アイシン三河の長谷川智也が出色のパフォーマンス
NBLプレーオフ準決勝が今日からスタート。代々木競技場第二体育館では、レギュラーシーズン首位のトヨタ東京が同4位のアイシン三河を迎えた。奇しくも、昨シーズンのファイナルの顔合わせが再現されたことになった。
試合開始から1分で3度のオフェンスリバウンドを取るなどインサイドで強さを発揮するトヨタ東京に対し、アイシン三河は橋本竜馬や金丸晃輔の3ポイントシュートなど外からの攻めで対抗。この構図をキープしたまま試合は進行していく。
前半を終え、トヨタ東京が30-38と8点のビハインドを背負う。素早い切り替えを徹底する相手ディフェンスにより速攻が機能せず、エースのジェフ・ギブスもゴールから遠いエリアにうまく追いやられ、得点を伸ばせない。
本来のプレーができなかった原因を、伊藤拓磨ヘッドコーチは試合後に「固かった」と説明した。「プレーオフになると勝ちたい気持ちが先に出て、勝つためのプロセスに集中できなくなる。それで自分たちのバスケットができなくなりました。これがプレーオフなのだと思います」
第3ピリオド中盤、金丸に3ポイントシュートを決められ34-44。ここでトヨタ東京はようやく目を覚まし、反撃を開始した。2桁のリードを奪われて開き直ったことで固さが取れ、オフェンスが機能し始めたのだ。伊藤大司の3ポイントシュートを皮切りに、ギブスも当たり始め、チームに勢いが出て来る。
しかし、そのトヨタ東京の前に立ちふさがったのはアイシン三河のシックスマン、長谷川智也だった。トヨタ東京が猛攻で点差を縮めるたびに、長谷川に巧みなシュートを次々と決められ、突き放される。第4ピリオド残り2分5秒の時点でも、トヨタ東京が連続得点で59-64としたところで、長谷川にこの日4本目となる3ポイントシュートを決められた。
それでもトヨタ東京はあきらめず戦い続けた。残り1分50秒でアイシン三河が5ファウル。厳しく当たれなくなった相手に対し猛攻を仕掛けて得点を重ねる。その後にはアイシン三河のインサイドの要、アイザック・バッツがパーソナルファウル5つで退場。最後の最後でトヨタ東京に波がやって来た。
残り24秒で3点差(66-69)の場面、ファウルをもぎ取ったギブスがフリースロー1本を決めて67-69まで詰め寄る。そして2本目のフリースローが外れ、リバウンドの奪い合いに。トヨタ東京はリチャード・ソロモンが、ギブスが、さらには再びソロモンがリバウンドを取ってジャンプショットをねじ込もうとするが、アイシン三河も必死に体を張って十分なシュートを打たせない。
最後は金丸が根性でこぼれ球を拾い、ボールを抱え込んで試合終了。69-67、初戦はアイシン三河の勝利となった。
好調なベンチメンバーの積極起用が勝利を引き寄せた
試合後、アイシン三河の鈴木貴美一ヘッドコーチは勝因をこう語った。「点の取り合いになったらトヨタ東京を相手に勝ち目はないので、相手のオフェンスをどれだけ抑えるかでした。ディフェンス勝負というのは、最初から狙っていた展開。そのとおりになりました」
もう一つの勝因は起用法だろう。シックスマンの長谷川が好調と見るや、思い切って長い時間プレーさせた。比江島慎は明らかに体が重く、無得点に終わった。金丸も要所で3ポイントシュートを決めたが、相手に研究され思うようにプレーできていなかった。比江島と金丸に固執していたら、トヨタ東京の猛反撃の前に屈していたかもしれない。
長谷川、そして加藤寿一の起用について、鈴木ヘッドコーチはこう語る。「能力があるウチのエース2人も調子が悪いのであれば、好調なベンチメンバーを使うほうがいい。控えの選手が年間を通じて成長してくれたので、レギュラーシーズンよりも早く起用しました」
また、ポイントガードのポジションでは、レギュラーの橋本との併用でベテランの柏木真介も持ち味を発揮。セカンドユニットがコートに立った時間帯もパフォーマンスを落とすことなく40分間を戦い抜いたことも、接戦をモノにできた結果につながった。
昨年のファイナルではトヨタ東京とアイシン三河が戦い、4勝1敗でアイシン三河が優勝している。今回の顔合わせでもアイシン三河が先勝した。しかし、トヨタ東京も負けるわけにはいかない。去年とは違い、今年はレギュラーシーズン1位としてプレーオフに臨んでいるのだ。
伊藤ヘッドコーチは明日の試合に向けてこうコメントしている。「これがプレーオフです。ウチは厳しい状況に追い込まれてプレッシャーが掛かるたびに強さを見せてきました。今日は敗れましたが、明日はそれを伸びるきっかけにしよう、と選手たちには話しました。ウチはそれができるチームだと思っています。これでどんなプレーが出てくるか楽しみです」