「簡単に2点を取るために走る」
大阪エヴェッサはレギュラーシーズンの3分の1を消化して13勝7敗と好調なスタートを切った。過去2シーズンは6勝14敗、8勝12敗とスタートダッシュに失敗して苦しんだだけに、貯金6の価値をどの選手も肌で感じている。特に前節は千葉ジェッツを相手に1勝を挙げ、15日の第2戦には敗れたもののダブルオーバータイムにもつれる大接戦で、リーグ屈指の強豪を大いに苦しめた。
この2試合で大いに目立っていたのが橋本拓哉だ。『走るバスケ』を掲げて選手にハードワークを求める天日謙作ヘッドコーチの下、橋本は先発出場こそ1試合だが、先発の今野翔太や合田怜に代わって投入されると、攻守にエナジーを発揮してチームを盛り立てている。
「昨日勝てたのはチームにとってすごく大きいし、その勢いに乗って今日も勝てそうでしたけど、最後に詰めの甘さが出ました。富樫(勇樹)さんにやられましたが、千葉にやられたという感じはあまりないです」と、ダブルオーバータイムで1点差負けの激闘を橋本は振り返る。
昨シーズンの大阪は組織プレーの精度をどこまでも追求するチームだったが、今シーズンはスタイルが変わった。ただ、『走るバスケ』とは言っても、運動量や激しさを重視しないチームは存在しない。大阪のどこが変わったのか、橋本はこう説明する。
「意識の差ですね。ただ走るのではなく、ウイングが走るコースが決まっていて、それに引っ張られてビッグマンも走って、ガードがプッシュする形を夏から徹底して練習してきました。特に僕たちウイングが走れば真ん中が空いて、簡単に2点を取りやすくなります。その形を作るために走ることを徹底する。それが今の僕たちのやり方です」
「正直、今は楽しいバスケットができている」
橋本はオールラウンドな能力が売りのプレーヤーで、ひたすら走る役割をこなすのは簡単ではないはずだ。それでも開幕からイキイキとプレーして結果を残している。
「2シーズン前はほとんど僕がボールを持って、ピックするスタイルでしたけど、今は伊藤(達哉)が入って、合田はケガをしていますけど、(畠山)俊樹さんがハンドラーをやって、僕はシューターに徹するように変わりました。本当はハンドラーをやりたい気持ちもありますけど、今は走らないと試合に出られないので(笑)」
「最初は自分のプレースタイルとは違う戸惑いがありましたけど、今は結果もついてきていますし、天日さんがいつも言う、『良いスクリーンを掛けて走れば自分がオープンになる』という言葉を信じてやっています。今日もオーバータイムがあったとはいえ3ポイントシュートを8本打っていますし、チャンスは来ています」
開幕当初に見られたチグハグさは解消され、ここに来てディフェンスの遂行力が上がり、オフェンスでも連携が取れるようになって、大阪の『走るバスケ』は見応え十分なものになってきた。「やっぱりポイントはディフェンスです。ディフェンスがあるから走れるんだと思います。ウチには富樫さんみたいなスター選手はいませんが、全員で質を上げて、まんべんなく点を取っています。正直、今は楽しいバスケットができていると感じています」
「今シーズンはチャンス、チームの士気も高いです」
東地区偏重と言われるB1において、西の強豪クラブとしての地位を確立したいと大阪は考えている。その思いとは裏腹に過去3シーズンはチャンピオンシップ進出を逃しているが、今シーズンは現時点で西地区トップに立っている。
「いつもチャンピオンシップ圏内にも残留争いにも絡まない中途半端な位置にいましたが、今シーズンはチャンスだと僕自身も思います。その感覚があるからチームの士気も高いです」
今回の千葉との連戦は2試合ともにチケット完売。5415人、6472人が会場に足を運び、特に日曜の第2戦はスタンド最上段まで立ち見客で埋まる盛況となった。「富樫さんのおかげですよ」と笑う橋本だが、アリーナの盛り上がりに自分たちが応えなければいけないという思いもある。「今日のお客さんの何割かは初めて見に来たんだと思います。そういった人たちに『また来たいな』と思ってもらえる熱い試合をするのが僕たちの仕事だし、今日は勝ちを見せたかったですけどダブルオーバータイムの熱い試合を見せることはできました」
昨シーズンの橋本は不祥事により長期出場停止処分を受け、シーズン終盤の2試合でプレーしただけ。その頃は「お客さんの前に立つのが怖い」との不安を抱えていたが、「最初は怖かったのですが、今はバスケットにのめり込んでいるので、不安を感じなくなっています」と語る。
もっとも、大阪にとっても橋本個人にとっても、開幕からの20試合だけで評価が確立できるわけではない。肝心なのはここからのパフォーマンスだ。ここから年末までは過密日程、しかもサンロッカーズ渋谷との連戦、水曜ナイトゲームの京都ハンナリーズ戦を挟んで、アルバルク東京との連戦が続く。「強豪チームとの対戦が続きますが、ここで勝ち切ることができれば本当にチャンピオンシップが狙えます。逆にここで全然戦えないのであれば、チャンピオンシップに行ったとしても通用しないと思います。ここが勝負どころと受け止めて、絶対に勝ちたいです」
ここで大阪がステップアップして西地区の強豪の座に収まるのか。そのためには復活を遂げた橋本のハードワークが欠かせない。
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