広瀬健太

島根スサノオマジックは今オフ、過去4シーズンのうち3度のチャンピオンシップ出場をもたらした指揮官のポール・ヘナレ、エースの安藤誓哉がそろってチームを去るなど新たなサイクルに入った。さらなる進化のため今シーズンはどんな意図を持ってチームを編成したのか、ゼネラルマネージャーの広瀬健太に聞いた。

後半失速の要因の一つはスタイルへの固執

──まずは昨シーズンの振り返りをお願いします。

大黒柱だったペリン・ビュフォードがいなくなり、帰化枠がニカ ウィリアムズからエヴァンス ルークに変わりました。また、日本人選手では納見悠仁、横地聖真や介川アンソニー翔など若手が入ってくれましたが、安藤や津山尚大、ヘナレヘッドコーチとチームの軸を担うメンバーは残ったのでチームの方向性はそれほど変わらない形でシーズンを迎えました。これまで積み上げてきたものをベースに少し方向転換し、途中まではすごく良かったと思います。ただ、最後はケガ人が出たりして失速してしまったのは残念でした。

──終盤に失速した要因として、何が大きかったですか。

言える範囲で言うと、主力選手のプレータイムが長くなって疲れが溜まってきたかなと。また、相手のスカウティングに対してアジャストしきれなかった。「うちはこのスタイルでやる」というところに少し固執し過ぎたところはあったと思います。

──セルビア出身のペータル・ボジッチコーチを新指揮官に選んだ理由を教えてください。

ボジッチコーチは昨シーズンまでイギリスのロンドン・ライオンズでヘッドコーチを務め、その前にはGリーグのオースティン・スパーズでコーチをやっています。選手としてもユーロリーグの名門、パルチザン・ベオグラードで長くプレーしていて、アメリカ、ヨーロッパのバスケの両方を知っている点でユニークだと思います。

人柄としてもとても落ち着いていて、日本人選手にとって親しみやすいと思います。これは語弊があるかもしれないですが、旧ユーゴスラビアのコーチたちは非常にアグレッシブな方が多いです。それは素晴らしいことですし尊敬もしていますが、日本の若い選手はそこに萎縮してしまうところもあると思うので。そして、結果を出す場所であるプロクラブで「育成」という言葉を出すのはちょっと嫌ですが、クラブとして選手、コーチと一緒に成長していける組織でありたい。その考えにボジッチコーチがすごく共感してくれたことが大きいです。

ニック・ケイ

「ケイは一度くらいはベストファイブに選ばれても良い」

──これまで4年間、エースを務めていた安藤選手が移籍した一方、リーグ屈指のハンドラーである岡田侑大選手が加入します。やはり彼にはエースとして大きな期待を寄せていますか。

岡田にだけ中心としての活躍を期待することはないです。もちろん岡田はリーグを代表するオフェンススキルを持っていて、彼とスクリーナー役のビッグマンを中心に攻めていけばそれなりに得点は取れると思います。ただ、それでは面白くないですし、試合に勝てるわけでもありません。彼の加入がオフェンスの大きな助けになるのは間違いないですが、年齢的にも若手から中堅となり一番脂が乗っている時期に、よりリーダーシップを発揮してクラブを引っ張っていく存在になってもらいたいです。

──日本人選手の主力が変わった一方、外国籍選手は3人ともに残留しました。特に大黒柱であるニック・ケイ選手の残留は大きいと思います。

インサイドをしっかり構築しないとこのリーグでは戦えない、というのが僕の考え方の1つです。その中で残留した3人(ケイ、コティ・クラーク、ジェームズ・マイケル・マカドゥ)はみな日本でのプレー経験が豊富です。「高さ」というよりは「経験値」のアドバンテージを重視したところはあります。

ケイについては、いちバスケットボールファンとして見たら「一度くらいはベストファイブに選ばれても良い」と思うくらい素晴らしい選手です。縁の下の力持ちで、島根がこの4年間ずっと競争力のあるチームでいられた立役者だと思っているので、残ってくれてよかったです。そして編成担当の立場でいうと、特に日本人選手に「彼と一緒にやりたい」と話す選手が多くて、そこでも助かっています。

広瀬健太

「競争の大切さについては共通認識を持てています」

──島根は過去4シーズンで3度チャンピオンシップ出場と、リーグ上位の成績を残すチームとなりました。その中で今シーズン、さらなる上を目指すために乗り越えないといけない大きな壁は何でしょうか。

チーム内競争力のところで足りない部分があったと思います。全員がプレータイムを勝ち取るため常に競争している雰囲気にしていきたいです。選手の起用法を固定することで生まれるプラス面もありますが、いつ自分の出番が減るのかわからないからこそ生まれるモノもあります。少しでも気の抜いたプレーをしたら自分の立場が危うくなるような環境にすることが、選手個人、クラブの成長の繋がると信じています。出番を勝ち取るには努力をしないといけないですし、全力を尽くしてもそれが叶わないこともあります。それでも、特に若い選手が「俺はこれだけやってもダメなのか」と思うのではなく、挑戦を続けることを後押しできる環境にしていきたいです。

ヘッドコーチは今回が初めての日本で、選手をフラットな視線で見ることができます。また、彼はプレータイムの約束をしないフェアな人物です。「君をスタートで使う」というようなことは岡田選手に対しても言っていないです。チーム内競争の大切さについてはヘッドコーチと共通認識を持てています。

──広瀬さんは現役時代、パナソニック、サンロッカーズ渋谷で主力として活躍し、タイトルも獲得しています。その経験も踏まえ、強いチームの共通点として感じるところはありますか。

バスケットのスタイルなどは時代によって変わっていくので、そこは気にしていません。クラブがしっかりとした考え、信念を持ってやっている。当たり前のことを当たり前にできるクラブが強い。そこはこれからリーグがどれだけ変化しても変わらないと思います。