吉井裕鷹

3ポイントシュート3本成功の17得点で勝利の立役者に

5月17日、三遠ネオフェニックスがチャンピオンシップセミファイナルの第1戦で琉球ゴールデンキングスと対戦。ヤンテ・メイテンと大浦颯太が負傷退場のピンチをチーム一丸で乗り越え、87-85で激闘を制した。

立ち上がりから三遠は琉球のボールマンに激しいプレッシャーを仕掛け、ハーフコートオフェンスをスムーズな形で展開させない。さらにデイビッド・ヌワバが持ち前の強烈なドライブに加え、外角シュートを効果的に沈めることで主導権を握る。しかし、ルーズボールでの競り合いで劣勢となるなど、琉球のフィジカルに苦しみ前半は互角で終える。

後半の出だしに試合は大きく動く。三遠はヌワバのバスケット・カウント、さらに吉井裕鷹の3ポイントシュートと内と外からバランス良く得点する19-8のランで、一気にリードを広げる。第4クォーターに入るとメイテンと大浦の離脱によるプレータイムの偏りの影響もあってプレー強度を保つことができず、琉球にセカンドチャンスを許すなど反撃され、残り3分を切って追い付かれる。それでも、ヌワバと吉井がクラッチシュートを沈め、粘る琉球を振り切った。

この試合、ヌワバは23得点4アシストを記録。特に過去5試合で計7本中1本成功だった3ポイントシュートを9本中4本成功と、琉球にとって想定外となる大当たりだった。また、吉井も3ポイントシュート4本中3本成功を含む17得点の大活躍を見せた。

吉井は、この接戦を勝ち切れた要因を「タフに戦い続けた結果、僅差でしたが勝つことができました。気を抜いたディフェンスを最後までしなかった。相手に快適にプレーさせないディフェンスを続けたこと」と語った。

吉井裕鷹

「しっかり打ち切れたことを褒めたいです」

吉井は前半こそ3得点に終わったが、第3クォーターに11得点を挙げビッグランを生み出すきっかけを作った。さらに残り1分半にリードを4点に広げる一撃と、ここ一番の勝負強さを見せた。

フィールドゴールアテンプト自体が0本だった前半からは対照的な内容の後半となったが、本人にとっては同じメンタルで、前半が消極的だったから後半は積極性に、という意識は全くなかったと明かす。

「後半は打つチャンスがあったから打った、前半はそういう状況がなかっただけです。前半もチャンスがあれば打っていました」

このように吉井が語るのは、大野篤史ヘッドコーチの教えを肝に銘じているからだ。「大野さんは日頃から我慢をしてバスケを続けることが大事だと言っています。良い状況が来るまで適当なシュートやパスはしない。それをより徹底しないといけないのがチャンピオンシップです。一つのポゼッションで適当なプレーをするだけでひっくり返されることもある。今日も第3クォーター終了時に10点開いていたのが、じりじりと詰められてしまいました。もっと丁寧に、ひとつ一つ積み重ねていく必要があったと思います」

また、吉井は「シュートは水ものなので」と語り、シュートに至るまでの過程を意識している。「僕はシューターアクションで決め切るというより、回ってきてパスからシュートを打つだけです。それが案外大事だったりします。入らなくても良い流れで打てていればチームとして問題ない、という考え方です。今回、良い場面でシュートを決め切れたことはうれしいですが、しっかり打ち切れたことを褒めたいです」

吉井は闘志満点の熱いプレーを見せる一方、あまり感情を表に出さないタイプだが、この日の彼はホームの観客に声援を煽る仕草も見せた。そこには次の気持ちがある。「レギュラーシーズンを必死に戦い抜いて勝ち取ったホームコートアドバンテージを生かすのは大事なこと。僕たちの力だけでは勝てないですし、全部があいまって良い試合ができると思っています」

三遠にとっては大きな意味を持つ先勝だが、明日の第2戦でメイデンと大浦が出場できるのかは不透明だ。吉井が大切にする選手、スタッフに加え、ファンの力を集結させたホームの利をフル活用して戦うことが重要となる。