「我慢ならない。リスペクトの欠如が一線を超えた」
J.B.ビッカースタッフは激怒した。ピストンズに対する審判の侮辱的な認識を改めさせねばならぬと決意した。「我慢ならない。リスペクトの欠如が一線を超えた」と彼は怒気をはらんだ声で語った。
今シーズンのコーチ・オブ・ザ・イヤーは、キャバリアーズをリーグ最高勝率へと飛躍させたケニー・アトキンソンで決まりだと言われているが、次点となると意見が分かれる。サンダーをより洗練されたチームへと鍛え続けるマーク・ダグノート、初めてのコーチキャリアでレイカーズを上位に導くJJ・レディックと並んで候補となっているのが、ピストンズを率いるJ.B.ビッカースタッフだ。
昨夏、ビッカースタッフはキャブズのヘッドコーチを解任された。着実に実力を伸ばしながらもプレーオフでは勝てない責任を取らされた形で、その是非は議論を呼んだが、アトキンソンがこれだけ確固たる結果を出している以上は力不足だったと言わざるを得ない。だが、彼の手腕がすべて否定されるわけではない。彼はすぐにピストンズに招聘され、再建チームをプレーオフへと導こうとしている。
才能はあってもそれをどう発揮すればいいのか分からない若手に、プロフェッショナル精神と規律を植え付け、ハードワークさせるのがビッカースタッフのやり方だ。これまでアグレッシブにはプレーしても、『当たって砕けろ』で文字通り砕けていたピストンズは、勝負どころでも粘り強さを発揮して勝てるチームへと変貌した。司令塔にしてエースのケイド・カニングハムの安定した活躍に加え、チームに存在した『甘さ』を払拭したビッカースタッフの手腕は評価されるべきだ。
ケイド・カニングハムが判定への抗議で退場に
ただ、ピストンズはまだ強豪として認められたわけではない。それが表面化したのが現地3月15日のサンダー戦だった。ホームゲームにもかかわらず、ジャッジはサンダー有利に働いた。実際にどうだったかは別として、デトロイトのファンを含むピストンズ側はそう受け止めた。
試合を通じてファウル数はほぼ同じだったが、フリースローの数はサンダーの22に対しピストンズが13と大きく差が開いた。個人ではカニングハムが1本、シェイ・ギルジャス・アレクサンダーは10本だった。そしてテクニカルファウルはピストンズに5つ出た一方で、サンダーには与えられなかった。
第3クォーター終盤にはカニングハムが立て続けに2つのテクニカルを取られて退場となった。ルーゲンツ・ドートがフロアに足を滑られて倒れたように見えたが、審判はアイザイア・スチュワートのファウルを宣告。カニングハムはこれにカッとなり文句を言ったことで退場となった。
その後、デニス・シュルーダーが司令塔を引き継ぎ、残り3分で2点差まで食らい付いたが、最後はシェイのクラッチ力に屈して107-113で敗れた。
試合後の会見でビッカースタッフは荒れに荒れた。選手たちが勝利に値するプレーをしているにもかかわらず、ジャッジに試合を台無しにされたことに猛抗議をした。「確かにウチはフィジカルに戦うスタイルで、際どいプレーもある。サンダーの選手は相手選手を倒したり、味方につまずいて転んだ時でもファウルだと言う。彼らもフィジカルにプレーし、ウチの選手に肘が入るシーンが何度もあった。それを見てくれと頼んだが、審判は全く見ていない。これはリスペクトの問題だ」
「私は情熱を込めて指導しているし、選手たちは全力で戦っている。そのスタイルでこのリーグに前向きな価値をもたらしているのだから、それなりにリスペクトされるべきだ。今日のジャッジにはリスペクトの欠片もなかった。常軌を逸していた」
こう吐き捨てたビッカースタッフは、メディアからの質問を待たずにボックススコアの用紙を丸めて立ち上がり、テーブルに投げつけて去っていった。