
2019年以来となるウインターカップ出場を決めた東海大学付属相模は、フィジカルの強さを前面に押し出してハードワークするチーム。最も身長の高い選手でも身長190cmだが、ガード陣までサイズが揃ってフィジカルが強く、なおかつ粘り強いディフェンスができるためスイッチしてもズレを作らせずに隙がない。どの選手も鍛えられた分厚い胴体の持ち主で、1ポゼッションごとに100%の力を出しきる果敢な戦いぶりを見ていると、Bリーグで活躍する中山拓哉と佐土原遼が卒業生なのも納得できる、仙台高校で佐藤久夫、東海大で陸川章の薫陶を受けた原田政和コーチは、就任10年目のウインターカップにこのスタイルで挑む。
「苦しい場面で身を挺して頑張る選手に一番の称賛を」
──東海大学付属相模の強靭なフィジカルは、どうやって作っていますか。
東海大でトレーニングを担当している小山孟志が同級生です。私がコーチになってから、ウエイトトレーニングの理論など東海大でやっているスタイルをそのまま東海大相模にも取り入れるようになりました。小山にメニューを組んでもらい、定期指導してもらっていました。それを引き継いでくれた現在、江戸川大学男子バスケ部のストレングスを担当している古賀賢一郎くんが長期に渡り定期指導に来てくれていました。彼が東海大相模のトレーニングの文化、礎を築いてくれました。今は副顧問の竹内大敬先生がそれを引き継いで、どんどんトレーニングを頑張る文化のアップデートができています。選手個々ではなくチームとして、週2回から3回のウエイトトレーニングを計画的に積み重ねています。
マインドセットも重要ですから、トレーニングをする目的をしっかり説明して、それと並行してコート上でのコンタクトやフットワークのトレーニングにも繋げています。フィジカルを鍛えて、ディフェンス、リバウンド、ルーズボールを粘り強く頑張るという文化をコツコツと積み上げてきたつもりです。
──そのスタイルが文化としてチームに定着した感覚はありますか。
今はウチに入って来る子たちは、ウエイトトレーニングをやるものだと思って入学してきます。こちらから口酸っぱく説明しなくても、ディフェンス、リバウンド、ルーズボールを頑張らないと試合に出れないことを理解してくれる選手が増えてきました。
ウチで一番カッコ良いとされるプレーはルーズボールダイブで味方に繋ぐプレーなんです。シュートが入ったら誰しもうれしいものですが、粘り強くディフェンスして相手のエースに簡単に得点させないだとか、苦しい場面で身を挺して痛い思いをしながら頑張るだとか、そういう選手が一番の称賛を得られるようなチームでありたいと常日頃から選手には伝えています。
──いくらディフェンス、リバウンド、ルーズボールが大事だと説いても、シュートを決めることが一番の成功体験になるのであれば、みんなシュートを意識しますよね。
試合を見ていただけると分かりますが、エースの髙島舜弥がシュートを決め続けて40得点しても、私は平然としていると思います。ですが、苦しい状況でディフェンスで粘って粘ってボールを奪ってファストブレイク、みたいな時は大喜びしますし、ベンチも応援団も盛り上がってくれていると思うんですよね。
──原田コーチの就任4年目、2019年がウインターカップ初出場となりました。この時、次が2025年になるとは思わなかったのではありませんか。
それは難しいところですね。この神奈川県は簡単には勝たせてもらえないという気持ちは毎年あります。

ウインターカップのカギは「最高の準備ができるか」
──毎年、良いチームを作った自信を持って予選に臨んでいると思います。その中で今年のチームが神奈川県予選を突破できた、その要因はどこにありますか。
この子たちはバスケが好きですね。2019年のメンバーもメンタリティの部分で似ていたと思います。良い意味で私のことをあまり頼らない。苦しい場面でタイムアウトで私の指示を聞くんじゃなく、自分たちがコート上で表現して打開していこうとするメンタリティがあります。
──コーチとして、選手たちのそんなメンタリティを育むことはできますか。
苦しい状況でタイムアウトを取ることもできますが、1試合で何度も取れるわけではありませんし、結局プレーをするのは選手たちで、苦しい場面を乗り越えていかなければいけません。例えば10点、15点のビハインドとなった場面で、そのまま崩れるのではなく自分たちでコツコツとプレーしながら追撃する雰囲気を作り上げる。そういうアプローチは練習試合などを通じてすごくやっています。
その結果、タイムアウトを取ると選手たちがベンチに戻って来る前に、「ああしろこうしろ」、「これがダメだからこうしよう」という会話がもう輪の中で始まるようになりました。私も伝えたい内容はあるのですが、その状況は大事にしてあげたいので、離れたところで選手たちのコミュニケーションを聞いて、残り10秒で「私から一つだけ」と伝えるようにしています。そういう空気感が出来上がっていることは今年のチームの強みだと思います。
──ウインターカップの目標はどこに置いていますか。また、それを達成するためのポイントはどこにあるでしょうか。
ベスト8以上です。選手が最近のインタビューで「ベスト8です」と言っていましたが、そうではなくて「ベスト8以上」なので、ここははっきりさせておきたいです(笑)。ウチは対戦相手のスカウティングや対策をきっちりやるチームです。大会前には通常の練習をやらずに準備に時間をかけるので、まずはそこで最高の準備ができるかどうかがポイントになると思います。
──ウインターカップで東海大学付属相模のバスケを初めて見る人も多いと思います。そんな皆さんに、チームのどんな部分を見てほしいですか。
やっぱり一生懸命さですね。漠然としているかもしれませんが、バスケはボールを追うスポーツなので、そこで高校生らしく一生懸命、最後までボールを追うひたむきな姿を見ていただきたいです。