取材=小永吉陽子 写真=FIBA.com

苦しい展開にも集中力を切らさず粘り、最後は圧倒

アジアカップは決勝トーナメントに突入。トム・ホーバス率いる日本代表はチャイニーズ・タイペイと対戦した。

立ち上がり、日本はペースを作れず苦戦を強いられる。吉田亜沙美、近藤楓、長岡萌映子、髙田真希、大﨑佑圭の5人でスタートしたものの、今大会で調子の上がらない近藤を開始2分あまりで下げ、藤岡麻菜美を入れるツーガードに。それでも早々の布陣変更は実らず、相手の警戒が厳しくボールを奪っても速攻に転じることができず、速攻の形が出てもレイアップを落とすなどミスが出て日本のリズムを作れない。逆にチャイニーズ・タイペイはシュートタッチが良く、きっちり形を作っていなくてもミドルレンジのジャンプシュートを立て続けに決めて先行した。

それでも第1クォーターはチームバスケットが機能しない中で長岡が9得点を挙げてチームを支え、第2クォーターに入ると今度は水島沙紀が難しい速攻をねじ込んだかと思えば3ポイントシュートも決めるなどオフェンスを牽引。ヘッドコーチのトム・ホーバスが試合後「長岡と水島に助けられた」と振り返る貴重な働きで、33-30と逆転して前半を折り返す。

吉田がスイッチを入れ、日本の「走るバスケット」を展開

難しい試合ではあるが、それでも3点リード。ハーフタイムにホーバスHCは「自分たちのバスケットをやれば勝てる」と選手に檄を飛ばす。こうして迎えた後半、ようやく日本が目を覚ます。

スイッチを入れたのはキャプテンの吉田だった。第3クォーター残り8分22秒から約3分半の間に8-0のラン。吉田は足を使ったディフェンスで相手のミスを誘い、ボールを奪うと思い切りの良いパスで速攻を演出。ようやく日本らしいトランジションバスケットが出ると、長岡の好調ぶりがさらに強調される。迷うことなくリングにアタックし続ける長岡に面白いようにパスが通り、得点が伸びていく。長岡は最終的に28得点を荒稼ぎする大活躍だった。

52-45で迎えた最終クォーター、まだ油断できない点差だったが、立ち上がりから長岡の3ポイントシュート、吉田のドライブ・レイアップ、そして再び長岡のジャンプシュートで7-0のラン。この約2分間に何もさせなかったことでチャイニーズ・タイペイは意気消沈。序盤の思い切ったプレーがでなくなり、そこを日本は見逃さずにたたみかける。残り3分までに点差を20へと広げると、プレータイムの少ない控え選手も最後まで試合をコントロールし、終わってみれば73-57の快勝となった。

チームに勢いを与えた水島「自分のできることを精一杯」

今大会やや元気のなかった吉田が要所で本来の存在感を見せたのは収穫だが、膝を痛めており万全ではない。それでも準決勝中国戦、そして決勝で当たるであろうオーストラリアに競り勝つには吉田の存在は不可欠だ。また髙田が攻守を支えているのも大きい。ケガで大会前の調整ができず『ぶっつけ本番』の髙田だが、そこは豊富な国際経験を生かし安定したパフォーマンスを見せている。

この試合で主役を演じた長岡は28得点を記録。3ポイントシュート6本中3本、2点シュートは11本中9本成功と超高確率で得点を荒稼ぎした。スタッツ以上に攻める姿勢、厳しいマークを受けながらもシュートを打ち切る力強さが印象的だ。

苦しい流れを変えたシックスマン、水島沙紀は試合後にこう語った。「昨日、一昨日と大事な場面で試合を見ている側で悔しい気持ちもあって、今日出た時には自分のできることを精一杯やろうと思って臨みました。私ができるのは走ることとディフェンスで、それをしっかりやろうと決めていて、ファストブレイクを出して流れを変えられたかと思います」

負けられないトーナメントで苦しみながらも勝利した日本。アジア制覇まであと2勝と迫った。準決勝は中国が相手。今日21時15分試合開始となる。