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これで集中力と闘志を高めろというのが無理な話

2年ぶりのプレーオフ進出を果たしたバックスだが、2001年を最後に1回戦を突破した経験はない。強豪ラプターズを撃破するのは並大抵のことではないが、16年ぶりの鬼門突破に向け、『利用できる武器は何でも使う』姿勢を本拠地BMOハリス・ブラッドリー・センターで示した。

『事件』はウォームアップ時に起こった。試合前のアップは、選手にとって身体を温めるとともに、徐々に集中を高めていく重要なルーティーンの一つだ。しかし、バックスの音響担当はホームチームの勝利のため、NBAプレーオフのアリーナには全く相応しくないコミカルな曲をかけた。

その模様を収めた動画を『Bleacher Report』がTwiterに投稿している。

ただコミカルな音楽を流しただけではない。この曲は1990年代にアメリカで放送された子供向け番組『バーニー&フレンズ』のテーマ曲で、同番組のメインキャラクターは、ピンクのティラノサウルスのバーニーだ。ラプターズのチーム名になっている『Raptor』とは、映画『ジュラシック・パーク』にも登場した恐竜の一種『ヴェロキラプトル』が劇中で省略して『ラプトル』と呼ばれていたところに由来すると言われている。

本来なら緊迫感に満ちた雰囲気の下で行なわれるべきアップのはずが、メルヘンな音楽によって精神面の準備はブチ壊しに。時代を考えれば、ラプターズの選手たちは幼かった頃に『バーニー&フレンズ』を見て育ったはずで、これで集中力と闘志を高めろというのが無理な話。

バスケットボールで恐竜並みの強さを発揮するはずのラプターズは、子供たちと歌って踊るキャラクターになってしまった。結果、第1クォーターから12-32でバックスに圧倒され、77-104で完敗を喫した。

これぞ『アメリカン・プロスポーツ』。そして、現代のプロスポーツにおいてBGMの重要性を改めて感じさせられる瞬間だった。

結果的に大成功に終わった今回の作戦、音響スタッフは大いに気を良くしているに違いない。22日に同会場で行なわれる第4戦ではどんな妨害工作を仕掛けてくるのか、そしてラプターズがホームに戻って来る第5戦の試合前に何が起きるのかに注目したい。