ヤニス・アデトクンボ

「大事なのは戦う姿勢。それを求めてしまう」

トレードデッドラインを過ぎてもヤニス・アデトクンボはバックスの所属選手のままだ。これは彼が繰り返し主張している「トレードを要求することはない」という言葉が本当だったことを意味している。

ヤニスが本当にトレードを要求していたら、バックスはその内容がどうであれ、とにかくトレードを成立させていたはずだ。ヤニスの権力がそれだけ強いというより、彼のこれまでの献身と成果をリスペクトするからこそ、その要求に応じなければならない。

それと同時にヤニスもバックスへのリスペクトを忘れず、バックスに最善の条件を提示するチームが現れないのであれば移籍を強行しようとはしなかった。

ヤニスは数日前に『The Athletic』のインタビューで心境を語っている。「僕はここに残りたい。でもそれは優勝のためであり、プレーインのために必死に戦うわけじゃない。負けることもあるのは分かっているし、大事なのは戦う姿勢だと思うけど、どうしても試合中にイライラしてしまう。他のチームの戦いぶりや結束力、互いのためにプレーする姿を見ていると、自分もそれを求めてしまう。僕にとっては競争がすべてだ。もう31歳で、このレベルでプレーできる機会は限られている。レブロンみたいに41歳までプレーできるかもしれないけど、現実を見なければならない」

20勝29敗で東カンファレンス12位のバックスは、ヤニスを放出しなかったものの巻き返しに必要な補強を行ったわけではなく、彼の野心を満たすチームでないことに変わりはない。彼はじっくりと時間をかけてケガを治した後、優勝のためではなくミルウォーキーのファンのためにプレーし、オフに移籍するだろう。

ニックス、ウォリアーズ、ヒート、ティンバーウルブズが今回ヤニス獲得に動いたと言われている。今オフまで待てば、その数は2倍、もしくは3倍に膨れ上がり、オファーの内容は格段に良くなるだろう。

バックスはヤニス放出とともに再建期に入る。そのための資産は多ければ多いほど良い。そういう意味では、ヤニスは自分の時代が終わった後のバックスのためにこのタイミングでの移籍を我慢したとも言える。

ヤニスとバックスにとって理想のシナリオは、バックスがここから優勝争いのできるレベルまで持ち直すこと、最低でもその可能性を感じさせるビジョンを打ち出すことだ。今シーズン終了後のトレードが既定路線となるが、バックスはその道を切り開くわずかな可能性を手に入れた。ヤニスも本心ではそうなることを願っているはずだが、「現実を見なければならない」こともよく理解している。