
小さいチームでも攻守にアグレッシブに走力で上回るのが、県立小林の伝統的なスタイル。それでも今年のチームには吉竹結華と大湾愛佳という頼もしいビッグマンが2人いる。177cmの吉竹は留学生相手にも粘り強いディフェンスで対抗し、攻めに転じればスピードで相手を振り回す。173cmの大湾はダイナミックな動きで攻守に、そしてリバウンドに飛び回ってチームにエネルギーを注入する2年生。スピーディーに、そしてパワフルに戦う『走れるビッグマン』の2人に、ウインターカップに向けた抱負を語ってもらった。
「中学では毎回ボッコボコにやられていました(笑)」
──まずはお2人それぞれの自己紹介をお願いします。
吉竹 小林高校3年、センターの吉竹結華です。リムランで走りきる、ショートコーナーでの強いプレーや泥臭いリバウンドが自分の役割で、留学生のいるチームが相手なら外からも攻めることも私の仕事になります。私はバスケが上手いわけではなくて、強豪校には自分よりずっと上手い選手がいます。それでも自分にできるのは走ること、リバウンドを取ることで、相手の身長の高い選手と接触プレーでやり合うことを意識しています。
大湾 2年生の大湾愛佳です。身長はそれほど高くありませんが、コンタクトで強く押し込んでゴール下を決めきるプレーが得意で、チームのオフェンスが上手くいっていない時にオフェンスリバウンドで貢献できるようなプレーを心掛けています。
──2人は同じ福岡出身の先輩と後輩ですよね。オフコートの2人がどんなキャラクターなのか、それぞれ相手のことを教えてください。
吉竹 私たちは寮でも相部屋なので、コート外で一緒にいる時間もかなり長いです。大湾はバスケだと力強いプレーをして、難しい場面でもシュートを決める勝負強さがあって、頼りになる後輩なんですけど、寮だとちょっとふわふわしていると言うか、だいぶふわふわしています。頼りになる後輩というよりも、良い意味で妹みたいな子です。
大湾 そんな感じで言ってますけど、吉竹さんも一人になるとふわふわしているというか、一人で鼻歌を歌っていたり、静かな時は静かなんですけどスイッチが入ったらめっちゃしゃべります(笑)。
──仲が良い感じは何となく伝わります。中学校時代は面識はありましたか?
吉竹 大湾は強豪の折尾中出身です。中学の時には何度か対戦していて、ポジションも重なっているのでマッチアップもしていますけど、毎回ボッコボコにやられていました。同じチームになれて良かったです(笑)。

「大事な試合で練習してきたことが出せた」
──夏のインターハイでは2回戦で桜花学園に敗れました。負けはしましたが、手応えも得られた試合だったと聞いています。それはどんな部分ですか?
吉竹 30点差で負けたのですが、自分たちのミスが多い試合でした。私はファウルトラブルになって大事な局面でコートに立てず、チームとしても桜花学園にやられる以前に自分たちの約束事であるディフェンスの起こしのミスとか、オフェンスでエントリーのパスミスがいっぱいありました。自分たちのミスをなくせば桜花学園が相手でももっと良い戦いができたという手応えは得られたので、ウインターカップを見据えて一人ひとりが強い気持ちで練習をしてきました。
──ウインターカップ出場のためには、宮崎県予選で延岡学園というライバルを倒す必要がありました。序盤にリードしながら後半に巻き返される難しい展開となった試合に勝てた要因は何でしたか。
吉竹 チームとしては出だしから点は取れていたのですが、シュートが入ってくれただけで、自分たちのやりたい点の取り方ではありませんでした。シュートが入らなくなった第3クォーターに、自分たちがディフェンスのチームとして相手の点数をどれだけ抑えられるか。そこで無意識のうちに引いて守ってしまい、前から行くディフェンスができなかった、どこか逃げてしまったところがありました。
大湾 吉竹さんが話したことと一緒で、ディフェンスで頑張るべきところで頑張れませんでした。そこで自分のプレーを振り返ると、吉竹さんが留学生を相手に身体を張って守ってくれた分、私はどこでチームのために頑張るか。それは得点を取ることだと思うのですが、ボールを持っても積極的に行けていなかったし、味方の3ポイントシュートに対してオフェンスリバウンドを取りに行く、そこで向こうのファウルを引き出すようなプレーができませんでした。チームの調子が良い時だけでなく、苦しい時間帯にも点が取れるようになって、チームの流れを良くできる選手になりたいです。
──とは言え、相手も必死に反撃してくる中でもっと慌ててもおかしくなかったところで崩れずに踏ん張れたのは『強い勝ち方』だったと思います。良かった部分もあったのでは?
吉竹 私の一番の役割は留学生とのマッチアップで、それは自分にしかできないことだから逃げてはいけないと思っています。そこは結構守れたと思うし、自分で積極的に攻めることはできなくても、チームのみんながやりやすい形は作れました。
大湾 前半にシュートが入っていたのは偶然ではなく、長い時間をかけてやってきたゾーンブレイクの練習通りに攻めることができて、シューターたちが決めてくれました。大事な試合で練習してきたことが出せたのは成果だと思います。
吉竹 ずっと同じことを繰り返し繰り返しやってきて、「もう自信がある」というところまで持っていけたのが良かったです。ですが、自分たちがやってきたことすべてを出せたわけではないので満足はできないと言うか、この先に繋げていかなきゃいけないと思っています。

