ベンチに回ったベテランが復調、ディフェンスを牽引

ニックスはここまで10勝6敗、東カンファレンスの5位につけている。セルティックスとペイサーズが戦力不足の今シーズン、首位から4.5ゲーム離されている現状はあまり見映えが良くないが、今シーズンから指揮を執るマイク・ブラウンは、選手の負荷を分散させる起用法をこう説明する。

「この時期に選手を消耗させるつもりはない。全員にチャンスを与えることで、シーズン終盤に誰かがケガをするようなアクシデントに備えている。私はどの選手も信頼してコートに送り出している」

前任者のトム・シボドーは固定された少数精鋭しか起用しなかったが、ブラウンはここにジョーダン・クラークソン、ランドリー・シャメット、ガーション・ヤブセレも加えている。起用法は流動的で、調子が良ければ使うし、そうでなければベンチに座らせる。

結局のところ、シボドーのやり方では選手が潰れる。頑丈な選手を揃えているが、誰もがケガと無縁ではいられず、攻守の強度が高いプレーオフをフル回転で戦い抜くことはできなかった。そんな数シーズンを経験したことで、主力たちはブラウンのやり方を受け入れており、ブランソンは「これは僕らが取り組むべき課題だ。早く習得すればするほど、長期的に見てチームを有利にしてくれる」と理解を示す。

その試みのすべてが上手くいっているわけではない。シャメットはアヌノビー離脱を埋めるオンボールディフェンダーとして活躍し、ブラウンの起用法が最もハマった選手だったが、マジック戦で相手選手と激突して肩を痛め、少なくとも4週間の戦線離脱となる。また、ヤブセレはチームに馴染むのに手間取っている。また若手のアリエル・フクポルティやモハメド・ディアワラも伸び悩んでいるのが現状だ。

指揮官交代でチーム内の序列を下げたのはジョシュ・ハートだ。コンディションの面で出遅れたことで、昨シーズンは77試合に先発出場した彼がベンチに回され、プレータイムは37.6分から26.8分に激減。アヌノビーやブリッジズが欠場する試合でも、彼の出番は限られたままだった。

そのハートが現地11月24日のネッツ戦で先発起用され、38分の出場で7得点12リバウンド7アシスト2ブロック2スティールを記録。今シーズン初の先発であり、プレータイムも最も長く、コート上での存在感も取り戻した。

「チームとして前の2試合であまり良いプレーができておらず、相手のオンボールプレーヤーにもっとフィジカルに当たる必要があった。今日はそれを実行して、良いディフェンスからイージーな得点を生み出すことができて勢いに乗れた」とハートは言う。

ブラウンは「ディフェンスの多くはメンタル次第で、ハートはその部分でチームを引っ張ってくれた」とコメントした。これに対してハートは「僕だけが仕事をしたわけじゃないよ。先の2試合のディフェンスは明らかに改善すべきだと全員が理解していた」と謙虚に語る。

「最優秀守備選手賞を受賞した選手(アヌノビー)と、それと同じぐらい能力がある選手(ロビンソン)が欠場していたけど、だからこそディフェンスに集中しなきゃいけない。オフェンスで多少エネルギーを犠牲にしてでも、ディフェンスを一番にやる必要がある。僕ら全員がそれを理解して実行し、そのおかげで良い試合ができたよ」

ハートはブラウンの起用法を受け入れているが、先発が好きなことは認めた。「スタートで出るのは楽しい。これで僕が先発した試合は1勝0敗だ。逆にならなくて良かったよ(笑)」