ディボンテ・グラハム

ケンバの役割を引き継ぐも、異なるプレースタイル

ケンバ・ウォーカーがフリーエージェントで移籍を選択したことで、ホーネッツは再建に舵を切ることになりました。しかし、プレーオフ争いをしていたこともありドラフト順位は12位と中位クラス。指名したPJ・ワシントンはそれなりに活躍していますが、近い将来にチームの絶対的な中心となる若手有望株とまでは言えず、セルティックスからテリー・ロジアーを獲得こそしたものの、チームの中核を誰にするのかを決めるのが難しいシーズンになると予想されました。

そんな中、2年目のデボンテ・グラハムが開幕から予想外の大活躍を見せています。ここまでプレータイム、得点、アシストでチーム最多を記録し、新たなスター候補として台頭してきました。ホーネッツは勝率5割には届かないものの、31試合経過時点で13勝18敗と成績を大きく落とすことなくシーズン序盤を戦ってきました。チームの象徴だったケンバを失い、若手中心に切り替えたチームとしては上々の序盤戦です。

グラハムの特徴は3ポイントシュートアテンプトが平均9.1本と多いこと。ケンバの9.3本と遜色なく、成功率も40%を超えており、まさにケンバの役割をそのまま引き継いだような形です。ただし、プルアップ3ポイントシュートの成功率も40%を超えており、チームメートからのアシストではなく、自分で仕掛けてのシュートを中心に組み立てるタイプのポイントガードという点では、ドライブも得意としていたケンバとは少し異なります。

小柄ながらフィジカルも強く、コンタクトを受けてもブレないグラハムは、ガード同士のマッチアップでシュートチャンスを作るのが得意で、フィールドゴールアテンプトの約6割が3ポイントシュートというアウトサイド中心の攻め方です。ディフェンス側もシュートへの警戒を高めており、強気に打ってくるグラハムを止めるため3ポイントラインの外からもプレッシャーを掛けます。その結果、インサイド側にスペースが生まれます。

ケンバならこのスペースにドライブで飛び込むところですが、グラハムは自分が作ったスペースをチームメートに使わせることを好むポイントガードで、シンプルにウイングにパスを出していきます。驚くようなアシストパスは少ないものの、しっかりと自分のマークを引き付けてからのパスになっているため、アシスト数も7.5と高水準になっています。

今シーズンのホーネッツはグラハムの19.1点を筆頭にスターター全員が2桁得点を記録するバランスアタックと、日替わりでトップスコアラーが変わるのが特徴です。これは相手ディフェンスの守り方によって空きやすいポジションが変わるのを狙うオフェンスだからで、ケンバに得点を取らせるパターンを作った昨シーズンとは異なる形です。ポイントガードのグラハムはまずは自分が得点を狙いつつ、スペースが生まれればパスを出してチームメートに任せます。

クラッチタイムでの強気なプレーもグラハムの魅力。シーズンが進むにつれてエースの風格も見えてくるようになりました。ホーネッツには注目を集めるスター選手はいませんが、グラハムだけでなくマイルズ・ブリッジスやPJ・ワシントンが攻守に奮闘しており、全員が戦う集団として再構築されています。

長きに渡ってホーネッツの顔としてプレーしてきたケンバの移籍はシャーロットのファンには感傷的なものでしたが、気持ちを前面に出して戦うグラハムという新たなスター候補の誕生に沸き立ってもいます。