OG・アヌノビー

守ってもアヌノビー、攻めてもアヌノビー

1点ビハインドの残り6秒。OG・アヌノビーはスローインのためにサイドラインに立つと、自分をマークするディアロン・フォックスがカール・アンソニー・タウンズへのパスコースを塞いだため、ジェイレン・ブランソンへのパスを選びます。その瞬間、フォックスはブランソンにダブルチームを仕掛け、アヌノビーはリターンパスを要求します。ですがブランソンはエースらしく自分での勝負を選び、目の前にいるビクター・ウェンバニャマの上を通すディープスリーを放ちました。

その次の瞬間、アヌノビーはオフェンスリバウンドに飛び込みます。自分をボックスアウトする選手は誰もいないため、十分な助走をつけて踏み切ったアヌノビーの手はリバウンドに反応したディラン・ハーパーとデビン・バッセルよりもわずかに高い位置でボールをとらえ、前へと跳んだ勢いでリングへと押し戻しました。

アヌノビーが少しでも減速して踏み切っていたら、あるいはブランソンのシュートがリング上でバウンドしていたら、NBAファイナルの歴史に刻まれた劇的な逆転のプットバックは生まれませんでした。すべてがアヌノビーのためにセッティングされたかのような、完璧なタイミングでした。

この試合そのものがアヌノビーのための展開だったようにさえ思えます。スパースが開始1分でチャレンジを成功させ、タウンズをファウルトラブルに追い込みます。ニックスは第1クォーターだけでセンターを6回も交代させており、ウェンバニャマへの対応に苦しみ、インサイドのカバー要員としてアヌノビーを長く起用することになりました。

このカバーリングは第3戦でも経験していたスパーズは、ニックスディフェンスの動きを見てアウトサイドに展開し、前半は3ポイントシュートが26本中14本成功の54%と決め続け、最大29点のリードを奪います。

タウンズが戻ってきた後半、アヌノビーの役割は起点となるフォックスへの対応がメインとなります。前半だけで3本の3ポイントシュートを決め、6アシスト0ターンオーバーだったフォックスのリズムを狂わせる役割を果たすだけでなく、パスで展開された先の3ポイントシュートへのクローズアウトも繰り返していきます。

後半のスパーズは17本の3ポイントシュートを放ちますが、そのうち6本にアヌノビーがプレッシャーを掛け、そのすべてが外れました。41分半をプレーしたアヌノビーが、ポイントガードにマッチアップしながら、パスが展開された先まで追いかけ、少しでも相手のミスを誘っただけでも驚異ですが、身体的なスタミナだけでなく、20点以上のビハインドがある中でも戦い続けるメンタル面のスタミナも驚異的でした。

その上でアヌノビー自身は後半に放った3ポイントシュート5本をすべて決め、オフェンスでも逆転のきっかけを作りました。そのうち3本はウェンバニャマが長い手を上げてクローズアウトしてきた中で決めており、タフショットでも決めきる強さを見せました。シリーズを通してゴール下でもウェンバニャマに真っ向勝負のダンクを決めており、強気な姿勢は全く崩れません。

そして1点ビハインドの残り14秒。ブランソンが打ったシュートが外れると、フォックスが咄嗟の判断でボールを前へと叩き出し、自らカバーに走ります。完全に遅れてしまったアヌノビーですが、あきらめずに追いかけてフォックスのレイアップをブロック。フォックスはシュートに行かずキープすべきだったのかもしれませんが、ここで追い付き、ノーファウルでブロックされるとは思いもしなかったのでしょう。

このブロックショットがあったからこそ、最後のプットバックも生まれました。守ってもアヌノビー、攻めてもアヌノビー。スタミナ、プレー精度、メンタルのすべてで強さを見せ付けた大活躍に加えて、大事な場面がアヌノビーのために巡って来たNBAファイナル第4戦でした。