熊谷尚也

「まず守備第一を意識してコートに入ります」

川崎ブレイブサンダースは、10月23日の三遠ネオフェニックス戦で94-87と勝利した。この試合ではベンチ入り11人が全員出場。チームが目指すプレータイムをシェアして戦うスタイルを遂行できたことも光った。

これで7勝1敗とスタートダッシュに成功した川崎だが、その大きな要因となっているのは選手層の厚さ。例えばシューターの辻直人は、開幕4試合となる新潟戦の後半からコンディション不良で戦列を離れている。しかし、残りのメンバーがしっかりとステップアップして辻の不在による影響を最小限にしていることは、この成績が何よりも物語っている。

選手層強化に大きく貢献しているのが、今オフに大阪エヴェッサから加入した熊谷尚也だ。3番を本職とする195cmは、アウトサイドもカバーする機動力とゴール下でもタフに渡り合う身体の強さを備える。

その熊谷は、ここまでの自身のパフォーマンスを次のように語る。「川崎はディフェンスのチームなので、まず守備第一を意識してコートに入ります。それは表現できている。すごく良いまでの手応えはまだないですが、やられている印象はありません。役割は遂行できていると思っています。ただ、オフェンスではオープンショットを決めきれていないです」

守備では及第点も、攻撃面を課題と本人は考えているが、この試合では第3クォーターには3ポイントシュート3本成功でリードを広げる立役者になっている。「前半でオープンシュートを外していましたけど、後半も引き続き打っていこうと意識していました。そしてリズム良く決められたのは良かったと思います」

熊谷尚也

「スタートでもベンチでも僕の仕事は変わらない」

過去2シーズン、熊谷は大阪で外国籍選手に次ぐオフェンスの武器となり、3番で不動の先発として1試合30分近くプレーしていた。一方、川崎では先発もあればベンチスタートもあり、起用法も多岐に渡る。しかし、本人にとっては「60試合スタートで出られる保障はないと思って入団しています。スタートでもベンチでも僕の仕事は変わらない。そこの難しさは感じていないです」と織り込み済みであり、新たな役割への違和感はない。

これまで生え抜きの育成主義でベテランの獲得に消極的だった川崎だけに、他チームで実績十分な熊谷、大塚裕土を獲得したことは話題となった。これは見方を変えれば、即戦力として早々に結果を求められる2人には重圧のかかる状況でもある。

だが、熊谷にそういう意識はなく、プロ選手として注目されるのは恵まれた環境と歓迎している。「プレッシャーは感じていなかったです。注目してもらっているとは感じていましたが、むしろそれを楽しんでいました。早く開幕してほしいという気持ちでした」

「正直、大阪の頃に比べてボールをもつ時間は多くないと思っています。その中でもしっかり得点に絡んでいきたい。そこに、やりがいも感じています」と、今後は得点面でもインパクトを与えていきたいと続ける。

大阪の2シーズンで熊谷はキャッチ&シュートからの3ポイントシュートに磨きをかけた。今回の三遠戦のように、この持ち味をコンスタントに発揮できれば、その存在感はさらに高まる。