ホーバスヘッドコーチ「フィジカルで負けて足が止まってしまいました」
男子バスケットボール日本代表は8月13日(日本時間)、『FIBAアジアカップ2025』ベスト8決定戦でレバノンに73-97と大敗を喫した。
日本は吉井裕鷹の力強いドライブで先手を取るが、不用意なターンオーバーから崩れてすぐに逆転される。相手のファウルトラブルにも助けられなんとか食らいついていったが、第2クォーターに入ってもレバノンの流れは変わらず。富樫勇樹の冷静なゲームメイクで一時持ち直したものの終盤に再びミスから失速し、12点のビハインドでハーフタイムを迎える。
日本は前半、ターンオーバーから18失点、さらにファストブレイクから16失点と、自分たちのミスから相手にイージーシュートを献上した。後半に入っても前半の課題をまったく修正できず失点を重ね、第3クォーター開始2分で20点の大量リードを奪われると、そのまま盛り返すことができず敗れた。
トム・ホーバスヘッドコーチは、「相手のディフェンスプレッシャーに負けました。それで上手にペイントアタックできなくなり、リズムがおかしくなりました。フィジカルで負けて足が止まってしまいました」と敗因を語る。
これで日本は前回大会のベスト8にも届かず、早々に大会終了となった。河村勇輝、渡邊雄太、比江島慎とホーバス体制をこれまで支えてきた中心選手が不在だったとはいえ、他国もフルメンバーで臨んでいるわけではない。グループフェーズで敗れたイランは若返りの途中。レバノンも絶対的な柱のワエル・アラクジを欠いていた。
ホーバスヘッドコーチは「経験ある選手がいなくなって若い選手を使った。バトンタッチの問題もあります。それはプロセスです」と続ける。確かに、これまで代表で出番の少なかったメンバーが今大会、主力として経験を積めたことはプラスだ。
富樫「結果がすべてかなと思います」
ただ、グループフェーズで帰化選手不在かつ複数の主力を故障で欠いた韓国に大敗したレバノン相手の惨敗を、「今後に繋がる」とポジティブな形で締めくくるのはあまりに楽観的だ。
幸いにもこの現状にしっかりとした危機感を持っている選手はいる。16得点5リバウンド3アシストを挙げ、フィジカルで負けなかった数少ない選手である吉井は、試合後の取材で「何もしゃべることはないです」と言い切った。
吉井は決して饒舌なタイプではないが、こちらの質問には真摯に対応してくれる選手だ。そんな彼が「こんな試合をして、何が悪かったとか、どうこう言うことはないです」と続け、自身の活躍についても「こんな負け方をしたら関係ないです。もっと日本が強くなるためにはイチから考え直さないといけないです」と締めくくった。
また、9得点4アシストを挙げた富樫は「ワールドカップ2023でアジア1位になってパリオリンピックに出場しましたけど、まだまだという感覚です」と振り返る。
今回、富樫が直前合流と調整が難しい中でもアジアカップ出場を決めたのは、結果に対する次のような強いこだわりがあったからだ。「実際のところ、このアジアカップでまったくと言っていいほど結果を残せていない状態が何年も続いていました。今回は少しでも良い結果で終わりたいところでしたが、うまくいかなかったです」
だからこそ、富樫は「結果がすべてかなと思います」と現実を真摯に受け止める。吉井や富樫と同じ思いを、代表チーム全体として抱いていくことに期待したい。
負け方と同じくらい残念だったのは、日本代表が公式会見に姿を見せなかったことだ。試合後のミーティングが長引いたことで、指定された時間内にヘッドコーチと選手1名が出席できなかったと見られる。最初からキャンセルする意図がなかったとはいえ、公式会見に出るのは義務であり、会見後にチームミーティングをすれば良いだけだ。いろいろな面で、後味の悪さが残るアジアカップとなってしまった。