「最高の選手を中心に最高のチームを作り上げるべき」
かつてバックスやウォリアーズ、マーベリックスのヘッドコーチを務めたドン・ネルソンが、全米バスケットボールコーチ協会からチャック・デイリー生涯功労者賞を贈られた。
マブスでのネルソンはヘッドコーチ兼GMを務め、マブス球団社長を務めた息子のドニー・ネルソンとの二人三脚でチーム編成に携わり、知名度の低かったダーク・ノビツキーを指名している。ウォリアーズのヘッドコーチを務めていた時期には、当時評価の低かったステフィン・カリーの指名を推した。ネルソンが2010年に引退した後も、息子ドニーはマブスでの仕事を続け、2018年のNBAドラフトではルカ・ドンチッチとジェイレン・ブランソンを獲得する最高の成果を出した。
ドンは2005年にマブスを離れ、この時にオーナーグループとの関係は悪くなったが、息子ドニーが働いていたことでマブスをずっと応援する立場だった。マブスが優勝を成し遂げた2011年にチームを指揮していたリック・カーライルは、ドンを師と仰いでいる。
カーライルは、その直後にNBAファイナル第2戦が控えているにもかかわらず全米バスケットボールコーチ協会の役員として生涯功労者賞の会見に出席し、その功績を称えた。
「ネリー(ネルソン)のチームとの対戦は不気味だった。何を仕掛けてくるか分からない。ウチのビッグマンたちがスピードで振り回され、3ポイントシュートを打たれまくるんじゃないか。彼はいつも新しい何かを仕掛けてきた。選手たちに瞬時の判断を求めてバスケIQを引き上げ、それが今のバスケを形作った。それは驚くべき先見の明だった。間違いなく、今のバスケに多大な影響を与えたコーチだ」
そしてカーライルは「インターネットで調べたらNBA記録となる79回もの退席処分を受けていて、それも私が彼に畏敬の念を抱く理由だ」と続けて会場を爆笑させ、「2025年のチャック・デイリー生涯功労者賞を偉大なるドン・ネルソンに贈呈できることを光栄に思う」と続けた。
85歳のネルソンは、足腰が少し弱くなったようだが、いまだ血気盛んだった。受賞の喜びと感謝を語った後で、彼はドンチッチを放出した古巣マブスを散々に批判した。
「私は今日、ルカのシューズ、ナイキから発売されたばかりのバッシュを履いている。これはマブスのトレードに対する抗議だ」と彼は言う。
彼はレッド・アワーバックから学んだという哲学をこう語った。「彼の哲学は、偉大な選手は決して手放さないことだ。キャリアを通して放出することなく、引退後はその背番号を掲げて称え続ける。私の哲学では、最高の選手がいればトレードに出さず、最高の選手を中心に最高のチームを作り上げるべきなんだ」
マブス前オーナーのマーク・キューバンが、スティーブ・ナッシュと再契約すべきというネルソンの意見を聞き入れずに放出したことで、彼とマブスの関係性は壊れた。それから多くの月日が流れたが、息子ドニーが離れた後のマブスでドンチッチが放出されたことに彼は大きな憤りを感じている。
引退後にはハワイに移住して悠々自適の余生を過ごす彼は、この式典のために数年ぶりにアメリカ本土に戻った。久々の表舞台で、批判をしなければ気が済まなかったようだ。