「これでもかってぐらいプレッシャーをかけていく」
──県立小林のバスケはすごく独特で、走りとエネルギーを前面に押し出すスタイルは見ていて面白いです。やっている選手たちはオールコートで走り続ける大変さはあるものの、試合中も楽しそうです。2人はそれぞれ自分たちのバスケをどうとらえていますか。
吉竹 入学する前からディフェンスのチームなのが私の中では大きいです。身長が高くないチームだからこそ、全国で戦うには引いて守るんじゃなくオールコートディフェンスを徹底しています。そこで1対1で守ったりダブルチームを仕掛けたりして、8秒バイオレーションを取れた時は私たちもめっちゃ盛り上がります。そうなるとオフェンスも良い流れで入れて、ドライブにも鋭く行けます。1年生の時からずっと、小林のバスケは「ディフェンスとオフェンスが繋がっている時は強い」と思っています。
大湾 私も同じなんですけど、私が小林のバスケで一番楽しいと思うのは、小林らしいオールコートディフェンスでスティールして、そのままの流れでシュートを決めた後に、もう一回オールコートディフェンスで仕留めに行くのか、それともゾーンディフェンスで相手のターンオーバーを誘うのか、そういう駆け引きをやっている時です。
吉竹 自分たちが強みにしているディフェンスを、大変と思うのではなく笑顔でやって、8秒を取ってハイタッチしてみんなで喜ぶのが小林らしさです。だから「これでもか」ってぐらいディフェンスでプレッシャーをかけていきたいです。
──でも、40分間走り続けるのはしんどいですよね?(笑)
大湾 足はキツいです(笑)。でも、そういう時はベンチも含めて一緒に盛り上がっているし、プレッシャーをかけて8秒が取れたり相手のパスミスを誘った時はベンチがめっちゃ盛り上げてくれるし、すごくキツいのにそれが楽しくて笑顔になれるのは大好きです。

「自分がやる、という気持ちをプレーで表現する」
──では最後に、ウインターカップでの目標と意気込みを教えてください。
吉竹 チームとしては日本一を目標にしています。宮崎県のチームで東京体育館でプレーできるのは自分たちだけで、それは当たり前のことじゃないので、この機会に自分たちのプレーをしっかり表現することがまず絶対に大切だと思っています。支えてくださる方々、応援している皆さんに「小林のバスケって応援したくなるよね」と感じてもらい、見ていて気持ちが良い方向に向かうようなプレーができる私たちでありたいと思っています。
大湾 個人的には去年も3年生と一緒にコートに立たせてもらったのですが、シュートを決められない場面がありました。先輩は「1年生だからそこはいいよ」と言ってくれたのですが、今の立場になってそれでは絶対ダメだと思っています。「自分がやる」という気持ちをプレーで表現して、3年生と一日でも長くバスケができたらいいなと思います。
──ウインターカップで初めて県立小林のバスケを見る人に、「ここに注目!」というポイントを教えてください。
吉竹 ディフェンスでプレッシャーをかけて、スティールからそのままブレイクに行く時の勢いです。ディフェンスからオフェンスにそのまま繋がってシュートまで持っていく時のスピード感は「小林らしい」と思いますし、そこはチームでも盛り上がります。
大湾 付け加えると、スティールからレイアップに持っていけるのが一番なんですけど、そこで行ききれなかった時にはシューターが走ってきています。その速い流れのまま3ポイントシュートを打つ場面も「小林らしい」プレーで私たちも盛り上がるところなので、注目してください。