トム・ホーバス

「ディフェンスはすべてに繋がっている」

女子日本代表は5月31日、6月3日に行われる国際強化試合、ベルギー戦に臨むメンバーを26名から18名に絞り、第3次強化合宿を行っている。

今年度から男子代表と同じプール制を用いるため、今回外れたメンバーも今後の大会へのエントリーは可能だが、ベルギーとの2試合に向けては原則この18人に絞られ、ここから選考が続く。ヘッドコーチのトム・ホーバスも「ケガ人が多いので、まだ分からない」と話し、サバイバルレースの結末を予想できずにいる。それでも期待するのは若手の台頭だ。「若い選手たちにプレーをさせたい。今の天井の高さがどのくらいかを見極めたい」とも話し、チームの底上げを狙っている。

指揮官が特に力を注ぐのはディフェンスだ。どの選手に聞いても「トムさんは本当に細かい」と口を揃えるように、たびたび時間を止めて、ポジショニングや手の位置など、細かい部分まで指導をする。特に20歳の梅沢カディシャ樹奈には繰り返し、マンツーマンで指導していた。

「ビッグマンの足の角度や身体の使い方を教えるには時間がかかります。髙田(真希)はこれまでの経験があるから自然にやっています。若いビッグマンはまだ分かっていない。『ぶつかってスペーシングを与えず、距離を詰めて、手を出せ』とね」

またこうしたディフェンスの極意は、トムヘッドコーチが現役時代に自ら感じたものを踏襲しているという。「現役のころはローポストの仕事を多くやっていた。私は細かったから、身体を当てる角度とか速さ、(ボールを叩く)アクティブハンドが必要だったんだ」

そして、このようにディフェンスの重要さを訴えた。「このレベルが当たり前と思っていたら良くない。ディフェンスができなかったら、ファストブレイクも出せない。良いディフェンスをしてターンオーバーを誘って、ミスショットからリバウンドを取ってファストブレイクが生まれる。ディフェンスはすべてに繋がっているから、ディフェンスをやらないと他ができない」

ディフェンス練習に力を注いだ結果、現在は「オフェンスがディフェンスに負けている」と、ゲーム形式の練習では常にロースコアゲームの様相を呈した。

トム・ホーバス

体格で劣ろうが「気持ちだけでは絶対に負けない」

女子日本代表の練習メニューは、トムヘッドコーチが考案したもの。その内容はボックスアウトやポストにボールを入れさせないようにする守り方など、実に基礎的なものが多い。だが、こうした基礎練習を、激しさと精度を極限まで追求しながら身体に染み込ませることで、現在の強い女子日本代表のバスケットが作られていく。

「ビッグマンのローポストのディフェンス練習とか、すごく難しいし、キツいですよ(笑)。でも身長で負けているから、細かいことが上手にできなかったらダメですし、気持ちで負けたら無理です。だから気持ちだけでは絶対に負けない」

またホーバスヘッドコーチは、「たまにBリーグを見るけど、ボックスアウトをしていない選手がいっぱいいる」と、プロ選手でさえも基礎を疎かにしてしまう現状に警鐘を鳴らす。女子日本代表がそうやっているように、日々の練習から激しさと精度を徹底しなければ、こうした隙が生まれる。

今回の26名の選考はサイズアップも目的としている。実際に「もしスキルがフィフティーフィフティーだったら高いほうを選びます。私はスイッチディフェンスをよく使うので、もし2番の選手が小さかったら、1番も小さいので、スイッチができなくなる」と、戦術面でディスアドバンテージになることを避けている。

トム・ホーバス

「40分間の中だったら、どこに対してもチャンスはある」

女子日本代表の最終目標は2020年の東京オリンピックで金メダルを獲得することだ。現在日本のFIBAランキングは10位だが、こうした地道な練習を続け、チーム内競争が激化していけば、必ず頂点を目指せると指揮官は自信をのぞかせる。

「大きいオーストラリアにも2年前に勝ったし、去年アメリカと試合した時は第3クォーターまで勝ってました。世界2位のスペインとも4試合やって、1点差、2点差くらいで負けた。金メダルの自信は本当にあります。40分間の中だったら、どこに対してもチャンスはありますよ」

大きな目標へと動き始めている女子日本代表。まずは今月末のベルギー戦での高いパフォーマンスを見せてほしい。