
「時には無様な勝ち方でも勝っていくのが強いチーム」
ピストンズは開幕から好調で東カンファレンスの首位を快走しているが、若いチームに自分たちが強豪チームだという認識はない。だからこそ、そうなるための学びに貪欲でいられる。
現地12月1日のホークス戦は、勝利とともに良い学びを得られた一戦となった。ケイド・カニングハムが徹底的にマークされ、すべてのプレーの起点となるカニングハムが18得点、8アシストに対して6ターンオーバーと封じられた。さらにはシューターとして安定した活躍をしていたダンカン・ロビンソンの欠場も重なり、ピストンズのオフェンスから爆発力は失われた。
ロースコアの展開で抜け出す術を見いだせない中、チームに活力を与えたのはロン・ホランドだった。キャリア2年目のホランドは、ここまで1巡目5位という指名順位からすると期待に応えられず、ベンチスタートに甘んじている。ロビンソン欠場を受けて先発に抜擢されたのも、ホランドではなく同じ2年目でもドラフト外のデイニス・ジェンキンズだった。
しかし、この日はホランドがチームを救った。ホランドはスタッツを気にしない。若くてエネルギッシュなチームの特長をさらに強化すべく、攻守に100%の力を注ぐのが彼の考え方だ。いつも通りディフェンスとリバウンドで奮闘し、この試合ではカニングハムがゲームコントロールに苦しんでチームのターンオーバーが止まらない状況でサポートのポジションに入り、相手のプレッシャーを浴びたチームメートのパスの出しどころとなった。
「良い試合をするためにスタッツに載ることをする必要はない。その考え方は僕がチームに貢献する原動力になっている」とホランドは言う。
「サマーリーグはアピールの場だから得点を狙ったけど、シーズンが始まれば、重要になるのは1つのポゼッションを取ること、コーナーからの3ポイントシュートを打つこと、小さなハッスルを積み重ねることだ。もちろんシュートは決まってほしいけど、僕らはディフェンスのチームであり、オフェンスが悪ければ上向くまでディフェンスで耐える。シュートが決まらなくても落ち込まない。いずれ入ると考えるだけさ」
ホランドの出場時間は17分。素晴らしい働きを見せていても、控えの立場は変わらない。ただ、それに腐ることなく自分のプレーを貫いて、ジェイレン・デューレンの21得点、カニングハムの18得点に続く17得点を記録した。デューレンは32分、カニングハムは38分の出場だったことを考慮すると、ホランドは限られた時間で素晴らしい結果を出したと言える。
指揮官J.B.ビッカースタッフは、ホランドの働きについて「信じられないレベルで良かった。今日は苦しい試合となったが、彼の勝負に懸ける姿勢がチームに火をつけてくれた」と絶賛し、こう続ける。「すべての試合で快勝することはできない。時には無様な勝ち方でも勝っていくのが強いチームだ」
ホランドはその言葉を受けて「まさにその通りだ」と笑った。「第1クォーターから最後まで『とにかく守り抜く』と覚悟を決めた時の僕らは厄介な相手だと思うよ。僕がうれしいのは、そのやり方を全員が理解し、一致団結していることだ」
そして彼は、このチームで『脇役』を演じることに誇りを持っている。「NBAに来た時点で僕より得点できる選手は他にいくらでもいるのは分かっていた。だからディフェンスやプレーメークに力を注ぐ。実際、ディフェンスで頑張れば、どういうわけか自分がトランジションに絡むことができる。それが僕の力を最も発揮できる形だと思う」
「ベンチから出ることで、試合の流れを読み、選手の傾向を見て、自分がどこで輝けるかを理解してプレーできる。それに、厳しい試合展開で必要とされるベンチ・モブの役割は気に入っているんだ。今日の勝ちは最高の勝利じゃないかもしれないけど、僕たちにとっては大きな1勝だよ」