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放出を希望すればするほど『足元を見られる』羽目に

関連するチーム内のゴタゴタを解消する必要はあるものの、ニックスの来季構想にカーメロ・アンソニーは入っていない。

シカゴで開催されたNBAドラフトコンバインに出席した球団社長のフィル・ジャクソンは、アンソニーの去就についての質問に「彼の契約にはトレード拒否条項がある」と答えた。

ジャクソンは「私の希望は主張した。これ以上の表現方法はない」と言う。「彼には成功してもらいたいが、それは違うチームでのこと。残念だが、我々は即優勝というレベルには到達できない。来年はプレーオフに進出したいが、優勝レベルにあるとは考えられない」と続けた。

アンソニーは優勝を目指したい。ジャクソンはニックス再建にアンソニーが不要だと考えている。ある意味、両者の利害は一致しており、アンソニーがトレード拒否条項を破棄して強豪チームに移籍するしかないように思える。

まもなく33歳になるアンソニーは決して若くない。正直に言えば「ピークは過ぎた」と言わざるを得ない。だが、彼ほどの実績とキャリアを持ち、リーダーシップを発揮できる選手を欲しがるクラブはいくらでもあるはずだ。

ここで問題になるのはニックスの態度だ。アンソニーがトレードを受け入れたとしても、相手のクラブから十分なリターンを得られない可能性が高い。一般論で考えれば、アンソニーほどの選手を放出するからには、同等の選手を獲得するか、数年分のドラフト1巡目指名権を譲渡してもらわなければ見合わない。

だが、フィル・ジャクソンがここまで「アンソニーを出したい」という意向を見せてしまっているのでは、トレード相手のクラブに足元を見られるのは確実。プレーヤーとしての価値は別として、トレード要員としてのアンソニーの価値は暴落しているのだ。

指導者としてのジャクソンは、ブルズとレイカーズで3度の3連覇を達成し、歴代最多11回の優勝を誇り、『禅マスター』の異名を持つ名伯楽だ。しかし、フロントとしての力量に関しては疑問符が付く。少なくとも、アンソニーを含む超大型トレードを成立させたいのであれば、『持ち札』の出し方をもう少し考えるべきだ。