写真=高村初美

第1戦を島根、第2戦を広島が取り、決着は第3戦へ

先週末、島根スサノオマジックと広島ドラゴンフライズがB2プレーオフのセミファイナルを戦った。B1と同様に3地区制のB2だが、西地区は異様にレベルが高かった。島根が地区優勝を果たし、2位の広島がワイルドカードでプレーオフへと駒を進めた。ワイルドカードは各地区の首位チームを除く15チームの最高勝率のチームで、広島は46勝14敗でこの権利を勝ち得た。広島に競り負けた熊本ヴォルターズは44勝16敗で西地区3位となりシーズンを終えているが、その熊本も中地区優勝の西宮ストークス(43勝17敗)、東地区優勝の群馬クレインサンダーズ(40勝20敗)よりも勝率は上。圧倒的な『西高東低』だった。

B2最高勝率の島根と、それに次ぐ広島。レギュラーシーズンの対戦では4勝2敗と勝ち越し、さらにはホームアリーナの松江市総合体育館で戦う利点もあった。両者ともシーズンの総決算、互いにディフェンス重視の隙のない展開が続く。リバウンドを取ってのシンプルな速攻という形がほとんど見られず、わずかなズレから決してイージーではないシュートを沈めてスコアを動かす展開。そんな第1戦をビッグショットの差で島根が制した。

そして第2戦、勝てば昇格決定という状況で、4203人の観客が入ったアリーナは熱気に包まれていた。両チームの選手は前日に引き続き緊張感に満ちた攻防を繰り広げる。厘差ながら広島がリードする展開の末、最後の最後でコナー・ラマートの3ポイントシュート、見事なビッグショットで広島が第2戦を取った。

1勝1敗──。こうして両者の決着はBリーグ初の『GAME3』、前後半5分のゲームに持ち越された。「第2戦を取ったチームが、勢いで有利」と予見された第3戦だが、島根は観客に後押しを受けてリードを奪う。それでも後半残り1分30秒をすぎたところで、ラマートに3ポイントシュートを決められ1点差に。ファウルゲームの末、残り9秒で広島に最後のポゼッションが回ってくる。ダニエル・ディロンにドライブでインサイドを破られるも、残り1秒で放ったレイアップをジョシュ・デービスがブロック。11-9で第3戦を制した島根のB1昇格が決まった。

勝久ヘッドコーチ「チームを誇りに思っている」

両チームとも鬼気迫るディフェンス合戦を繰り広げ、どちらに転んでもおかしくない試合だった。そんな熱戦を制し、『B1昇格』という至上命題を果たした島根。ヘッドコーチを務める勝久マイケルはこみ上げる感情を抑えながら次のように語った。

「最後、勝った瞬間、選手たちの涙を皆さんが見て分かるように、今シーズンに懸けた思いは『1位で終わらなければいけない』、『1年でB1に昇格したい』、『負けられない』という気持ちでした。こんなすごい気持ちを見て、チームを誇りに思っているのが今の心境です。選手たちのハートに感動しています。まだ終わったばかりなので信じられない、実感がわかない部分も少しあります」

広島の佐古賢一ヘッドコーチからは「優勝して」と声を掛けられた。「昇格よりもB2優勝を考えている」と繰り返し語っていた佐古から、その夢を受け継いだことになる。

「今は気持ちが相当にハイなので、これからもう一回ゲームの準備に入るのは何日かかかるかもしれません。ただ、『勝ちたい』とか『負けたくない』という気持ちは、このチームは誰よりも強いと信じています。コーチとしてはもう一度このハイからいつもの準備をして正しいマインドセットでもう一回勝って、島根のブースターのみなさんに喜んでもらうことは大事なので、もう1試合頑張りたい」

4月の広島戦で集めた4011人を上回る動員の新記録を打ち立た。勝久ヘッドコーチは「昨日と今日の声援は間違いなくダントツでナンバー1です。勝つための後押しとなりました。ありがとうございますと言いたいです」と、ブースターへの感謝と賛辞を口にした。

島根一筋の山本「自分がここで決めないと」の気持ち

チーム創設メンバーで島根一筋7年目のキャリアを誇る山本エドワードは、「この7年間、こういう勝負どころで勝っていない。やはり勝たないといけない。それが3試合目の気持ちで負けたくないという部分で出た」と勝因を語る。第3戦でチーム最初の得点を挙げたシーンを、「自分がここで決めないとチームに流れが来ないという気持ちだった」と振り返る。

「こうして昇格を成し遂げられたこと、これを目標にして1試合1試合に臨んで、ブースターの皆さんに昇格を届けられたのがうれしい。今日まで支えてくださった方々に本当に感謝したい」と山本は語る。

そして、チーム唯一の島根県出身選手である安部潤は「3年前に島根に移籍してきて、島根のバスケットに貢献したいとずっと思ってきたので、これで少しはかなったのかなという気持ちがあります」と語る。

昇格を決めた後はコートで大粒の涙をこぼした。「今シーズンは個人的にも苦しいことが多くて、調子が上がらない時もあったんですけど、昇格することで報われると思っていたので、その気持ちが出ました。決まった瞬間は何も考えられなかったんですけど、自然と涙が出ちゃいました」

昇格は決まったが、土曜には代々木第二でB2プレーオフ決勝という大一番が待っている。リーグ最高勝率のチーム、激戦の西地区王者として、負けるわけにはいかない。山本は「B1昇格は決定したんですけど、完全優勝するのがもう一つの目標でもあるので、しっかりもう一度チーム一丸となりたい」と語る。安部も「ここまで来たらB2優勝で終わりたい。代々木で島根のバスケットを見せたいと思います」と意気込んだ。