
「日本人選手の得点割合が少ないことがチームの課題だった」
広島ドラゴンフライズは23勝16敗(西地区5位)で終盤戦を迎える。平均得点は86.0でリーグ3位と好調。爆発的なオフェンス力を見せて、100点ゲームは8回を記録している。
今シーズン、オフェンス面でステップアップを見せている三谷桂司朗は「昨シーズンよりもオフェンス力が上がり、開幕前から自分たちの強みとして取り組んできたことが数字にも出ています。強力な外国籍選手が揃っているので、彼らの調子が良ければ得点も伸びて勝てます」とここまでのチームのオフェンスを振り返る。
実際、クリストファー・スミスの平均18.4得点を筆頭に、コフィ・コーバーンが16.9得点、ドウェイン・エバンスが15.9得点と、それぞれが異なるパターンで得点できる強みがある。しかし、逆を言うと外国籍選手の得点が滞った結果、得点が伸びずに敗れる試合も少なくなかった。
「1月のバイウィークまでで、リーグの中でも日本人選手の得点割合が少ないことが課題に挙がりました。これを上げていかないと、外国籍の調子で勝敗が左右してしまう状態でした」とチームとして抱えていた問題を三谷は明かす。
三谷のシーズン平均は7.9得点。しかし、チームとしてその課題と向き合った後の9試合の平均得点は13.8得点と大きく伸ばしている。「その課題が挙がった時、朝山(正悟)ヘッドコーチに僕と寺嶋良さんと渡部琉さんが呼ばれて、特に僕ら3人にそこを体現してもらいたいと強く言われました。そのためには自分に自信をつけなければいけないと思ったので、とにかくワークアウトで追い込むようにしました」
ヘッドコーチに言われたからといって、簡単に得点が伸びるものではない。三谷は、これまでのシューティングがメインのワークアウトから内容を大きく変えて、リーグ戦再開に備えた。「得点を取るとなると、スポットのシュートだけでなくハンドラーとして動いたりアタックする必要があると思ったので、ハンドリングの練習をコーチ陣にお願いしてやっていました」
「リングまで行き切る自信がなかったのかなと感じました。学生時代までは好きなように伸び伸びプレーしていましたが、プロになり自然とスポットシューターのような日本人選手によくある役割にハマってしまっているなと。自分ができることに対して、徐々に自信をなくしていたかもしれません」

好調な3ポイントシュート「今は打ちたい気持ちが大きい」
「今は本当に『何を打っても入るな』というシチュエーションが多いです」と言う通り、ドライブだけでなく三谷の3ポイントシュートもチームにとって大きな武器となっている。シーズンの平均試投数は、昨シーズンの2.8本から4.7本に増加。さらに成功率は30.7%から35.0%と上げている。
「さっき言ったワークアウトも1つの要因ですが、クリスが『絶対に打て!』と試合が始まる前から、ずっと僕に言ってくるので(笑)。 僕も『打っていくよ!』みたいな感じで言える関係性です」と、リーグ屈指のシューターであるスミスの存在を好調の要因に挙げる。
スミスは技術的なことよりも、シューターとしてのメンタリティを植え付けるように、口酸っぱく三谷に伝えてくると言う。スミスからの期待は三谷自身にとってうれしいことだと続ける。「打てる場面で打たないと『なんで打たないんだよ。次、打たなかったら、ぶっ飛ばすぞ』みたいなノリで冗談っぽく言ってくれるので(笑)」
その甲斐もあって、三谷のシュートに対するメンタルは大きく変わった。「前までは、クリスやドウェインに頼った方がいいかなという気持ちもありましたが、今は僕も打ちたい気持ちが大きいので、クリスからの信頼に応えるためにもどんどん打ち続けないといけないです」
その気持ちを強く見せた試合があった。1月24日のファイティングイーグルス名古屋戦。競った展開となった最終クォーターで、相手に3本のフリースローを与えるファウルを犯した三谷は、直後のポゼッションで3ポイントシュートを決め返した。さらにドライブからシュートを狙ったところでブロックを受けたが、セカンドチャンスから3ポイントシュートを沈めてやり返した。
結果的に惜しくも敗戦となったものの、8本中6本の3ポイントシュートを成功させて、キャリアハイの22得点を記録した試合だった。「やられっぱなしでは終わりたくない性格なので」とあの場面を振り返る。叫んだり、飛び跳ねたりするような感情表現はしないが、負けず嫌いな熱いハートを持っていることが分かる。そう伝えると「感情の出し方がちょっと下手ですね(笑)。そこは自分の中で、課題かなと思っているんですよ」と気恥ずかしそうな様子を見せた。

「自分ができることを毎試合出し切ることが一番の恩返し」
「特別指定選手で呼んでもらって、プロになる時も声をかけてくれて、流れができていたなと感じていました」と言うように、広島皆実高3年次から特別指定選手として加入した三谷は、順当にプロキャリアを地元クラブでスタートさせた。どこか敷かれたレールに乗っている感覚もあったようだ。
しかし、出場時間が増えて責任も大きくなってきたことで、恵まれた環境にいることを実感した。「同世代では、今の僕みたいに好きなところで打っていいよとか自由にやらせてもらっている選手はそこまでいないんだなと。この環境は当たり前じゃないと感じるからこそ、若手だからといって遠慮せずに、自分ができることを毎試合出し切ることが一番の恩返しになると思っています」
広島はチャンピオンシップ圏内まで3ゲーム差。21試合を残している状況において、十分に射程圏内と言える。よりチームが勝利を重ねるために、三谷は次のことが必要だと言う。
「ディフェンスリバウンドを死守して、相手のセカンドチャンスを抑えるのが1つ目の課題です。それに続いて、フリースローの成功率がチームとして良くないので、個々が見つめ直して確率を上げていくことができれば、残り21試合も勝てるゲームが続くと思います」
特にチャンピオンシップへの思いは強い。広島が優勝を果たした2023-24シーズンは大学4年次にあたり、シーズン途中からプロ契約をしてロスターに名を連ねていた。しかし、チャンピオンシップは3人制の日本代表活動と重なり、ファイナルの第3戦で10分ほどプレーするに留まった。
「本当にCSには出たい気持ちばかりです。前回のCSは映像で観ていて『この選択で本当に良かったのかな』という気持ちも正直ありました。チームが優勝してうれしかったですけど、自分が携われたのかと言われたら、あまり達成感のあるものではなかったです。だからこそ、何としても自分が貢献したなと思える形で、もう一度あの景色を見たいです」
プロの舞台で壁にぶち当たることもあったが、課題と向き合い本来の輝きを取り戻した。三谷の静かなる闘志がチームをチャンピオンシップとその先の頂へ再び導いていく。