ファジーカスを軸にした東芝神奈川のオフェンスが機能
NBLプレーオフ準決勝2日目、リンク栃木と東芝神奈川の一戦。前日に76-55と大勝したリンク栃木に対し、後がない東芝神奈川は立ち上がりから気迫のこもったディフェンスを見せる。それでもリンク栃木は、遠藤祐亮の連続3ポイントシュート、東芝神奈川がタイムアウトで一呼吸置いた直後にもスティールからの見事な速攻で田臥勇太がレイアップを決めるなど8-0のランで11-4とリードを奪った。
この試合もレギュラーシーズン2位と上位であるリンク栃木のペースで進むだろう、と思わせる立ち上がりだった。だが、ここから東芝神奈川のエース、ニック・ファジーカスに立て続けに得点を奪われ、勢いに乗せてしまったことで、試合展開は予想とは異なる方向に動き始める。
第1ピリオドは20-16とリードして終えたリンク栃木だが、第2ピリオドで16-21とされ逆転を許す。得点とリバウンドを記録するたびに勢いを増すファジーカスにインサイドで君臨され、試合の主導権を譲り渡したのがその要因だ。リンク栃木は大黒柱のライアン・ロシターの動きが重く、シューターの古川孝敏もリズムに乗れない。
後半に入ってもしばらくは膠着状態が続いたが、時間がたつにつれ東芝神奈川がリードを広げ始める。ファジーカスがコンスタントに得点を重ねたことに加え、辻直人や篠山竜青のガード陣にも当たりが出始めた。
第3ピリオド残り5分23秒、辻の3ポイントシュートで44-53。ビハインドがこの日最大の9点に開いたところで、リンク栃木はタイムアウトを要求する。東芝神奈川がタフショットを次々と決める流れを一度切って、仕切り直しを図ったのだが、残り2分のところでロシターが故障し、担架で運び出されるアクシデントに見舞われてしまう。
大黒柱の負傷交代でチームに動揺が生まれ、東芝神奈川が着実に得点を伸ばす一方で、リンク栃木は追い付こうと無理なシュートを狙っては外す悪循環に陥った。それでも、ファジーカスがやや疲れを見せ始めたのに対し、リンク栃木はアンドリュー・ネイミックがロシターに代わって奮闘する。
最終ピリオド、最初の5分は互いに2点を奪っただけの膠着状態に。気を引き締め直したリンク栃木は完璧なディフェンスを見せるが、追い上げのためにリスク覚悟で放つ3ポイントシュートが決まず、リズムに乗れない。この状況を打ち破ったのが田臥だ。ファストブレイクからジャンプシュートを決めて58-62。ここから試合が動き出し、残り3分で古川が3ポイントシュートを決めて63-63とついに追い付く。
だが、次のプレーで栗原貴宏にお返しの3ポイントシュート決められ、さらには辻にも右の角度のないところから3ポイントシュートを決められ、63-69と突き放されて勝負あり。最後にはファジーカスにまでトドメの3ポイントシュートを決められた。最終スコア69-76。リンク栃木が敗れた。
ロシター欠場で苦戦が見込まれるリンク栃木
試合後、北卓也ヘッドコーチは勝因について「オフェンス」と断言した。「昨日は55点しか取れなかった。気持ちが入りすぎて、頑張りすぎて攻め急いでいた。今日はフローバランスやスペースを確認して、行くところと行かないところをコントロールしていこうという狙いだった。インサイドとアウトサイドの両方で良いシュートが打てた」
リンク栃木のヘッドコーチ、トーマス・ウィスマンは試合後、「激しさを持った良いバスケだった」とまずは東芝神奈川のプレーを称えた。24得点20リバウンドと大活躍したファジーカスについては「素晴らしい動きを見せて、こちらは厳しかった」とコメント。「東芝がビッグラインナップをやってきた時にはゾーンで対応して、試合終盤までは効いていたが、最後の局面で3ポイントを決められてしまった」と敗戦を振り返った。
古川はこう語る。「厳しい試合になることは予想していましたが、ディフェンスで我慢しなければいけない局面で我慢できませんでした。終盤に追い付いたのも、そこまで我慢のディフェンスで、リバウンドも取っていたからできたことです。追い付いた後こそ我慢を続ける必要があったのですが、守り切れなかった」
これで1勝1敗のタイ。東芝神奈川はエースのファジーカスが勢いに乗った。対するリンク栃木はロシターがケガで、第3戦には出場できない公算が高い。ファイナル進出に向けて苦しい立場に追い込まれたが、田臥は最後にこう語った。「誰がどういう状況になってもチーム全員でやるだけです。ファイナルに行くためには勝つしかないので、気持ちを大切にしてやりたい。全員で勝利を勝ち取ります」
準決勝のもう一方は、レギュラーシーズン1位のトヨタ東京が連敗して決着する波乱となった。アイシン三河が待つファイナルへの切符を懸けたリンク栃木と東芝神奈川の最終戦は、23日の19時15分ティップオフとなる。
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