文・写真=鈴木栄一

前半ラストの指揮官退場によりグラついた大阪

10月22日、千葉ジェッツがホームで大阪エヴェッサと対戦した。台風の影響によるあいにくの悪天候にあっても詰めかけた4833名におよぶ観客の声援を受け、富樫勇樹が31得点とチームを牽引し、77-70と前日に敗れた雪辱を果たした。

第1クォーター、大阪は快勝した昨日に続きオン・ザ・コート「2」で臨むと、ジーノ・ボマーレ、グレッグ・スミスの2ビッグマンによるインサイドを起点にしたオフェンスで主導権を握り、20-12と先手を取る。

しかし、第2クォーターに入ると、オン・ザ・コート数で第1クォーターとは逆に優位に立つ千葉が反撃。ギャビン・エドワーズ、トニー・ガフニー、アキ・チェンバースといったクイックネスに優れたメンバーによる堅守で大阪の攻撃を防いで自分たちの流れに持っていくと、残り約5分で同点に追いつく。

ここから大阪も盛り返していくが、ここで試合の明暗を分ける大きなアクシデントが発生する。残り52秒、判定に対しての不満を審判にぶつけたとして桶谷大ヘッドコーチがテクニカルファウルを宣告された。さらに、残り34秒のタイムアウト時、同じように審判に対しての不適切な発言、態度があったと判定され、2度目のテクニカルファウルで痛恨の退場処分を受けてしまったのだ。

大阪はこの時、ベンチメンバーも不適切な態度を取ったとされベンチテクニカルを受けるなど、残り約1分で千葉にフリースローを3本与えてしまう。そして富樫がこの3本をすべて成功させ、千葉が前半を36-32と逆転して終える。

第3クォーターに入っても、千葉の勢いは止まらず。ディフェンスリバウンド、ルーズボール奪取からの走る展開に持っていくと、富樫がこのクォーターだけで14得点と大活躍。千葉がリードを9点に広げて第4クォーターに突入する。

第4クォーター序盤、千葉はリードを15点差にまで広げるが、ここから大阪も意地を見せ、ジーノ・ボマーレ、デイビッド・ウェアの奮闘で残り約4分には再び6点差に詰め寄る。しかし、千葉はその後も富樫が要所で得点を重ねて逃げ切った。

「メンタルの部分でどれだけ一体感を持って戦えるか」

千葉の大野篤史ヘッドコーチは、「テンポの良いバスケを目指していますが、それをやるにはチーム全員でディフェンスをしっかりやらなければいけない。そのことをしっかりマインドセットしてゲームに臨めたのが良かったと思います。簡単なミスはありましたが、気持ちが切れることなく戦い抜けた。チームでやるという意識統一はできていました。それが、これだけシュートが入らなくても勝利につながった要因かと思います」と総括。なによりも守備をしっかり立て直せたことが勝利につながったと考えている。

また指揮官は、富樫の働きについては周囲のサポートがあってこそのものだったと強調する。「富樫が点数を取って勝利に導いてくれたのは間違いないですが、彼が快適にプレーできたのはチームメートのスクリーンにカットプレーなどフロアバランスを取る動きがあったからこそ。彼がポイントリーダーでしたが、今日は彼が調子が良いということをみんなが分かって、気分良くプレーしてもらうための動きができたからこそと思います」

また、「スキルの高い選手が揃っていてもそれだけで勝てない。メンタルの部分でどれだけ一体感を持って戦えるのかにしっかり集中していかなければいけないです」と、次戦に向けて締めくくっている。

中途半端で終わった『富樫対策』が敗戦の決定打に

大阪は終盤に粘りを見せるも、連勝にはあと一歩届かず。注目したいのは、昨日から富樫を激しいディフェンスで苦しめていた今野翔太を第4クォーターで起用せず、代わりに橋本拓哉がこのクォーターでフル出場だった点だ。この起用について、退場した桶谷ヘッドコーチの代役を務めていた穂坂健祐アシスタントコーチは、「自分の判断です。橋本選手をこのゲームで活躍してほしいという気持ちで出しました」と語る。

だが、橋本を起用し、木下博之を富樫のマッチアップに当てた作戦はうまく機能せず。富樫が「今野選手は身体が強く、そして機動力があるのでどこにでもついてこられる。この2日間を通してやりづらさは感じていました。最後、試合に出ていなくて個人的には良かったということはあります」と語っていたように、あくまで結果論ではあるが、勝負どころで勢いに乗っていた相手のエースを食い止める策を打たずに終わってしまったのは痛恨だった。

しかし、昨日の快勝に続き、今日も粘りの戦いを披露。桶谷ヘッドコーチが重視しているのは外国籍選手だけでなく、日本人選手がプレーするスモールフォワードやシューティングガードを含め、どのポジションからもバランス良く点の取れるバスケ。それに該当する今野と熊谷尚也がこの2日間ともに2桁得点を記録しており、チームの調子は確実に上がっている。