今のシェングンは『ベビー・ヨキッチ』ではない

グループAの首位を決める全勝対決となったトルコvsセルビアは、周囲の期待を裏切らない好ゲームとなった。アルペラン・シェングンとニコラ・ヨキッチの対決も、周囲の高い要求を満たした。ヨキッチがローポストでシェングンを押し込んでフックシュートを沈めるとスタンドの一角からMVPコールが起こり、シェングンがヨキッチを外に引っ張り出して3ポイントシュートを決めれば、今度は別の一角からMVPコールが起きた。

ヨキッチは22得点9リバウンド4アシスト3スティール1ブロック、シェングンは28得点13リバウンド8アシストを記録。『ほぼトリプル・ダブル』を記録したシェングンがスタッツで上回り、そして勝利も手にした。

とはいえ、勝敗を左右したのは2人のマッチアップというより、彼らを取り巻く選手たちのパフォーマンスだった。セルビアはボグダン・ボグダノビッチが戦線離脱し、オフボールでチャンスを作り出す攻め手を欠いた。先発のアレクサ・アブラモビッチとヴァニャ・マリンコビッチ、ベンチから出たマルコ・グドゥリッチとガード陣がいずれも精彩を欠き、ヨキッチの負担が増すことになった。それでも終盤まで、わずかながらセルビアがリードする展開だったが、ラスト5分で13-4とトルコが抜け出す。この勝負どころでヨキッチがパフォーマンスを落としたのは、それまでの35分間の負担が大きかったからだろう。

一方でシェングンには、シェーン・ラーキンという頼れる相棒がいた。開幕から4試合で7.8得点、3.8アシストだったラーキンが、この試合で23得点9アシストと奮起。ジェディ・オスマンを筆頭に汗をかくことを厭わないハードワーカーが揃い、クラッチタイムにあえてシェングンを使わずにラーキンのドライブ&キックでシェフムス・ハゼルの3ポイントシュートに繋げるチームオフェンスも素晴らしかった。

残り1分、ニコラ・ヨビッチのシュートが外れたところをヨキッチが押し込んで90-89とセルビアがリードを奪い返すが、その前のトルコが完璧な連携を見せたのに対して、セルビアはボールを持つヨビッチがチームメートを巻き込むことができず、タフショットを打たされたのをヨキッチがフォローしており、効果的な攻めではなかった。

トルコはシェングンのフリースローで再びリードした後、グドゥリッチへのブリッツでボール奪取に成功。これが勝利を決定付けるプレーとなった。

シェーン・ラーキン「僕らの目標はメダル獲得だ」

シェングンと並んで勝利の立役者となったラーキンは「エキサイティングな試合だった。グループ分けが決まった時から、この試合が僕らにとって重要な一戦になると考えていた」と語る。

32歳のラーキンは39分18秒とフル回転。「もうプロ13シーズン目のベテランで、ユーロバスケットも2回目だ。前回でコンディション調整のやり方を学んだ。それに今は若手が頑張っているから、僕はチームが上手く回るようサポートして、あまり無理をしていなかった。でも、この試合とこの後の数試合は40分間プレーするつもりだ。前回はケガで途中離脱となったから、その失敗を繰り返さないよう万全の準備をしてきた。この先も今日のようなパフォーマンスを見せたいと思っている」

そしてラーキンは、シェングンとヨキッチを比較して、もはや『ベビー・ヨキッチ』ではないことを強調した。「プレースタイルに似た部分はあるから、ルーキーイヤーや2年目のアルペランが『ベビー・ヨキッチ』と呼ばれるのは仕方がない。だけど今大会で、彼はすでに次のレベルに到達したことを示している。NBAのオールスターにもなったし、これからもっと成長していく。『ベビー・ヨキッチ』と名付けられた頃からはるかに優れた選手になった今のアルペランに、そのニックネームは適切ではないと思う」

シェングンだけでなく、トルコ代表にとっても自信になり、評価を高める1勝となったが、ラーキンは「でも結局のところ、ただの1勝でしかない」と気を引き締める。「僕らはグループリーグで勝つためにここに来たんじゃない。今日、レベルの高い試合で必死にプレーして、勝てたことに興奮しているけど、僕らの目標はメダル獲得だ。今夜は勝利を楽しむけど、明日の朝に目を覚ました時には次のステップに向けて集中していたい」