千葉ブースターに『岡田コール』で迎えられる
8日に行われた千葉ジェッツと京都ハンナリーズの第2戦、試合前にコートに出て来てウォーミングアップをする選手たちの中で、最後まで残っていたのが岡田優介だった。昨年夏に京都と契約した岡田だが、その前にプレーしていたのは千葉で、1シーズンだけの所属でも高いスキルとプロフェッショナル精神でファンの信頼を勝ち取っていた。
昨シーズンは千葉でのゲームが設定されておらず、岡田にとっては退団後初めてとなる船橋アリーナ。久々のコートの感触を確かめながらシュートを続ける彼を、千葉ブースターが盛り立てる。シュートが入るたびに大歓声が上がる中、岡田は次々とシュートを沈めていく。岡田は千葉ブースターに手を挙げて応え、ロッカールームへと戻っていった。
「僕が最後までシューティングで残っていたら、岡田コールで温かく迎えてくれました。昨シーズンは来ることができず初めて戻って来たので、それを楽しみながら。僕がいた頃からお客さんはたくさん入っていましたが、非常にパワーアップしていて、さすがだなと思いました」
かつての仲間、石井講祐との強烈なマッチアップ
試合は我慢の展開が続いた末に、最終クォーターを26-6と圧倒した京都が77-68で逆転勝利を収めた。昨シーズンから定評のあった終盤の爆発力は今シーズンも健在で、終始劣勢を強いられながらも食らい付き、最後にひっくり返した。ただ、これまで京都の痛快な逆転劇では必ず主役を演じてきた岡田は、この日は18分のプレータイムで3得点と脇役に回った。
これには理由がある。石井講祐が徹底的に岡田をマークしていたのだ。昨シーズン、三重県営サンアリーナでの対戦は1勝1敗。千葉が敗れた試合では岡田に5本の3ポイントシュートを含む24得点を許している。対策を打つのは当然だ。
NBLラストシーズンの千葉で、同じシューティングガードとしてプレータイムを分け合い、日々の練習で切磋琢磨した石井との対決を岡田はこう振り返る。「地味な駆け引きをボールのないところでもやりあっていて、お互い得点は少なかったかもしれないですけど、チームとしても個人としても対策を練ってきているその裏をかくような読み合いで、玄人好みのマッチアップができたと思います」
石井のマークは執拗で、待っていてもボールは受け取れない。鋭いダッシュで振り切る、大きく回り込む、オフボールスクリーンを使う……様々な駆け引きが高速で繰り広げられていた。「石井もそうだと思うんですけど、スカウティングして全部のプレーを見ているので、コールを見たり全体のバランスを見て、次に出てくるプレーを予想しながら先回りをする。先回りしたら次はこう来るだろうな、という読み合いですね」
3歳年下の石井を岡田はこう評価する。「ディフェンスが良く、シューターとして危険な選手なんですけど、よく知っているのでそこは先輩としてファウルをうまくもらったりとか、クセを良く分かっているので抑えどころを抑えたり。非常にバランスの良い選手で、これからまだまだ伸びると思うので、ライバルとして負けないように僕も頑張ります」
岡田は後半に入って石井から2つのシューティングファウルを誘い、そこで得たフリースローで3得点を決めている。さらには自分が打てないと判断すればシューターから意識を切り替え、3つのアシストを記録。苦しい時間帯にチームが踏み留まる上で貴重な仕事をやってのけた。それでも「勝ったことは満足ですけど、自分の出来はまだまだ」と素っ気ない。
「タフなシュートを打ってしまったのと、決めれるシュートも1本ありました。それをしっかり決めるのが自分の仕事です。そこは簡単に満足せず、個人としてはもっと良いパフォーマンスが出せたはずだと思っているので。でもまだ序盤なので、ここから仕上げていきますよ」
「一種のエゴですけど、そこは捨てずにやりたい」
8日の試合前の時点で千葉は開幕3連勝。リーグで最も勢いのあるチームとして優位にあると予想されていた。その千葉の『走るバスケ』を真っ向勝負で受け止め、ひっくり返す会心の勝利。岡田は「今年のチームはパワーアップしています。誰か一人ではなくどこからでも点が取れるという強みが証明できたと思います」と語る。
逆転劇を演じた最終クォーターに自身のプレータイムがなかったことについてはこう語る。「もちろん、第4クォーターの残り5分がバスケの醍醐味だと思っているので、そこでコートに立つことはいつでも準備しています。ただ今日はセカンドユニットが頑張って一気にひっくり返したところがあり、良い流れのままで行けたので、チーム力です。そこは僕は我慢して、いつでも言われれば準備してますけど、一つ良い勝ちがチームとしてできました」
「いつも自分が試合を決めてやる、そう思っています」と岡田は言う。
「勝負どころで自分によこせ、ゲームを自分が決めてやる、という気持ちがあります。先ほども言いましたが、第4クォーター残り5分を切ってから、そこで消極的にならずに『自分が決めてやる』って思いが出る。一種のエゴですけど、それを失ったら落ち着いたプレーヤーになってしまうので、僕はそこは捨てずにやりたいんです」
この日は脇役に回ったが、いつでも主役を張れるよう準備を整えている。『逆転の京都』で岡田が再び主役を演じる日は、そう遠くないうちに訪れるはずだ。