コリン・ギレスビー

残り1分9秒で8点差、ブッカー不在での劇的な逆転劇

現地11月21日に行われたサンズvsティンバーウルブズは、残り1分9秒で105-113と8点の差があり、頼みのデビン・ブッカーはすでにファウルアウトとなっていた。サンズの負けは決まったようなものだったが、コートに立つ選手たちはあきらめていなかった。

ロイス・オニールがオフェンスリバウンドをそのまま押し込み、ジョーダン・グッドウィンが立て続けに2本のシュートを決めて1点差に。ウルブズのアンソニー・エドワーズがフリースローを2本とも落とし、残り11秒でサンズはタイムアウトを取る。ボールを持ったのはコリン・ギレスピーで、ドライブでディフェンスを振り切ることはできなかったものの、窮屈な体勢で放ったフローターをねじ込み、サンズが逆転勝利を飾った。

「信じられない。僕はコートに立つことさえできていなかった。映像を見直さなきゃ何が起こったのか分からない」とブッカーは興奮した面持ちで語る。

指揮官ジョーダン・オットは、タイムアウトで最後の攻撃をギレスピーに託すことは「自然な判断だった」と言い、ブッカーも「夏のトレーニングキャンプから何度も見てきた形だ」と付け加える。

周囲の興奮とは対照的に、ギレスピーはヒーローになっても落ち着いていた。2ウェイ契約でサンズに加入し、定着に成功したキャリア3年目の26歳は、この日のために準備を重ねてきた。「ブック(ブッカー)もディロン(ブルックス)もファウルアウトになっていたから驚きはなかった。でも、ハドルから出る前にライアン(ダン)に『オフェンスリバウンドを頼むぞ』と伝えていたよ。もし外しても、誰かが押し込めるようにとね」

勝利が決まった瞬間、ギレスピーはチームメートに揉みくちゃにされた。「ワクワクする瞬間だったけど、それは僕だけじゃなくチーム全体に言えることだ。僕らは決してあきらめない。僕らは常にお互いのことを考え、誰もがお互いの成功を願っている。僕もチーム全員が大喜びしているのを見て、最高の気分になれた」

ギレスピーは新型コロナウイルスのパンデミックによる特例を使って大学で5年間プレーしている。2022年のNBAドラフトでは指名を受けられなかった。2ウェイ契約でナゲッツへの加入が決まるも、すぐに足の手術で長期離脱となり、デビューは翌シーズンへと持ち越されて、ナゲッツの優勝を外から見守ることになった。2024年にはサンズに2ウェイ契約で加入。ここでも足首を骨折して出だしで大きくつまずいた。

そんな艱難辛苦を経ているからこそ、彼はヒーローになっても浮かれるところがない。周囲の興奮をよそに、彼は落ち着いてこう話す。「たくさんのケガをして、復帰するのに相当な努力が必要だった。でも、僕は助けてくれる人に恵まれた。バスケから1年離れるような最低の時も、サンズに入ってすぐ骨折した時も助けられた。家族もチームメートも、僕が落ち込んでいる時に励ましてくれる」

「そのおかげで僕はこうしてプレーできている。支えてくれた多くの善き人たちのおかげで僕のキャリアは意味のあるものになった。感謝しかないよ」