中村颯斗

「この試合で一皮剥けたんじゃないか」

ウインターカップ男子1回戦で屈指の好カードとなった東山vs中部第一は、最終クォーターを32-11と圧倒した東山が86-68で勝利した。

東山は前半時点で佐藤凪、ウェトゥ ブワシャ エノックとカンダ マビカ サロモンの留学生2人が揃って2ファウルを喫し、特にインサイドのディフェンス強度が落ちた。そのため、第3クォーター終了時点で3点ビハインドと、わずかながら中部第一のペースで試合は進んでいた。しかし、最終クォーターに空気が一変する。中部第一の常田健コーチは冷静に魔の時間帯を振り返った。

「東山さんは絶対的なエースがいます。ウチがリードしていた時に点数を取っているのは凪君でした。苦しいところは凪君が点数を取る。そして勢いに乗るところは中村(颯斗)君という分業制があると思います。第4クォーターの中村君のシュートはタフショットでした。その流れにさせたくなかったですが、あの場面で決めるのは素晴らしかったです」

中村は1点リードの場面から2本連続で3ポイントシュートを沈めると、残り6分13秒にもリードを2桁に乗せる長距離砲を成功させ、中部第一に最後のタイムアウトを取らせた。そして、18得点13アシスト4スティールとさすがの活躍を見せた佐藤とともに最後までアタックし続け、一気に中部第一を飲み込んだ。

両チーム最長となる39分24秒プレーし、ゲームハイとなる30得点を記録した中村は「やっぱりメインコートまでの1番の山場はここだと思っていたので、本当にホッとしています」と胸をなでおろす。

もちろん、楽に勝てる相手ではないことは分かっていた。「本音を言えば、最初から点差を離して勢いに乗っていきたかったのはあります」というように、序盤で主導権を握りたかった。苦戦を強いられたものの、最終クォーターの佐藤の言葉がチームを変えたと中村は言う。

「ずっと接戦でしたし流れに乗れなかったんですが、そこで凪君がハドルを組んで『ここでディフェンスを1本止めて速攻を出して、自分たちのやりたいバスケットをやって勢いを持っていこう』って渇を入れてくれたんです。そこでスイッチが入ったかなって思います」

これで集中力が増した中村は「もう、入る気しかしなかった」という長距離砲で流れを呼び込みんだ。中村は持ち味のシュート力について練習の成果だと強調し、今回がターニングポイントになる可能性があると示唆した。「インターハイではあまり決められず、確率も良くなかったのが本当に悔しかったです。それからウインターカップに向けて自主練をたくさんやってきました。これだけやってきたから大丈夫だっていう自信があってシュートを打てていて、そういう部分は夏から成長した部分でもあります。この試合で一皮剥けたんじゃないかなって思います」

明日の瓊浦との2回戦では、もう一段階レベルの上がった中村の姿を見ることができるかもしれない。