瀬川琉久

持ち味のオフェンスではなく、ディフェンスで会場を沸かせる

千葉ジェッツはホームに広島ドラゴンフライズを迎えた第1戦に83-68で勝利し、チャンピオンシップ出場を決めた。

千葉Jは12点リードで試合を折り返したが、第3クォーターに主力のファウルトラブルやビッグマンの負傷もあり、広島の反撃を受け1点差まで迫られた。だからこそ、第3クォーターのラストプレーで金近廉がタフな3ポイントシュートを沈めたシーンは、その後の快勝劇へと繋げるビッグプレーとなるとともに、アリーナが興奮のるつぼと化した瞬間だった。

だが、そのシーンと同じくらい歓声が上がった場面があった。それは第2クォーター中盤、瀬川琉久が伊藤達哉からボールを奪ったシーンだ。瀬川は前線からプレッシャーをかけると、ハーフコートに入ってもその強度を落とさず、抜群のフットワークで左右の揺さぶりに対応し、伊藤のファンブルを誘った。瀬川がボールにダイブしてマイボールとなった瞬間、歓声が沸き起こった。

試合後、千葉Jのトレヴァー・グリーソンヘッドコーチも、こうしたワンプレーがチームに与える影響について言及した。「まずはベンチメンバーが試合に与えた影響について話したいです。試合に影響を与えるために必ずしも10点、20点とスコアする必要はありません。ハッスルプレーやディフェンスが大事なんです。瀬川選手がバックコートでプレッシャーをかけた時、会場全体が彼を後押しし、そのエネルギーがチーム全体に波及しました。金近選手も前半こそミスがありましたが、後半は見事に立て直しました。こうした若手の成長は素晴らしく、誰か1人に頼るのではなく、全員がハードにプレーする。我々が目指すチームの姿が今日は体現されていました」

瀬川は最終クォーターにプレータイムを伸ばし、ブロックショットやコート外までボールを追いかけるハッスルを見せた。終盤に突き放す立役者となったが、2得点2アシストと数字は決して突出していない。それは瀬川も自覚しているが、「スタッツに残らないルーズボールだったり、ディフェンスのエナジーというところをいつもよりコートで体現できたので、少しでもチームの勝利に貢献できたかなって思っています」と胸を張った。

瀬川は昨シーズンの途中に特別指定選手(プロ契約)として千葉Jに入団すると、レギュラーシーズン22試合に出場し8試合で先発を務め、7.3得点2.2リバウンド1.9アシストを記録。世代No.1プレーヤーのポテンシャルを大いに発揮し、最優秀インプレッシブ選手(MIP)に選出された。

2年目の今シーズンはさらなる飛躍が期待されたが、思うようなプレーができず、もがき苦しんでいた。瀬川も「昨シーズンは自分が思ったよりも通用したと言いますか結果が出て。自分自身の期待も高まりましたし、メディアの皆さんやファンの皆さんの期待も高まった中で、期待に応えられてないなっていうのはずっと感じていました」と振り返る。そして、理想と現実との乖離に悩んだ先に、「ルーキーのアグレッシブさを忘れていた」という、一つの答えにたどり着いた。

「少ない時間でもチームに貢献しようと思ったら、スタッツに残るシュートを決めることやアシストとかあるかもしれないですけど、ルーキーの良さというのは自分にしかないものなので。もちろん自分の足りないところは分かっているつもりでしたけど、本当に足りてない部分はプレーどうこうよりも、ルーキーらしいアグレッシブな、今日みたいなプレーだったっていうのを気づきました」

エリート街道を歩んできた瀬川だが、4月5日の広島とのアウェーゲームでは初めて試合に出場できない憂き目に遭った。しかし、この経験がターニングポイントになったと瀬川は言う。「広島との2戦目ですかね。人生で初めてずっとベンチにいた時があって、その時に本当に悔しくて、『じゃあどうしたらいいんだ』っていうところが、きっかけじゃないかなとは思っています」

特にリーグ終盤の千葉Jはディフェンスのテコ入れが必要となり、富樫勇樹を先発から外す苦渋の決断をした。同じスコアリングガードの瀬川にとってこの変化はマイナスに働くが、その中でも生きる道を見つけた。振り返れば以前の千葉Jは、原を筆頭にかつて所属していた藤永佳昭など、ディフェンスで会場を沸かせる場面が多々あった。オフェンスを持ち味とする瀬川がディフェンスでも存在感を示したことは、彼の復調とともに、千葉Jのアイデンティティを取り戻す一つのきっかけとなるはずだ。