「自分がチームを引っ張るくらいでないといけない」
9月1日から3日にかけて3地域で開催されたアーリーカップは、開幕まで1カ月前の開催とあって、各チームにとって調整の場という側面が大きかった。ただ、そうはいっても実績十分のスター選手ではない多くの新加入選手にとっては、新天地でプレータイムをつかむための貴重なアピールの場。このアピールに成功した一人が、琉球ゴールデンキングスからサンロッカーズ渋谷に加入した山内盛久だ。
ベンドラメ礼生が2日間とも欠場、さらに2日目の試合では伊藤駿が試合早々に負傷し、大事をとってそれ以降はプレーしなかったこともあって、山内は司令塔として初戦のアルバルク東京戦で約17分、2試合目の横浜ビー・コルセアーズ戦では約25分プレーした。特に横浜戦では8得点4アシスト2スティールで勝利に貢献。視野の広さを生かしたトリッキーなパスで会場を沸かすと、積極的にプレッシャーをかけていくディフェンスも含め、琉球時代からの持ち味をしっかり見せていた。
2010年に練習生で加入してから地元チームである琉球ゴールデンキングス一筋だった山内にとって、今回が初の移籍。ただ、「チームに溶け込むことには自分の性格上、問題はないと思っていました」とすぐに新しいチームにも馴染んでいる。
アーリーカップでのプレー面については、次のように振り返る。「琉球の頃よりも、もっと一つひとつのプレーに責任をもって自分がチームを引っ張るくらいでないといけないと思っています。アーリーカップではそれを課題にしていましたが、この点についてはまだまだなので、もっとチームを勝たせられるガードになっていきたいと意識する2日間でした」
強力ビッグマンを擁すも「スローテンポにはしたくない」
琉球時代は司令塔、シューティングガードの両方を経験してきたが、SR渋谷ではまずは司令塔としての役割を第一としている。そしてチームの活性化のためにも、貪欲にプレータイムを狙っていきたいと続ける。
「琉球の時は岸本(隆一)がいて、並里(成)がいて、彼らのバックアップの形で出場時間も、その時の調子の良し悪しで決定と安定していませんでした。SR渋谷ではスタメンとして狙える位置にまでいけるように、まずは自分のメンタルを持っていきたいです。それが、チームの助けにもなると思います」
SR渋谷はロバート・サクレ、ジョシュ・ハレルソンと強力なビッグマンがいるのが強み。それでも「スローテンポにはしたくないです」と山内は言う。「自分がこれまでやってきた速いテンポに引っ張っていけるように、まずはビッグマンも走らせる。落ち着きたい場面で、インサイドに入れることを使い分けるようになれれば、より厚みのあるオフェンスができる。そこをもっとチームとして個人としても見せていきたいです」
山内個人でいうと、NBA選手を指導しているスキルコーチのデイビット・ナースとの教えが一つの変化をもたらしているようだ。まずはゲームメーク重視でパス優先だったのが、自分からどんどん仕掛けることの重要性を叩き込まれている。
「今まではワークアウトしていても、ファーストオプションをパスでやっていました。しかし、ナースコーチから言われることはまずはシュート。どんなワークアウトをしていてもパスを一発目に出したらやり直しと、シュート第一のメンタルを教えてもらっているので、そこを自分でも徹底していきたい。また、レイアップまでもっていく技術もすごく教わっています」
「山内はすごかったと琉球ファンの方に言わせたい」
コート外の変化も大きい。今回の移籍により、山内は生れて初めて沖縄を出て暮らすことになった。「周りに海がない土地なので、そこは戸惑っています」と苦笑いするが、練習場のある柏は「想像していたより住みやすいです。チームメートにもサポートしてもらって、今のところ問題なく生活できています」と新生活を語る。
彼にとっては昨シーズンまで琉球でヘッドコーチを務め、アシスタントコーチとして加入した伊佐勉の存在も助けになっている。「困ったらムーさん(伊佐)に『ご飯連れてって』とお気軽に言えます(笑)。沖縄時代からやってきたことをいかしつつ、新しいチームでもスムーズに溶け込めたのはムーさんのおかげだったので感謝しています」
SR渋谷のシーズン開幕戦の相手は、古巣である琉球。チーム屈指の人気を誇っていた山内の早速の凱旋を楽しみにしているファンも少なくないはずだ。当然、山内もこの開幕戦は強く意識している。「自分としては古巣相手に勝つことが恩返しと思っています。この間、岸本と話したら『伊佐と山内の名前が次の日の新聞に載るのは絶対に避けたい』と言っていたので、自分たちはそこを目指したい。出したことを後悔させるくらいの活躍をしたいです」
「今の自分が一番、集中しているのは開幕の2試合で、どれだけ自分の持ち味を発揮できるのか。山内はすごかったと琉球ファンの方に言わせたいですし、琉球が良い補強をしている中、このメンバーで2試合しっかり勝てるように頑張っていきたいと思います」
新天地で自分から仕掛けている選手への進化を目指し、日々ハードワークを行っている山内。その成果を最初に披露する試合が、古巣であり故郷の沖縄であることは、彼にとってこれ以上ない舞台であることは間違いない。
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