Bリーグチェアマン大河正明『現場百回』vol.5「夢のアリーナは実現しつつある」

2019/05/14
Bリーグ&国内
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大河正明

1958年5月31日、京都府生まれ。2015年にサッカーのJリーグから新リーグ創設を目指すバスケ界へと舞台を移して組織再編を手掛け、川淵三郎初代チェアマンの後にチェアマンに就任。現在は「BREAK THE BORDER」をキーワードに、新たなプロリーグの盛り上げに尽力している。日本バスケットボール協会の副会長も兼任し、立ち遅れたバスケットボールの環境整備、強化に邁進する。高校生までバスケ部。

「全国でアリーナの『次はどうする』が考えられている」

──千葉ジェッツがミクシィとの資本提携を発表し、1万人規模のアリーナ建設を目指すと発表しました。他にもアリーナ新設の話がいくつか具体的になりつつあります。大河チェアマンの目指す『夢のアリーナ』が日本のあちこちにある、その実現が見えてきた感があります。

そうですね。まずは既存のアリーナをどのような努力で『夢のアリーナ』に近づけていくか。もう一つは新しいアリーナの計画。これらを総合的に見ると、まだ決まっているわけじゃないにしても、「次はどうするんだ」ということが真剣に考えられるステータスに入ったと思います。

もともとは新潟アルビレックスBBのシティホールプラザアオーレ長岡がそうですよね。Bリーグのアリーナ要件をどう満たそうかと考えていたところに、長岡市からの誘致を受けました。あれは、これから始まるBリーグへの期待感によりできたことでした。そういう意味でBリーグが3年たって、たくさんの地域から期待されるようになっています。

例えば栃木の宇都宮市では、人口50万人の行政として栃木ブレックスをどう生かすかに大きな関心があります。ブレックスアリーナ宇都宮も古くなってきているので、「次はどうするんだ」を真剣に考えています。新しいアリーナができた水戸市もそうですし、信州ブレイブウォリアーズを千曲市から受け入れようとしている長野市もバスケットボールに大きな関心を持っています。

来シーズンから静岡、岡山、佐賀もB3リーグに加わり、これでB1からB3で36都道府県になります。例えば佐賀バルーナーズの本拠地である佐賀市は2023年の国体に向けて7000人規模のアリーナを建設するので、この活用のためにバルーナーズに期待しています。また宮崎市では以前に一回チームが活動休止になっていますが、そんな中、アリーナを核とした町作りの構想があり、新しいチームを作って活用できないかという案があります。

ウィングアリーナ刈谷

「お金が足りないから出して、の理屈では成功しない」

──既存のアリーナで、大河チェアマンから見て面白い取り組みをしているのはどこですか?

行くたびに新しいチャレンジが見られるのはシーホース三河のウィングアリーナ刈谷ですね。センターの吊りビジョンだけじゃなく、ホームのゴール裏は立見席でコールリーダーが応援できるようになっていて、ベンチ向かい側の最前列はテーブル席で食事をしながら試合を見る席がある。アウェー側エンド最上段のいわゆる『堀りゴタツ席』は、好評で今シーズンから数を増やしました。あそこは本来は一番売りづらい場所なんだけど(笑)。

今シーズン途中からはアウェーエンド側には豪華シートにモニターまで付いた特別席ができました。物販も飲食も、毎年ものすごく進化している。既存の施設を居心地の良いアリーナにしていく、という意味では三河は先行しています。

──大都市ではないにせよ三河地区は人口が多く、アイシン精機のバックアップもあります。ただ、愛知県は中日ドラゴンズと名古屋グランパスがあって、バスケが強い土地柄でもありません。さらにはアリーナが駅から遠い。決して地の利に恵まれているわけではありませんよね。

アイシン精機というトップスポンサーがあって、そのお金があるから投資できるとも言えます。ただ、三河はチケットの有料率が90%を超えるところまで上がっています。要は、投資をしたことでチケット収入が伸びたり、アイシングループとは別のスポンサーを獲得している。それなりの事業計画を出して投資を呼び込み、それ以上のリターンを出しているところが偉い。「お金が足りないから出して」という理屈とは全く違うんです。それは鈴木秀臣社長を中心に、現場の頑張りがあります。

その一方で三河地区で5000人以上のアリーナを作る計画もあります。アリーナは多くのステークホルダーとの合意形成をする必要がありますが、年内には発表されるはずです。ここには今のウィングアリーナにはないVIPルームやラウンジもあって、一つの先進的な『夢のアリーナ』に近い感じになるでしょうね。

──逆に、もっと頑張ってほしいチームを挙げるとすれば?

