文=丸山素行 写真=鈴木栄一

形にこだわって停滞するチームで奮闘、存在感を発揮

昨日行われたウルグアイとの国際強化試合の第1戦、日本代表は出だしの悪さが響いて敗戦を喫した。相手は格上だったが、力負けよりも自滅と言うべきだろう。フリオ・ラマス新ヘッドコーチが合流して間もなく、準備不足は否めなかった。それでも収穫もあった。その一つが効果的なドライブ、チームを救うミドルシュートなど高いパフォーマンスを見せてMIP(最も印象に残った選手)に選出された張本天傑だ。

「外のシュートが入らず、雰囲気に飲まれてしまったところもあった」と反省点を挙げた張本だが、リングへのアタックやキックアウト、インサイドでの貢献については「それが自分の持ち味だと思うので」と控え目な口調ながら手応えを語った。

ラマスコーチが「システムを覚えている段階」と発言したように、日本は特にオフェンスでぎこちなさが見られた。指揮官の求める「パスを多用しスペーシングを有効に使う」バスケを意識しすぎた結果、プレーに柔軟性を欠いたと張本は考える。

「最初なので形にこだわって入ってしまった。ボールを持ったらパスを探してしまい、自分も含めリングを見ていなかった選手が多かったと思います。どうしても次のプレー、次のプレーにいこうとするので」。それでも「自分で作っていかないとチャンスは生まれてこない。リングを見ればアタックするチャンスはあるし、もっとアグレッシブにできると思うので」と、この先に向けた打開案はすでに理解している。

日本代表での序列をひっくり返す絶好の機会

長年日本のインサイドを支えてきた『竹内兄弟』の弟、譲次の不在は、今回の日本代表選考のサプライズだ。譲次のいないインサイドで高さ不足を補えたのは、「譲次さんがいない分も頑張らないといけないので」と意気込む張本の奮闘があったからこそ。スタッツでは2リバウンドと物足りなさを感じるかもしれないが、自分よりも大きな相手に対してのディフェンスの駆け引きやチップアウトなど、数字に表れない部分での貢献度は高く、それは試合を見ていたファンにも強い印象として残ったはずだ。

だが、今の張本にとって譲次の存在は『憧れの先輩』ではなく、『超えるべき目標』だ。代表に選出されてもプレータイムは確約されず、ベンチを温める時間が続いていた。「東アジア大会も入ったんですけど、全然試合に絡めず活躍することもできなかったので、それがすごい悔しかったです」と正直な思いを語る。

それだけに「今回は譲次さんがいない分、自分にもっとチャンス出てくると思います。ここが一つの分かれ道だと思います、つかめるかつかめないかは自分次第なので」と、ただ代表に呼ばれるだけでなく、コートで結果を残したいという強い気概を見せた。

実際、指揮官が交代した今こそ、日本代表における序列を一気にひっくり返す絶好の機会だ。第1戦ではそのチャンスを自らつかみ取り、プレータイムを伸ばした。今日の第2戦でも誰よりもアグレッシブに戦い、チームに勢いを与える張本のプレーに期待したい。