
今シーズンの前半、関東大学選手権6位、関東大学新人戦3位とまずまずの成績だった中央大。しかし、古豪復活をかけて挑んだ秋の関東大学リーグ戦1部は主力のケガが相次ぎ、結果は8勝14敗。順位も1部12チーム中9位に終わった。「特に攻撃面で苦労した」と荻野大祐ヘッドコーチ。なかなかベストの布陣が組めず、我慢のリーグ戦となったが、懸念されたケガ人は10月上旬から徐々に復帰。ベストな状態を取り戻しつつある。「このままでは終われない」とキャプテンの宮内柊人は覚悟を決める。集大成となる全日本大学選手権(インカレ)で中央大の底力を見せられるか。
攻撃は苦しんだが守備は好調
中央大は昨秋のリーグ戦で開幕から連敗したことをふまえ、「今年は好スタートを切る」とリーグ戦に挑んだ。そして、8月27日の開幕から5試合の内容は悪いものではなかった。初戦の日本大とはわずか2点差。2戦目の白鷗大、4戦目の日本体育大、5戦目の神奈川大にはいずれも勝利し、3勝2敗のスタートを切った。だがその一方、多くの負傷者が出てしまった。
白鷗大戦でガードの高山鈴琉が足首を負傷。日体大戦でもセンターの山崎紀人が足首を痛めた。肉離れで開幕2戦目からの出場となったフォワードの坂口大和も、5戦目でケガが再発してしまった。3人とも全力でプレーした結果のケガで不可避だったが、高山、坂口はその後1カ月以上欠場した。山崎も欠場と時間制限のある出場を繰り返した。
中央大は今シーズン、坂口を軸にオフェンスの型を作ってきた。また、ともに197cmの山崎とカッター勲生を同時に出場させ、ビッグラインナップで留学生のいる大学に対抗する戦術も練ってきた。しかし、リーグ戦開幕から10日で大幅な変更を余儀なくされた。「春先から時間をかけて取り組み、形になってきたのでショックはありました。新たなメンバーの戦術も作りましたが、フィットするのに時間がかかってしまった」と荻野コーチは唇をかむ。
リーグ屈指のオフェンス力を誇る坂口、得点とアシストに非凡な才能を持つ高山の欠場の影響は数字にも表れている。リーグ戦22試合の中央大の総得点は1511点。1試合平均68点で全体9位にとどまった。ただ、攻撃で苦しんだ一方、守備は目を見張るものがあった。綿密なスカウティングを元に、選手全員が40分間、強度の高いディフェンスを遂行した。リーグ戦22試合の総失点は1569点。これは全体4番目の少なさで、堅守の白鷗大(総失点1578点)よりも良かった。
センターの山崎が十分にプレーできず、リーグ戦後半からはカッターが欠場しリバウンドで苦労する中、この失点に抑えられたことは大きな収穫だろう。石口直は「今年は守備力強化を目標に掲げ、全員がフィジカルトレーニング含めて一生懸命取り組んでいる。その成果だと思う」と語った。

苦しい状況を救った鴫原樹生
リーグ戦に多くの若手選手が出場し、経験を積めたことも大きかった。主力選手の欠場で、ベンチメンバーの出場時間が大幅に増え、2年の坪井遥生、山川温暉、1年の三谷拓夢、平原侑真らが積極的に起用された。「チームが苦しい状況だからこそ、貢献したい」。全員がその思いでプレーした。短い出場時間ながら、2桁得点を挙げる選手が何人も現れた。
上級生では、3年の鴫原樹生の活躍が際立っていた。國學院大學久我山高出身で186cm78kgのフォワードは、春シーズンは出場時間がそれほど多くなかったが、リーグ戦では16~30分の出場とローテーションを担った。フィジカルの強さを生かした守備に加え、攻撃ではハイポストからの1対1などで得点を重ねた。
鴫原は「主力のケガは正直あせりましたが、それを引きずってはダメです。自分はリバウンドや守備を求められているので、とにかくそれで勝利に貢献しようと思いました。これだけ多くの試合に出たのは初めてでしたが、疲れよりもうれしい気持ちが大きかったです」と語った。荻野コーチも「鴫原は苦しいチームを救ってくれた。数字に表れないディフェンスやボール回し、スクリーンをかけるプレーなども一生懸命やってくれた。リーグ戦の2カ月半で大きく成長した」と手放しで褒める。
國學院大學久我山から中央大に進んだ選手として、小野龍猛や石坂秀一を想起する人が多いと思うが、鴫原のプレーは宇山博和に近いかもしれない。2001年、中央大がインカレ準優勝した時のフォワードで、伊藤俊亮とともにインサイドを支配した。屈強な身体を生かしたプレーは、鴫原に通じるものがある。
リーグ戦前半、故障者が相次いだ中央学だが、10月4日に高山が、10日に坂口が復帰した。ゴール下の要の山崎も、負傷した当初より足首の痛みは和らいでいるという。10月5日から欠場しているカッターも、11月中旬には練習に復帰する予定だ。春先に靭帯を断裂した深澤桜太の復帰が待たれるが、インカレに向けて臨戦態勢は整いつつある。
「このままでは終われない。やり返したい」と宮内。坂口も「インカレ優勝の目標は変わっていない」と続く。苦戦した秋のリーグ戦から一変した姿を見せられるのか。12月3日のインカレ初戦に注目だ。