今ちょうど三河の話をしたところなので、お隣の名古屋ダイヤモンドドルフィンズと三遠ネオフェニックスですね。三遠も三河と同じく駅から遠い難を抱えていて、三河と違って施設が古い。その中で頑張ってはいます。今度、豊橋市役所の隣にゼビオグループが中心になって、市が建設事業費を負担しないアリーナが建設される予定です。仙台のゼビオアリーナを一回り大きくした感じで、さらに進化したものができるはずです。だから三遠の場合は、施設は数年後に大きく変わります。bj時代はずっと浜松だったチームが豊橋に移って難しいこともあるでしょうが、もう3年なので大きな飛躍をしてほしい。

名古屋Dもアリーナに投資をしてほしいですね。ドルフィンズアリーナに行くと、ロールバックでせり出してきた席とコートサイド席の間がものすごく空いているのが気になります。ロールバック席は高さも足りなくて、2階席の最前列とも差がある。もっと前に出して高さを上げる客席を新たに用意できれば、三角形の底辺も高さも広がります。空いている部分があると臨場感も出ません。ドルフィンズアリーナはあの大きさと、名古屋のど真ん中という立地の良さがあるので、集客でレバンガ北海道ぐらい頑張ってほしいという思いがあります。

今の時点で入場者数が多いチームはアッパーに近づいています。リーグとして次の3年、4年を見据えた時には、三遠や名古屋Dに大きく入場者数を伸ばしてほしいと期待しています。

アルバルク東京

「アリーナが単体のビジネスとして成り立つのが理想」

──新シーズンに向けたライセンス交付の発表では、アルバルク東京が2022-23シーズンのホームアリーナを代々木第一体育館に決めたというのが驚きでした。バスケットボールだけでなく様々なスポーツで使用され、コンサートなどスポーツ以外のイベントでも大人気の施設です。

所有者である日本スポーツ振興センターによくご理解いただけたのだと思います。A東京がちゃんと説明したのもありますが、バスケットの認知度と集客力がBリーグ以前と比べてアップしたことも大きいのでしょう。アリーナ立川立飛がすでに満員に近い状況であることも、判断材料の一つになったはずです。

今の計画では2022-23シーズンだけですが、そこから始める計画なので1年では終わらないと思います。将来的には東京都内でのアリーナの新設に含みを残しながらも、代々木第一を使っていくことになります。言うまでもなく立地は最高ですから、毎試合満員にできれば大きなインパクトがあると期待しています。

──最初はどこもB1要件を満たすための5000人アリーナの確保に必死でしたが、それがクリアできればもっと大きなアリーナに関心を持ったり、集客や演出に力を入れたり、各クラブのチャレンジが新しい段階へと引き上げられます。さらに一歩抜け出すクラブの登場が待たれますね。

きっと出てくると思いますよ。水戸にできたアリーナは5000人収容で、B1クラブのアリーナと比較してもトップクラスのアリーナです。コンコースもしっかりしていて、物販もできます。国体まではそれでしのぎつつ、この先にロボッツがもっと強くなってB1に上がり、集客も見込めるようになれば、今はないボックスシートやラウンジを作る改修を民間のお金を含めてやることになると思います。

沖縄の新アリーナは1万人規模です。千葉も1万人規模のアリーナを考えている。これから計画されるアリーナにはNBAにはある食事ができるラウンジやボックス席といった付加価値が付くことになります。例えばボックス席なら年間を通じて売ることでチケット収入が上がるし、その部屋自体にネーミングライツが設定されていたりする。今までの体育館とは全く違う『夢のアリーナ』にもっともっと近づいていく。アリーナが単体のビジネスとして成り立つのが理想で、その実現もきっとできると考えています。

地方の中核都市までであれば、民間のマネーも呼び込みながら投資対象としてのアリーナが成り立ちます。サッカーのスタジアムでは大きすぎて無理でも、アリーナであれば単体で収支が見込めます。地方に行くのであれば、街づくりの一環として行政の資金に頼りながらやっていくアリーナになるでしょう。そこに違いはあれど、単にバスケットをやる発想だけのアリーナはもうないわけです。そのコミュニティの人たちの利便性とどう融合させるか、そこが大きな課題になりますが、Bリーグになってからの3年で、あらゆることが大きく変わっている実感があります。