「コンフォートゾーンから抜け出すべき」
シクサーズは大晦日のペイサーズ戦に97-115で敗れ3連敗。ここ9戦で6敗目を喫し、東カンファレンスの5位へと順位を下げた。チームはジョエル・エンビード、ベン・シモンズを筆頭にNBA屈指のスターティングファイブが揃っているが、3連敗はこれで3度目と好不調の波が激しく、特にオフェンス面で安定感を欠いている。
ヘッドコーチのブレット・ブラウンはチームのパフォーマンスは最低の出来だったと話し、ジョシュ・リチャードソンは試合後のロッカールームでチームには責任感がないと吐き捨てた。不甲斐ない試合の翌日、チームミーティングが行われた。
エースのジョエル・エンビードは「ミーティングの中身は教えられないけど、俺たちは大丈夫だ。チームの士気も高いし、連敗から抜け出せることは分かっている」と現在のチーム状況が悲観的なものではないことを強調。しかし、チームのオフェンスについて聞かれると次のように回答した。
「チームの勝利のためには自分のコンフォートゾーンから抜け出してでも助け合うしかない。つまり、シュートが打てるスペースがあれば打つしかないんだ」
個人名は出していないが、エンビードのコメントはシモンズに向けられていると推測される。彼がシモンズに対する要求を公の場で伝えたのは今回が初めてではない。チームの勝利のためにシモンズはもっとシュートを打つ必要があるとはっきり言っている。ヘッドコーチのブラウンも「3ポイントシュートを1試合最低1回は打ってほしい」とシモンズに要求したことがある。
.@J_Rich1 ➡️ @BenSimmons25 ? pic.twitter.com/SXvUEynbwK
— Philadelphia 76ers (@sixers) December 31, 2019
チームリーダーとヘッドコーチからシュートを打ってほしいと公の場で要求されたにも関わらず、打たないということは彼は責任を果たしていないということになる。今シーズン彼の3ポイントシュートの試投数は5しかなく、成功は2本だけ。もともと彼はジャンプシュートを不得手とする選手。とはいえ、ルーキーイヤーを全休したケガを克服した今、弱点は唯一それだけで、あとは何でも高いレベルでこなすオールラウンダーだ。
シクサーズのタレントを引き出すのは、ハンドリングとフィジカルに長けたシモンズが個人能力で相手ディフェンスを揺さぶり、そこでできたズレを生かすパスを出しているから。ディフェンスもできるしリバウンドにも身体を張るシモンズにこれ以上を要求するには酷とも言える。
ただ、シクサーズがもう一つ上のレベルに行くには、エンビードが指摘するように「自分のコンフォートゾーンから抜け出してでも」という姿勢が必要だ。シモンズがジャンプシュートを苦手とし、3ポイントシュートを打たないことは相手も理解しており、その選択肢を除外することで守りやすくなっている。シモンズ自身も、それを理解しているからこそオフに3ポイントシュートを練習してきた。苦手なジャンプシュートを打つことで自分のリズムは少なからず狂うかもしれないが、相手チームにとっても守りにくいのは確か。相手が警戒していない以上、フリーで打つチャンスは簡単に作れるのだから、彼としては思い切って打っていく必要がある。
シモンズ本人は、どのチームにも好不調の波はあるものだとチームの現状を楽観視しているが、3連敗の相手はマジック、ヒート、ペイサーズと同地区のプレーオフ進出を狙うライバルだ。今の調子でもプレーオフ進出は固いにせよ、その先へと勝ち進むにはオフェンスの課題を改善する必要がある。そのためにはまず、シモンズは「自分のコンフォートゾーンから抜け出す」覚悟を決めなければならない。