文・写真=鈴木栄一

出だしを制した大阪、攻守で上回り20点のリードを奪う

5月6日、琉球ゴールデンキングスがホームで大阪エヴェッサと対戦。最大で20点のリードを許す劣勢から追い付き、延長戦の末に88-83と劇的な勝利を挙げている。これで両チームは28勝31敗で並び、7日の18時ティップオフの最終戦で、勝った方がチャンピオンシップ最後の切符をつかむことになった。

この試合の前まで今シーズンの両チームの対戦は、大阪が5勝1敗と大きく勝ち越している。直近では4月22日、23日に激突し、22日は琉球、23日は大阪がそれぞれ勝利。2試合とも勝ったチームが第1クォーターに2桁以上の大差をつけ、そのまま逃げ切っていた。

それだけに試合の入りに注目が集まる中、第1クォーターは橋本拓哉がゴール下への鋭いアタックから9得点、またエグゼビア・ギブソンも8得点とインサイドで効率良く得点し、22-13と大阪が先行する。第2クォーターに入ると琉球も田代直希、津山尚大の奮闘で追い上げを図るが、大阪は残り1秒でジョシュ・ハレルソンが得点し、40-32とリードを維持して前半を終えた。

第3クォーターに入っても試合は大阪のペースで進む。堅いディフェンスから得意とする素早い展開に持ち込むと、橋本拓哉、今野翔太がインサイドへと切れ込み得点を量産。このクォーター、残り2分半には63-43と大きく突き放す。

追い詰められて力を発揮した琉球、怒涛の反撃で延長へ

これで勝負あったかと思われたが、琉球がここから猛反撃を開始する。「前半もそうですが、第3クォーター途中まで慌てすぎてオフェンスが単発、単調になっていました。そして良いオフェンスで終われない時は全部、相手に走られてしまう悪循環に陥っていたので、一回、我慢強く攻めることを指示しました。そして、金城(茂之)がプレーでチームに冷静さを思い出されてくれました。これでシュートこそ入らなかったですが、第4クォーターにつながったと思います」

伊佐勉ヘッドコーチが振り返るように、第3クォーターを琉球は48-64と20点差からわずかだか点差を縮めて終える。そして第4クォーター開始2分で金城、渡辺竜之佑の連続得点で10点差に追い上げる。

大阪も盛り返し、残り約3分半で74-64とリードを維持するが、ここから琉球は岸本隆一、アンソニー・マクヘンリーが連続3ポイントシュートを成功させる。さらに残り約1分半、レイショーン・テリーがシュートファウルを受けながら3ポイントシュートを決めるバスケット・カウント。続くフリースローも決める4ポイントプレーで、琉球は一気に追い付き、試合は延長戦に突入する。

「あの状況から延長に行けたことで僕らに追い風が吹く。オフェンスはうまく流れていくだろうと思っていたので、とにかくディフェンスとリバウンドを意識していました」と岸本が振り返るように、勢いに乗った琉球が終始リードを奪い、そのまま勝利を収めた。

伊佐ヘッドコーチは、「あれだけ離されても選手が一つのルーズボールをあきらめずに追いかけ、1点ずつ取って一つずつ抑えての結果となりました。負ければシーズンが終わるという状況で、選手たちのメンタルがこれほど強いものかと試合中も思いました」と、選手たちの強靭な精神力を称える。

そしてこの大逆転劇は、リーグ随一の熱狂的な応援でチームを支えるファンの声援があってこそと強調した。「ホームゲームで良かったと思います。ウチのファンはバスケットをすごく分かっていて、キングスに流れが来た時の応援はすさまじいものがあります。心強いチームの一員だと思います」

「日本人で一番リバウンドが強い竜之佑に賭けてみようと」

逆転勝利の立役者となったのが渡辺竜之佑だ。過去2試合連続で出場時間が4分以下だったのが、第4クォーター、延長とフル出場。11得点2スティールと勝利の立役者となった。伊佐ヘッドコーチは「リバウンドの部分で劣勢になっていたので、日本人で一番リバウンドが強い竜之佑に賭けてみようと。彼は大きなミスをすることなく、とても良い仕事をしてくれたと思います」と、この大一番で渡辺を抜擢した理由を語っている。

一方、痛恨の大逆転負けを喫した大阪の桶谷大ヘッドコーチは「第4クォーターに気が抜けたプレーをしてしまった。しょーもないタフショットを打ち、しょーもないターンオーバーをしてしまった。それだけです」と、勝利まで残り10分で自滅してしまった自軍のふがいさなさに怒りを露わにしていた。

そして「明日やらなかったら、自分たちの生活がないと思わないといけない。第1から第3クォーターまでやっていたことを第4クォーターも続けるだけです」と、最終戦を見据えた。

7日の試合は、リーグ唯一の夕方開催と文字通りレギュラーシーズンを締めくくる最後のゲームで、勝者がチャンピオンシップ出場、敗者はシーズン終了となる大一番となる。

「この状況をどれだけ楽しめるかが一つのポイントだと思います。何しろホームなので、絶対にこちらが有利。それを追い風に変えていきたい」と岸本が語るように、ホームの圧倒的な声援をパワーに琉球が連勝するか、それとも大阪が立て直して雪辱を果たすか。bjリーグ時代から続く因縁のライバル対決は、果たしてどんな結末を迎えるのだろうか。