ゴンザガ大での急成長ぶりが示す『伸びしろ』
今年のNBAドラフトまであと24時間。ザイオン・ウィリアムソンの全体1位指名が確実と見られており、続いてRJ・バレットとジャ・モーラントがトップ3の指名を受けることになりそうだ。しかし、各メディアの指名順位予想は、そこから先が定まらない。
その中で、評価をじりじりと上げているのが八村塁だ。もともと注目されてはいたが、そこから1巡目の上位指名もあり得ると見られるようになり、今では10位以内で八村が指名されるとの予想も少なくない。
NBA関係者に意見を聞くと、評価を高めているポイントの一つに八村が『即戦力にして素材型』であることが挙げられる。大学に1年だけ在籍してNBAに挑戦する、いわゆる『ワン&ダン』の選手はサイズや運動能力が評価され、スキルやバスケIQ、高いレベルでのプレー経験はあとから身に着けても大丈夫だと考えられる『素材型』だ。それに対して八村のように3年生までプレーした選手、あるいは4年間を全うした選手は、アメリカ大学バスケの強豪チームを引っ張り、大舞台で勝ってきた経験を持つ『即戦力』と見なされる。
八村はこの両方を兼ね備えていることで評価を上げている。ゴンザガ大への入学の際にレッドシャツ(登録外の選手)となることを一度はチームから勧められており、即戦力ではなかった。実際、フレッシュマン(1年目)ではプレータイム4.6分の控え選手。それがソフォモア(2年)になると貴重なシックスマンとしてプレータイムを20.7分に伸ばして活躍。ジュニア(3年)に進んだ昨シーズンはチームのエースとして攻守にフル回転した。
本来のステップを踏んでいないにもかかわらずゴンザガ大のエースとして活躍できたのだから、場数を踏み経験を積むことで、さらに潜在能力が引き出されるとの見方をされているのだ。ゴンザガ大に入ってからの3年間での突出した成長ぶりがまだ数年は続くと期待させることが、評価向上に繋がっている。
バスケに取り組む日々の姿勢があらためて評価対象に
もう一つのポイントは、八村のバスケットに取り組む姿勢、性格や規律といった内面の部分だ。上位指名候補に対しては、バスケットボール以外の面での日常の過ごし方や考え方、家族や友人とどう向き合っているかまで、詳細なデータが集められる。ドラフトが近づいて八村の調査が進めば進むほど、各チームは八村の日本人らしい勤勉さに注目するようになっている。
八村の周囲、ゴンザガ大バスケットボール部への関係者への聞き取り調査では、ポジティブな話しか出てこない。まだ英語も満足に話せない入学当初にロスター登録から外れそうになれば、そこで心が折れてもおかしくない。それでも八村は「ロスター登録をして、プレータイムは自分で勝ち取る」という選択をして、見事に結果を出した。入学した時点では大きなハンデを背負っていたが、それを次々と乗り越えてゴンザガ大のエースへと成長したのだ。
英語の習得もその一つ。アメリカに来た時点では必ずしも上手ではなかった八村の英語力はメキメキと上達。今では苦もなく周囲とコミュニケーションを取れるようになっている。これも八村の課題に向き合う姿勢、努力を続けられる人間性の証拠と見なされている。逸材であってもNBA選手となって大金を持ち、周囲からもてはやされる中で、道を外れてしまう選手は残念ながら少なくない。素行不良がメディアで取り上げられるようなことはなくても、成長のスピードが鈍化してしまう選手も多い。そんな中、八村は選手としての伸びしろがまだまだあり、成長のための努力を怠らない人間性も備えていることで評価を高めている。
『成功する可能性が高い賭け』として評価を高める八村が、最終的にどの順位で指名されるのか。ここまで来れば指名順位の多少の違いに意味はなく、そのチームがどんな意図で八村を指名したかのほうが大事だが、それでも目が離せないNBAドラフトになるのは間違いない。
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— バスケット・カウント (@basket_count) 2019年6月13日