島根スサノオマジックで4シーズンにわたって力をふるい、エースとしてチームを強豪に引き上げた安藤誓哉は、今オフ、新たな挑戦へと踏み切った。インタビュー前編では島根でプレーすることで得たものと、横浜ビー・コルセアーズへの移籍を決めた理由について語ってもらった。
精神的な強さが増した4年間
──オフはどのように過ごされましたか?
旅行に行ったり、アメリカに行ってワークアウトをしたり、みたいな感じですかね。
──アメリカでのワークアウトはオフの恒例行事になっているんですか?
そうですね。毎年と同じように向こうに滞在して過ごしていた、みたいな感じです。もう「ワークアウトをしに行っている」という感覚もだいぶなくなりましたね。普通に向こうに滞在しながら、みたいな。
──アメリカで生活しながらバスケをしている。
あ、そう。そうです。ニュアンス的に言ったらそんな感じです。
──昨シーズン、島根で得たものはどんなものでしたか?
ペイントに侵入して得点を取る方法は自分なりに考えました。特に昨シーズン、島根4年目は2ポイントの重要性を改めてもう一度考え直しました。3ポイントは期待値が高いシュートと言われていますが、やっぱりペイントに侵入してのシュートやミドルジャンパーの影響力って大きいんじゃないか、と自分なりにも考え直して試合をしていましたね。3ポイントを打つことは好きですし、ポール(・ヘナレヘッドコーチ)からもそれを求められていましたが「俺はこういうことにトライしていくよ」とコミュニケーションを取りながらプレーしていましたね。
──島根でプレーした4シーズンで「バスケットボール選手・安藤誓哉」が得たものはどんなものだと思いますか?
メインハンドラーとして多くのポゼッションを託してもらう回数・瞬間が増えて、選手として新たな責任感を持てた4年間だったかなと思います。精神的な強さが成長したと思います。
──アルバルク東京では「優秀なメンバーの1人」というような立ち位置でしたが、島根では「絶対的な存在」としてコートに立ちました。ファンの期待を背負うという点においてもマインドは変わりましたか?
松江は小さい街ですし、プロスポーツチームが少ないので、街中でファンの方に声をかけられることがけっこう多いんですよ。試合の次の日、定食屋さんで隣に座った人から「昨日お疲れ様でした」って言われたり。そういう熱狂的なファンの方々がいるチームに自分が入って、勝敗を任される選手になって、直接「優勝してください」という声をかけられて。だからすべてがポジティブだっというか。ファンの方たちと一緒に過ごしているという感じがありましたよね。
──退団の発表後、ファンからの嘆きの声も聞こえてきましたか?
自分で言うのも何ですけど、もちろんそういう声もあったとは思います。ただ僕の耳に届いたのはほとんどが「ありがとう」という言葉でした。これは他のインタビューでも言ったことになりますが、島根を去る時に一番感じましたね。「4年間本当に島根でプレーしてきてよかったな」って。こんなにたくさんの方に感謝される経験をしたことがなかったので、プレーしてる価値、自分の存在意義を改めて実感しました。
──安藤選手のキャリアにとって大切な4年間になりましたね。
いや、本当に。大切ですし、自分を変えられた4年間でした。バスケットボールキャリアだけでなく人生も変えられたっていう話になっちゃいますね。大げさに言うと。
「ここでもう一つ成長したい」
──それでは改めて、横浜BCに移籍することになった経緯をうかがいます。
「何かを変えたい」という気持ちが出てきたんです。ポールがもしかしたらチームを離れるかもしれないと聞いていたので、「もしかしたら自分が移籍するタイミングでもあるんじゃないか」みたいな。僕、本当にずっと島根にいると思ってたんですけど、こういうのっていつ来るか分からないじゃないですか。
──タイミングだったりきっかけであったり。
気持ちの変化もそう。それがたまたま訪れた中でビーコルと話をして、選手、ヘッドコーチ、スタイルがある程度噛み合ったというか、自分の中でぐっと納得できたというか。ここでもう一つ成長したいという思いになりました。
──横浜BCは「コレクティブ・バスケットボール」というスタイルを掲げています。人とボールがよく動いて、全員が連動するバスケだと認識しているのですが、島根で、ご自身が長くボールを持つオフェンスをしていた安藤選手にとって新しいスタイルになりそうですね。
まあそうですよね。オフボールの動きがどんどん出てくると思います。ディフェンスを見てどうオフボールの動きをするか、というところは自分が次のステップに行くために必要かなと思っています。
──まだ合流して日が浅いと思いますが、実際にプレーしてみていかがですか?
思ったよりかき回すようなバスケではないなとは思いました。でもまあ、オフボールの動きはリズムが大事ですし、これから徐々にですね。
──ラッシ・トゥオビヘッドコーチとはすでにコミュニケーションを取っていますか?
もちろん。ラッシはユーロバスケットに出場中なので、僕がチームに合流する前でしたけど。そのときは「ボールと人が動くバスケットボールに君のクリエイト力をうまく加えてほしい」というようなことを言われました。