保証わずか1年の契約も「自分のベストを尽くすのみ」
トレイルブレイザーズのヘッドコーチとなったマイカ・ノリが就任会見を行った。28年もの下積みを経て、初めてヘッドコーチのチャンスを与えられたことを彼は大いに喜んでいるが、契約期間が3年のみ、しかも2年目以降はチームオプションというコーチにとって極めて不利な条件であることが判明すると、コーチの同業者たちは怒りを露わにした。
ピストンズを率いるJ.B.ビッカースタッフは、NBCA(全米バスケットボールコーチ協会)会長として「ブレイザーズのやったことは我々の価値に対する侮辱だ」と発言。ブレイザーズのオーナーになってから、バスケ界の常識から外れたコストカットを推し進めるトム・ダンドンを非難した。
そんな波乱の船出となったが、ノリは気にしていない。「J.B.とは今日話をしたよ。彼の発言は、285人のコーチの代表として我々を守るものだ。ただ、それは私個人に影響を与えるものではない」と彼は言う。
「私にとってこの契約はチャンスだ。28年間のうち最初の25年間、私はエージェントを付けなかった。金額や契約年数で仕事を決めたことは一度もない。しっかり仕事をして結果を出せば、それ以外は自然についてくるのがこの世界だと思っている。5年後、いや6年か7年後に、ジョーが私を解任してくれれば本望だよ(笑)」
隣に座るジョー・クローニンGMは苦笑せざるを得ない。「マイカと私、トムは、それぞれお互いに賭けたんだ。重要なのは我々が団結し、私たちがマイカが勝てるよう必要なリソースを提供し、選手たちをサポートすることだ」とクローニンは語る。
ノリはとにかくヘッドコーチのチャンスを必要としていた。「NBAでの28年間、妻を実質的にシングルマザーのような状況に置いてしまった。子供たちも多くのことを犠牲にして私を支えてくれた」と言葉を詰まらせながら家族への感謝を語った。
28年間の下積みの中でも、ここ数年は常にヘッドコーチ候補として名前が挙がっていた。「これまで7つのチームでヘッドコーチの面接を受け、その5つで『君は2番手だった』と言われた。ニックスでは『君は素晴らしいが、経験のあるマイク・ブラウンを選ぶ』と、キャブズにも『今すぐ勝ちたいから、ヘッドコーチ未経験の君はやめておく』と言われた。ベンチの隣の席へ移るだけなのに、それが本当に遠いんだ」
「だが、与えられた仕事を誠実にこなし、他人の足を引っ張ろうとせずに真っ直ぐ努力し続ければ、必ずチャンスはやって来る。採用されなくても、『これでまた一歩近付いた』と自分を勇気付けてきた。ポートランドはアウェーチームの一員として来るたびに、その熱気に圧倒されていた街だ。その後押しを受けられるのは頼もしい限りだよ。新人ヘッドコーチは再建チームを任されるのが常だが、私はプレーオフに進んだ戦力に、デイミアン・リラードが復帰するチームを率いることができる。これは素晴らしいチャンスだよ」
Day 1 in the building for Coach 🤝 pic.twitter.com/FDqxMnjNpR
— Portland Trail Blazers (@trailblazers) June 25, 2026
ノリは真摯に仕事に取り組み、ハードワークを厭わない。それでいて常に楽観的で、誰とでも良い関係を築く人間味も持ち味だ。自分が率いるチームの構想を熱っぽく語った後、彼はチャーミングな笑顔とともに「この記者会見は何十万人もの人が見るかもしれないが、来週になったら誰も内容を覚えてはいないだろう」と言った。
「大事なのはここで何を言うかではなく、実際に何をして、どう前進していくかだ。雑音に惑わされず、目標に向かってベストな選択をし続ける。結果よりもプロセスが大事だと言われるが、我々は勝ち負けの世界を生きている。NBAでは毎日、成功と失敗が明確に分かる。それがこの仕事の大変なところだが、醍醐味でもあるんだ」
記者の多くはトム・ダンドンの無茶なコストカットに怒っていたが、ノリ自身がチャンスを得られたことにただただ喜んでいるのだから、怒りの矛先を向ける場所がなくなった。ノリは仕事が始まる前から失敗を恐れて縮こまる男ではない。
「彼は7日前にハリケーンズ(NHL)で優勝カップを掲げた。そのチームは彼が取り仕切る8年間で一人のコーチしか雇っていない。契約書は引き出しにしまっておけばいい。私はこの組織を信じてベストを尽くすのみだよ」。ノリはそう言って、ヘッドコーチとしての仕事に取り掛かった。
