ガード陣にケガ人続出、2ウェイ契約選手が救世主に

長い長いトンネルを抜けて、ついにペイサーズがシーズン初勝利をつかんだ。現地11月1日、ホームでのウォリアーズ戦。大きな点差は付かなくてもウォリアーズに先行される時間帯が長く続く展開となり、第4クォーターに入って突き放される。

残り6分、ステフィン・カリーに3ポイントシュートを決められ、93-104と11点差に。それでもここからの3分間、粘り強いディフェンスからのカウンターで反撃。ジミー・バトラーからステフィン・カリーへのキックアウトのパスをクエントン・ジャクソンがカットし、パスカル・シアカムと走りながらのパス交換からイージーレイアップへと持っていく。ウォリアーズのホットラインを断ち切っての速攻は試合の流れを一変させた。

ジャクソンは残り1分で逆転の3ポイントシュートも決め、一度は追い付かれたが直後にシアカムが勝ち越しの3ポイントシュートを決める。その後はウォリアーズの反撃を断ち切り、114-109で勝利を収めた。

6月末までNBAファイナルを戦っていたチームが、その4カ月後の開幕をケガ人続出で迎えての5連敗。重苦しい雰囲気を打ち破る1勝を挙げて、チームもインディアナのファンもお祭り騒ぎだった。指揮官リック・カーライルも「苦しい状況でこそタフでなければいけない。それを体現してくれた選手たちに心からの敬意を表する。勝てて気分が良いよ」と上機嫌だ。

前の試合で決めていれば決勝ブザービーターだったシュートを外したアーロン・ネスミスが、この日は5本の3ポイントシュート成功を含むゲームハイの31得点。指揮官カーライルは「優れたシューターは『すぐに忘れる能力』を持っている。重要なのは前の試合で何が起きたかじゃなく、この試合で何をするかだ。チームが苦しくて負担が増える中で大きくステップアップしてくれた」と、その働きを称えた。

クエントン・ジャクソンの働きも特筆すべきものだった。ウィザーズで2022-23シーズンにデビューし、ペイサーズに移って3年目の彼は27歳だが、ずっと2ウェイ契約で不安定な立場の中でプレーを続けている。そのジャクソンは先発起用に応え、31分のプレーでフィールドゴール16本中10本を決めて25得点、6リバウンド10アシストも記録。ペイサーズらしい速い展開を作り出しながら、自らも積極的にアタックした。

勝負を決めたのはラスト6分の攻防で、ここでペイサーズは22-5とウォリアーズを圧倒した。試合後にジャクソンと並んで会見に応じたシアカムは「ステフにできる限りプレッシャーをかけた。受け身になるのではなく自分たちから仕掛けて流れを持って来るのが僕らのスタイルであり、それを彼が体現してくれた」と称賛の言葉を惜しまなかった。

ジャクソンはカリーとのマッチアップをこう語る。「ステフは偉大な選手で、僕では比べ物にならない。だからこそ僕は『意思の力』で立ち向かった。僕はレベルの高い挑戦が好きだ。ステフをマークする機会を喜んで受け入れ、全力で挑んだ。そのメンタルが良かったんだと思う」

ペイサーズでの過去2シーズン、ジャクソンは脇役に徹してきた。2ウェイ契約のためプレーオフにも参加していない。それでも彼は自分がペイサーズの一員であるとの自覚を強く持ち、試合に臨んでいる。

「僕のプレースタイルはこのチームのバスケに合っている。だからこそ契約がもらえるんだと思うし、コーチもチームメートも僕に僕らしくプレーさせてくれる。だから自信を持ってコートに立ち、これまでの努力の成果が発揮できる。このチームには素晴らしいガードがたくさんいて、全員から多くを学んできた。今こそ、それを発揮すべき時だと思っている」