
「どんな役割でもチームの勝利のためにベストを尽くす」
ニックスがアンドレ・ドラモンドを獲得した。ミッチェル・ロビンソンがセルティックスへ去ったことで空いたバックアップセンターの枠を、15年目を迎えるベテランで埋める格好だ。ロビンソンと同水準のオフェンスリバウンドとディフェンス能力を持つ人材として白羽の矢が立った。
ドラモンドは2012年のNBAドラフト1巡目9位でピストンズに入団し、8シーズンを主力として過ごした。ピストンズ在籍中は7シーズン連続でオフェンスリバウンドでリーグトップに立ち、通算4度のリバウンド王にも輝いている。
しかし、ウォリアーズの成功を機にNBAのバスケが3ポイントシュート主体の速い展開へと一気に傾く中、スピードがなくシュートが苦手なドラモンドは『時代遅れ』の選手になっていく。強力なリムプロテクト能力よりもハック戦術の対象となるフリースローの下手さに人々は注目し、彼の価値は下がっていった。キャリア8年目の2019-20シーズン途中にピストンズを放出された後は、毎シーズンのように移籍を繰り返すジャーニーマンとしての生活が続いた。
そのドラモンドが30歳を過ぎて『再評価』を勝ち取ると誰が予想しただろうか。2024年に2年1000万ドル(約15億円)の契約でセブンティシクサーズに加わり、ジョエル・エンビードのバックアップを務めることに。その1年目にエンビードが19試合にしか出場できない中でセンターの1番手を務めることも多く、ドラモンド自身にもケガがあって40試合出場に留まったが、ディフェンスとリバウンドの安定感で信頼を勝ち取った。今シーズンは63試合に出場。エンビード不在の25試合では先発も務め、19.5分の出場で6.4得点、8.4リバウンドを記録している。
依然としてリバウンドは彼の大きな強みで、36分あたりのリバウンド数15.6はロビンソンに次ぐ2位の数字。しかもフリースローの課題も、ハック戦術に晒された2015-16シーズンの35.5%から63.1%とすでに解消している。全く打てなかったはずの3ポイントシュートまで成功率35.6%となり、シーズンを通して32本とダントツ(これまでは5本だった)のキャリアハイを記録している。
OH MY ANDRE DRUMMOND pic.twitter.com/1Io0MIkz2D
— Philadelphia 76ers (@sixers) April 16, 2026
今シーズンを迎える時点で「この年齢になると自分のことはどうだっていい。どんな役割でもチームの勝利のためにベストを尽くす」と語ったドラモンドは、チームのプレーオフ進出に貢献。彼にとっては初めてのカンファレンスセミファイナル進出を果たした。
そしてフリーエージェントとなった今オフ、彼はYoutubeにこんなメッセージを投稿した。「自分の価値に見合った条件でプレーしたくはない。一度その選択をした結果、『その程度の選手』というレッテルを貼られてしまい、それが僕の価値を落とした。今も20代中盤と同じように動けるし、力も残している。プレーの幅も広げている。安い契約を受け入れたことで、ここ何年かは穴から這い上がるような気分だった。本当に辛かった」
しかし、この動画はすでに削除されている。ニックスからのオファーがドラモンドの気持ちを変えたからだ。ニックスの提示は1年390万ドル(約5億9000万円)。またもベテラン最低保証額を受け入れることになったが、優勝チームで、2番手のセンターという確固たる役割が与えられる。しかもマウントバーノン出身のドラモンドにとって、ニックスは地元チームだ。
苦しい時期を乗り越えて第2の全盛期を迎えたドラモンドには、もっと良い契約を得られるチャンスがあったはずだが、彼はニックスを選んだ。
ニックスはロビンソンに代わる控えセンターを格安で獲得できたことで、セカンドエプロンまで600万ドル(約9億円)の余裕を残している。レブロン・ジェームズがベテラン最低保証額を受け入れるのであれば、マディソン・スクエア・ガーデンに迎え入れたいという『欲』があるだろう。そうでなくとも優勝メンバーの残る一人、ジョーダン・クラークソンを呼び戻すことができる。そういう意味でも、ドラモンドはニックスにとって最高の補強となった。