいい」と顔をほころばせつつ、展開をこう振り返る。「中2日という短い期間で修正できたのは、長いシーズンを戦っていく上ですごく自信になる。まずディフェンスをハードに、疲れている中でもそれぞれがよりハードにできた。オフェンスは打つべきタイミングで打って、入る入らないは別にしても、チームとしてその次のポゼションに良い流れで入っていけた。オフェンスが重くならなかったのが今日はすごく良かった」

佐々ヘッドコーチはチームオフェンスについてこう語る。「まだ成長段階なので、しっくりしていないところはある。今日は津山、須田が12点だけど、0点という試合もある。よく『ポテンシャルがある』という人いるけれど、ポテンシャルって潜在じゃないですか。それを発揮し続けて、安定した力を出していかなければいけない」

一方で岸本は別の視点で津山、須田のプレーをこう評価する。「彼ら2人はすごいディフェンスを頑張って、0点なら0点なりの仕事をしてくれている。オフェンスの波があるように見えるんですけど、チームとしては彼ら2人が引っ張っていると思う」

岸本はこうも言う。「点数が取れない、でもディフェンスは頑張っているというのがウチの負けるパターン。ベースはすごくできてきたと思うので、ディフェンスで相手を苦しめつつ、プラスアルファでもっともっとオフェンスの部分を発展していかないといけない」

確かに直前の島根戦は69点、56点と攻撃が不発に終わった。京都戦は84点を挙げ、波が良い方に出た一戦だったが、オフェンスの安定感については「まだまだ」というチーム事情も分かる。

ケガ明けの古川は出場なし「ゆっくり休んでおけ」

島根戦、京都戦はケガ明けの日本代表、古川孝敏もベンチに入っていた。佐々ヘッドコーチに古川の復帰について尋ねると「まだ完全な状態ではないですし、もう少し時間がかかると思います」と説明しつつ、チーム作りも絡めてこう続けた。「ヘッドコーチとしては、彼がいない間にチームを作りたいと思っている。古川が来るとやっぱりそれなりのプレーヤーだから、選手も頼ってしまう部分がありますから。むしろ僕は『ゆっくり休んでおけ』と言っています(笑)」

外国出身選手に依存してしまっているリバウンドも含めて、古川が合流すればチームにとっては大きなプラス材料だろう。しかし試行錯誤はある中でも津山と須田がプレータイムを増やし、チームの底上げができている。琉球の『波』の先に大きな期待を感じた、京都戦の快勝だった。