キーガン・マレー

オフェンス偏重のチームでハードワークを一手に担う

シーズン途中にヘッドコーチを交代させ、さらにエースのディアロン・フォックスを放出したキングスですが、今オフはデニス・シュルーダーを獲得し、さらにラッセル・ウエストブルックやジョナサン・クミンガの獲得に動いているとされています。再建に片足を踏み込んだ状況でも「意地でも再建には進まない」という意思を示しています。

そのキングスでは、2022年のNBAドラフト4位で指名したキーガン・マレーとの契約更新が進んでいません。オールラウンドな能力に加えて、オフボールムーブにポジショニングの良さ、そして高いシュート能力で、マレーはルーキーシーズンから主力として活躍し、プレーオフ進出の原動力にもなりました。特にオフボールの質はポイントセンターであるドマンタス・サボニスと相性が良く、キングスのアップテンポなバスケに適した存在です。

しかし、2年目になると3ポイントシュート成功率が落ち、オフェンスでのインパクトが薄れていきます。トゥルーシューティングはルーキーシーズンには59.7%と優秀な数字を記録していたのに、56.9%、55.3%と年々落としています。

この成績で『チームの中心』に据えるのは無理かもしれませんが、若手有望株であるマレーにチーム事情の中で損な役回りを押し付け、『チームの中心』に据えようとしないキングスにも問題があります。

マレーは2年目からエースキラーの役割を与えられ、ディフェンスやリバウンドでの貢献度を高めていきました。実際、マレーがコートにいるとキングスのディフェンスは明らかに良くなります。その反面、ディフェンスでのハードワークはオフェンス精度を落とすことになりました。新シーズンもデマー・デローザン、ザック・ラビーン、デニス・シュルーダーとオンボールのハンドラーばかりが並び、マレーはディフェンスの仕事に忙殺されそうです。

またオンボール系の選手の増加はサボニスを中心としたオフェンスの減少を意味するため、マレーの持ち味はさらに出しづらくなります。質の高いオフボールムーブから生み出されるオフェンスは、昨シーズンのペイサーズが示したものでもあり、トップクラスのスコアラーがいないキングスが目指すべき方向のはずですが、現実はその逆へと進んでいます。

トレードやフリーエージェントでの補強とは裏腹に、2024年ドラフトではディフェンスが特徴のデビン・カーターを指名し、今年のドラフトではマレーのように万能でオフボールの質に期待できるニケ・クリフォードを指名しました。キーオン・エリスを見いだしたことも含め、マレーの仕事を分散したら面白そうな若手を連れてくるのもキングスの特徴ですが、実際はオフェンス偏重のベテランたちがコートに立ち、マレーはディフェンスの仕事を一手に引き受ける形が続きそうです。

再建の意思を固めることが最善に見える中でも、キングスは勝利をあきらめない動きを見せています。この中途半端な状況が続き、マレーとの契約交渉が停滞するのであれば、さらなる混乱は免れません。