ハイテンポなバスケに持ち込むも、攻め急ぎがミスを呼ぶ
台北で行われているユニバーシアードで、女子日本代表は決勝トーナメントに入りスウェーデン、ロシアとサイズに恵まれたチームを撃破し決勝へと駒を進めた。相手は準々決勝で優勝候補のアメリカを、準決勝ではホスト国のチャイニーズ・タイペイを破ったオーストラリア。平均身長で10cmの差があるオーストラリアに、日本は苦戦を強いられた。
立ち上がりは相手の高さに圧倒される。オーストラリアはただ大きいだけでなく、日本のスピードを警戒してとにかく自陣に素早く戻り、速攻でイージーシュートを打たれる回数を減らす作戦に出た。ガッチリと固められたペイントに攻め入ることができず、ズレを作ることができないまま無理に放つプルアップジャンパーがことごとく決まらない。
逆にオーストラリアはタフショットを打って外しても、オフェンスリバウンドを取って次の攻撃につなげる。またビッグマンへのポストアップだけでなく、ウイングからのドライブや日本の守備を内に向けてからの3ポイントシュートなど、多彩な攻めで日本に的を絞らせない。特に日本の倍となる8本を決めた3ポイントシュートは効果的だった。
結果論ではあるが、日本は落ち着いてボックスアウトを徹底すべきだった。リバウンドで勝てないからペースを上げて、超アップテンポな展開に持ち込んでオーストラリアに走り勝つことを狙ったが、攻め急ぎすぎた結果ミスが増えた。日本は第2クォーター開始から6-0のランで勢いに乗ったかに見えたが、その後はアグレッシブすぎるプレーが裏目に。エースの林咲希が苦しい時間帯に速攻や思い切りの良い3ポイントシュートでつなぐも、34-44と10点差で前半を終えた。
日本の展開に乗りながら押し切ったオーストラリア
後半、日本はリバウンドを改善すべくボックスアウトの意識を徹底するが、オーストラリアはシュートを落とさない。多少無理のあるタフショットもきっちりとねじ込み、日本が仕掛けるハイテンポな展開に応じながら、日本以上のペースで得点を重ねていく。
41-59と差が開いた残り5分から、安間志織と藤岡麻菜美の2ガード起用に出るが、この奇策もオーストラリアのリズムを狂わすには至らない。田中真美子、藤本愛妃、村山翠と日本のビッグマンが素早いパスワークからミドルレンジでのキャッチ&シュートで得点を重ねるが、確率の高いゴール下から締め出されていては流れを作ることができなかった。
51-73で迎えた最終クォーター、津村ゆり子がショットクロックぎりぎりで強引なシュートをねじ込んだプレーをきっかけに日本に流れがやって来る。前から激しく当たってオーストラリアのターンオーバーを誘発し、藤本や林の得点で反撃する。
ここに来てオーストラリアの運動量がやや落ちてくるも、足は動き続けた。タイムシェアを徹底した日本とは対照的にオーストラリアは先発の5人を引っ張っており、アビゲイル・ウェーランとダーシィー・ガービンは約37分間プレー。ガービンは日本で行われた『4ヵ国対抗』で26得点を奪ったのに続き、この試合で30点を記録した。
日本はプレーの強度を高めて最後まで食い下がる。残り1分20秒、田村未来が1on1を制してレイアップを沈めて74-83と1桁点差に詰め寄るが、オーストラリアは崩れず。最後のファウルゲームも功を奏すことなく、78-85で敗れた。
「リバウンドとインサイドでやられてしまった」
佐藤智信ヘッドコーチは試合をこう振り返る。「分かっていながらも、オーストラリアにリバウンドとインサイドで最後やられてしまいました。ペイント内でボールを持たせないように、得点を取られないようにディフェンスの指示をしましたが、中に絞って外にさばかれて外のシュートを決められてしまうなど、中途半端になってしまいました」
キャプテンの藤岡麻菜美は体調不良もあり16分の出場。それでも8得点5アシストと存在感を見せたが、チームを勝利に導くことはできなかった。「せっかくの快挙だったんですが、今大会はチームがどうこうというよりも、個人的に何も出来なかったのが悔しかったです」。それでも「日本らしいバスケット、ユニバーシアード日本代表チームらしいバスケットというのを心掛けてきたので、それは出し切れたと思いますし、胸を張って帰りたいです」と前を向いた。
U-24という年代の中で、Wリーグと現役大学生の混合チームとなった今回のユニバ代表だが、Wリーグ所属選手にしても全員が大学を出ている。女子は高校卒業とともに実業団チームに入るケースが多いが、今回の日本代表の活躍は女子の大学バスケのレベルの高さを示すこととなった。白鷗大学の佐藤ヘッドコーチも「日本の大学頑張っているんだと、多くの人に分かってもらえればいいなと思っています。こういう学生の頑張りが、今後下の世代にもつながって、先のユニバーシアード競技大会で常に上位に入れるような形になれば」と語る。
佐藤ヘッドコーチが語るように、彼女たちの頑張りは下の世代を刺激し、全体の底上げを呼ぶ。また今回のユニバ代表選手が国際大会で結果を出したことで、A代表の底上げにもなる。女子日本代表はカテゴリーを問わず充実し、3年後の東京オリンピックで金メダル獲得が期待できるチームになりつつある。