文=大島和人 写真=B.LEAGUE

3ポイントシュートと富樫のピック&ロールに徹底対策

栃木ブレックスと千葉ジェッツはレギュラーシーズンで8度も戦い、戦績は4勝4敗と完全に五分。また1月のオールジャパンでは準々決勝で千葉が81-62と栃木を下している。

このチャンピオンシップに限れば、栃木は東地区王者で、千葉はワイルドカード(東地区3位)という立ち位置の違いがある。しかし栃木が46勝、千葉は44勝というレギュラーシーズンの結果を見ても分かる通り、両チームに差はほとんどない。

外国籍選手のオン・ザ・コート数は栃木、千葉とも「1-2-1-2」で、クォーターファイナルの第1戦を迎えていた。

栃木のヘッドコーチ、トーマス・ウィスマンは言う。「シーズン通して10回も戦いわないといけないのだから、毎回同じディフェンスをやったら勝てない」。栃木は今まで違う、そしてメリハリを強く付けた守備で難敵の強みを奪おうとしていた。

富樫勇樹は「徹底して千葉の3ポイントを守ってきた印象が強い」と振り返る。千葉は富樫、小野龍猛、石井講祐と3ポイントシュートの名手が揃っている。しかし13日の初戦は3人がいずれも3ポイントシュートを1本も投げていない。

栃木は外を中心にケアすることで、ウイスマンヘッドコーチが「そこでやられてしまうと彼らを勢いづけてしまう」と警戒していた相手の強みを遮断した。富樫をあえて中に切り込ませて、インサイドがヘルプに行きつつタフショットを打たせる『プレー限定』が機能していた。

栃木は第1クォーターこそ19-20で落としたものの、第2クォーターはケガ明けのジェフ・ギブスが大活躍。チームとしてもリバウンドで千葉を大きく上回った。この10分間で栃木は15本のリバウンドを獲得し、7本の千葉を圧倒。特にオフェンスリバウンドを取ることで相手から速攻の機会を奪っていた。

千葉の大野篤史ヘッドコーチはこう悔いる。「前半に10本のオフェンスリバウンドを与えてしまった。ポゼッションが10個違えば、どうしても自分たちの方は苦しいゲーム展開になる」

アジャストする千葉、突き放しにかかる栃木の攻防

40-32と栃木がリードして前半終了。栃木は古川孝敏の2本を筆頭に計5本の3ポイントシュートを成功させていた。対する千葉は3ポイントシュートが「3分の0」という極端なスタッツだった。

それでも千葉は、第3クォーターに入るとリバウンド、オフェンスともアジャストに成功する。ヒルトン・アームストロングがポスト役になり、マイケル・パーカーを生かした。富樫は3ポイントシュートだけでなくピック&ロールの形も強い警戒を受けていた。しかしダブルチームも含めてマークを徹底する相手に対し、後半はパスを上手くさばいていた。

富樫はこう語る。「点数を取らせたくない選手には徹底して取らせないディフェンスをしていた印象です。自分とタイラー(ストーン)とのピック&ロールにもトラップに来たりしていた。そこは4対3になっているわけなので、しっかりパスをつないで得点しないといけない」

富樫は前半に「2本」だったアシストを、後半は「5本」に増やした。大野ヘッドコーチが「栃木のディフェンスはアウトサイド中心に守っていたけれど、それに対して後半はアジャストできた」と振り返るように、千葉がリズムを取り戻しつつあった。

ただ栃木で前半に引き続いて貢献を見せたのが古川孝敏。残り6分7秒には3ポイントシュートを沈め、さらにバスケット・カウントのフリースローを決める4点プレー。これで栃木は50-36とリードを広げる。その後やや点差を詰められたが、渡邉裕規が第3クォーターの最後に3ポイントシュートのブザービーター。60-51と9点リードで最後の10分間に入る。

渡邉は「プレーオフなので、ああいうプレーが出るとチームは乗る。そういうのが意外と勝因になったりする。勢いを与えられたのかなと思います」と胸を張る。ただしシュートの狙いについては「時間がなくて目の前が空いただけ。狙ってできるものではない」と照れ気味に語った。最終的にはここの『貯金』が試合を左右する価値を持った。

追い詰められた状況でロシターが『エースの仕事』

千葉は第4クォーターに入っても不要なテクニカルファウルを吹かれるなど、ややチグハグだった。しかしアームストロングがインサイドで大奮闘を見せて流れを引き戻す。彼は残り5分10秒にダンクを叩き込むと、残り2分44秒にはオフェンスリバウンドを2連続で確保して自らジャンプショットを沈める。この時点で64-66と栃木に詰め寄っていた。

第4クォーターの千葉にあって、3ポイントシュートを3本沈めたのが原修太だ。シュートの名手が多い千葉の中で、栃木から見て原は多少優先順位の低いターゲットだった。試合を通しても「4分の4」で3ポイントシュートを決めた原の勝負強さもあったが、栃木は守備の小さな綻びを突かれて点差を詰められてしまう。残り1分51秒には原がこのクォーター3本目の3ポイントシュートを決めて、栃木は71-69まで迫られた。

それでも、ここで踏ん張ったのがライアン・ロシターだ。残り1分20秒にはレイアップとバスケット・カウントから得たフリースローを決め、74-69と点差を拡げる。ロシターはその後もジャンプショット、フリースローで得点し、千葉をファウルゲームに追い込んだ。栃木は古川が残り5秒のフリースロー2本をきっちり決めて7点差。そのまま80-73で初戦をモノにしている。

竹内公輔「明日は相手をさらに上回るディフェンスを」

栃木にあって得点こそ「6」に留まったが、9リバウンド2スティール1ブロックとディフェンスを下支えしていたのが竹内公輔だ。彼はこう明かす。「この一週間、千葉対策はすっごく時間をかけてやった。それを今日は発揮できたと思います」

ただ千葉も試合の後半にはアジャストを見せていた。14日の再戦を前にあらためて分析と対策を済ませるだろう。竹内もこう気を引き締める。「僕らがやっていたディフェンスの対策を相手もしてくる。相手の対策をさらに上回るようなディフェンスをしたい」

ともかく13日の初戦は栃木のメリハリの利いた千葉対策が功を奏した。東地区王者が今年10度目となる対戦をモノにして、セミファイナル進出まであと1勝としている。