「試合ごとに出る反省点を修正して積み重ねていく」
8月26日、27日と琉球ゴールデンキングスは、ホームアリーナの沖縄市体育館で富山グラウジーズ相手に今シーズン初の実戦となるプレシーズンゲームを実施。26日は87-70で勝利したが、27日は78-81で敗れ1勝1敗で連戦を終えた。
27日、琉球は序盤に先行した前日とは真逆の展開で、13点のリードを奪われて前半を終える。その後も、試合全体で3ポイントシュート22本中11本成功と高確率で長距離砲を沈める富山に主導権を握られ、2桁リードを許す展開で時間は進んで行く。第4クォーター終盤にあと一歩まで迫るも、追い付くことはできず連勝を逃している。
試合後、佐々宣央ヘッドコーチは敗因を次のように振り返った。「まだ戦術が少ない中、昨日の試合が終わって相手がスカウティングをし、対応してくるのは分かっていました。その先を読んで戦ったつもりでしたが、ディフェンスから崩れてしまいました」
「今は(プレッシャーをどんどんかけていく)激しいディフェンスをやっていますが、それによって裏のスペースが空いてしまう。激しいだけで、連携が取れていないのが今のディフェンスの弱みで、それが出たのが序盤でした。そして3ポイントでやられてしまい、大事なポイントでターンオーバーが多かったです」
ただ、一方で敗れた中にもプラス材料はあった。「今日は田代(直希、3ポイントシュート4本成功の17得点)、昨日は須田(侑太郎、3ポイントシュート5本成功の25得点)と、誰かしら活躍する選手が出てくる。チームとして底力があり、劣勢でも最後まで戦い続けるメンタリティを見せてくれたことは収穫です」
「ただ負けたのではなく、接戦で残り2分でタイムアウトを取るやりとりなど経験できたのは良かったです。これからのアーリーカップなど、試合をやるごとに勝っても負けても反省点が出ますので、それを修正して積み重ねていく。後はどうやって選手にもっと良いバスケットボールをさせられるのか、自分次第です」
「ヘッドコーチとして、もっと突き抜けていきたい」
エースである古川孝敏が、アジアカップで負傷した足首の手術を行い全治2カ月の見込みと、シーズン序盤を欠場することが発表された。それだけに、今回の須田や田代など、他の日本人選手がどれだけステップアップできるかが、琉球にとって大きな意味を持って来るはずだ。
また、ディフェンス面についても「悪い流れをどこかでひっくり返すためには、ディフェンスから始めないといけないことを交代した選手が表してくれました。昨日は二ノ宮(康平)が出てきて、今日は(岸本)隆一がエネルギーをさらにプラスしてくれました。まだ浸透までは行っていないですが、そういうディフェンスであることを選手に理解してもらいながら作っているところです」とプラス材料を挙げる。
続けて指揮官が強調したのは、プレシーズンにもかかわらず2日続けて満員となる3000人超えの観客動員が示すファンの熱いサポートを体感できたことだ。「前半、点差を縮めるかと思ったまた離される、萎えそうな展開でもずっと声を出し続けてくれました。選手の力だけでは追い上げるのは無理でした。プレシーズンでも、こういう環境で試合をできたのはありがたいことでした」
これまで栃木ブレックス、日本代表などのアシスタントコーチを歴任していた佐々だが、ヘッドコーチとして現場のトップに立つのは今回が初めとなる。アシスタントとヘッドコーチの違いについて尋ねると、「ヘッドコーチとして、もっと突き抜けていきたいです。アシスタントはヘッドコーチのいうことを伝え、選手の言わんとすることも伝える中立的な立場で、ヘッドコーチと役割は違います。ヘッドコーチはダメなものはダメとグレーにしない。線引きをしっかりしないといけないと思います」と考えている。
そして「今は突き抜けるための材料を出しているところ。誰でも理由が分からず怒られるのは、腹が立ちますよね。今はチームとしてやるべきことを選手たちに、どんどん伝えて導入している段階です。それが揃ってきたところで、初めて『この状況ではこうしろと言ったじゃん。その動きをやってはダメだよ』と言えます。そのやるべきことを積み重ねているところです」とチーム作りの現状を語る。
佐々の矜持「選手たちは一流ですが、僕は雑草です」
このプレシーズンゲームが終わり、琉球が次にホームゲームを行うのは9月29日、30日に開催されるシーズン開幕戦となる。対戦相手はサンロッカーズ渋谷で、アイラ・ブラウンが昨季まで3シーズン在籍した古巣。そしてSR渋谷には、昨季の指揮官であり琉球にはチーム創設年から在籍していた伊佐勉(現・SR渋谷アシスタントコーチ)、沖縄出身の人気者だった山内盛久と、ファンから愛された2名の凱旋試合という面でも注目が集まっている。
ただ、佐々にとってもSR渋谷は、日立サンロッカーズ時代の2009年から12年にかけてアシスタントとして在籍したチーム。「伊佐さんや山内選手、アイラがいるので、自分もとは余り言い出せない感じですね」と笑うが、指揮官として記念すべき初の公式戦の相手が古巣であることには思うところがあるだろう。
振り返れば昨シーズンの琉球は、アルバルク東京とリーグ初の公式戦を行うチームに指名され、その際には『エリート軍団』のアルバルクに対し、『雑草集団』という代名詞をつけられていた。しかし、今オフの大型補強によって、むしろ『エリート軍団』と呼ぶに相応しい陣容になった。
ただ、大学時代からコーチ一筋で来た叩き上げの佐々は、「雑草魂でやっていきたい。選手たちは一流ですが、僕は雑草です」と自身について語る。エリート軍団を率いる雑草の指揮官が、これからどのようにチームを作り上げ、約1カ月後のシーズン開幕戦で、どんな新生・琉球ゴールデンキングスを見せてくれるのか。沖縄だけでなく、日本中のバスケファンが注目している。
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