Bリーグデビュー戦は中学以来となる富樫勇樹との対戦に
昨シーズン、入れ替え戦に勝利することでB1残留を勝ち取った横浜ビー・コルセアーズが、新シーズンに向けて行った補強の目玉と言えるのが田渡凌だ。京北中学、京北高校でともに国内トップレベルの実績を残し、高校卒業後に渡米。昨シーズンはアメリカNCAA2部のドミニカン大学カリフォルニア校で、日本人ながらキャプテンの一人を務めるなど奮闘した田渡は、新人王の最有力候補に挙げられる存在だ。
このルーキーのBリーグデビュー戦となったのが9月1日に行われたアーリーカップの千葉ジェッツ戦だった。試合は70-92と完敗だったが、田渡自身はユニバーシアードから帰国直後の過密日程ながら約15分の出場で3得点も6アシスト5リバウンドとオールラウンドな活躍を見せている。
「日本でプレーするのが5、6年ぶりな中、お客さんがたくさん入っていて、昔から知っている富樫勇樹のチームと対戦できて楽しかったです」。田渡は試合についてこのように振り返る。
田渡が富樫の名前を挙げたのは、中学時代から切磋琢磨してきたライバルであり盟友だからだ。2人は第38回全国中学校バスケットボール大会の決勝で激突。富樫のいる本丸中学(新潟)が、74-68で田渡のいる京北中を破ったのだが、この試合で富樫は36得点、田渡は39得点と互いに譲らぬ活躍でバスケ関係者を魅了したのだ。
「自分のチームで、自分の色を出していくだけ」
世代を代表する存在として、これからもどんな名勝負を繰り広げてくれるのか期待を集めた2人だが、その後、富樫はモントロス・クリスチャン高校への進学で渡米。高校卒業後に帰国した富樫と入れ替わるように、今度は田渡が大学進学で渡米し、2人が交わることはなく、ようやく中学時代以来の直接対決が実現した。
自身が日本バスケ界から離れている間、今は代表の中心的な存在となった富樫のプレーについて「最初ベンチから見ていた時、富樫はいきなり7点くらい決めました。シーズン最初の試合でテンションが上がっている時に、あれだけ落ち着いて決められるのは相当に力がある証拠。そういうところは見習わないといけない」と田渡は語る。その一方で目標とする東京オリンピックでのプレーに向け、一歩も引くつもりはない。
「僕と勇樹ではプレースタイルが違います。自分のチームで、自分の色を出していくだけです。横浜の中で自分の出せる長所を見つけられてはいないですが、チームの勝利へ他の選手がやりやすく、自分も積極的に行けるようにしていきたいです。チームメートの長所を引き出すのが、僕の長所だと思うので、頑張らないといけない」
「客観的に見ることで良い部分、悪い部分が見えた」
今オフ、ここまでユニバーシアード代表での活動がメインで横浜でのチーム練習はほとんど参加できない中でのアーリーカップとなった田渡だが、この大会に次のようなテーマを持って臨んでいる。
「今日は、どういうチームなのか客観的に見たかったのがテーマにありました。良い部分、悪い部分も見えたと思います。今日、残り3分くらいは良い形で、外国人選手ともああいうバスケができればチームはもっと良くなるからと話しをしました。トランディションオフェンス、ピック&ロールを使って攻め、外国人選手をうまく使い、日本人選手にキックアウトでパスを出すこと。判断をしっかりできればチャンスは出てくると思います」
横浜といえばベテランが多いチーム。その中にあって田渡はルーキーではあるが、チームをより良くするため物怖じせずどんどん発言していくつもりだ。「成績が悪かったのは負ける理由があって、この試合でそれを見つけたかった。悪い部分をどうするべきかについて、先輩たちから『どんどん言っていい』と言われています。僕もそういうつもりでやっています」
海賊軍団の逆襲なるか。その大きな鍵を握る存在として、抜群のリーダーシップを備える若き司令塔に注目することをお勧めしたい。
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