ケビン・デュラント

「キャリアの最後は自分の思うようなものにしたい」

サンズはここまで29勝33敗、プレーイン圏外の西カンファレンス11位。勝敗や順位よりも、十分な戦力を擁しながら攻守に機能する組み合わせを見いだせていないのが問題で、2月のトレードも戦力アップではなく試行錯誤をさらに難しいものにした印象がある。

そんな中、周囲の目線はここからどう巻き返すかではなく、今シーズン終了後の動きへと向けられつつある。あくまで噂レベルに過ぎないものばかりだが、そのいくつかはそれなりの信憑性を伴う。その中で注目すべきはケビン・デュラントの動向だ。チームトップの26.9得点を記録している36歳のエースは、移籍をある程度は思い通りに行ってきた。2023年2月にネッツから加入したのも、カイリー・アービングがトレードを要求してマーベリックスに去った後、すぐさまトレードを要求して成立した移籍だった。

サンダーを離れた2016年には大きな批判に晒された。アキレス腱断裂の大ケガからの復帰プロセスの途中でネッツに移籍し、サンズへと、彼はキャリアの節目となる移籍を自分で決断してきた。先日『The Draymond Green Show with Baron Davis』に出演したデュラントは、こんな言葉を発している。

「キャリアの最後は自分の思うようなものにしたい。キャリアについて僕が心配しているのはそれだけだ。その機会を得られない選手をたくさん見てきたから、僕は自分で選択したい」

先月、デュラントには古巣ウォリアーズから獲得の打診があった。サンズからオファーを伝えられた彼は、これを固辞しているが、その理由をこう明かしている。「まだシーズン途中だ。僕はサンズの連中と最後まで頑張ると誓ったようなもので、それを反故にはしたくない。トレードはビジネスとして冷静に見ているけど、移籍するにしてもオフシーズンに考えればいいと思っている」

話し相手は不仲と言われたグリーンだが、デュラントはこう続けた。「ドレイモンドとプレーするのが嫌なんだろうと言われたが、そんな雑音は気にしない。僕はただ最後までやり遂げたいんだ」と語り、続けて重要な思いを口にした。

「ウォリアーズに移籍した時、もしサンダーに残ったら大事な機会を逸してしまい、キャリアを通じて後悔するだろうと感じた。正確に何が起こるか分かっていたわけじゃないけど、大きな変化の時がやって来たと感じたんだ。ステフ(カリー)はすでにオールスターだったけど、僕が加入したことで神のレベルに到達した。僕も同じだと思うし、カイリー(アービング)だってレブロン(ジェームズ)と一緒にプレーすることで周囲の見方が全く別のものになった。特別な選手が次々と生まれてNBA自体を大きく成長させたのがあの数年だった」

ケビン・デュラント

ロケッツ移籍が実現するための条件はすべて満たす

デュラントほどの実力と実績を持つ選手は、自分の移籍をコントロールできる。トレードの話が来ればクラブからまず相談される関係性を彼は作り上げた。トレードに際して求めるのは、当然ながら有利な契約であり、優勝を狙えるチームであること。それに加えて彼は自分の移籍が大きな変化を生み出すことを望んでいる。

今の契約は2026年まで。最終年を残す今年のオフこそ移籍すべきタイミングであり、行き先は……ここまでの彼の要望とクラブ間で合意できる条件を考えると、ロケッツ以上のチームは出てこない。

ロケッツはジェームズ・ハーデンのトレード要求を機にチームを解体した。今は23歳のジェイレン・グリーンや22歳のアルペラン・シェングンという若くハードワークのできるコアがいて、指揮官イメイ・ユドカの下でタフに戦えるチームとして成長しているが、接戦を勝ち切るタレント力を欠く。デュラントが加われば、損なうものはほとんどないままハーフコートオフェンスの弱点を解消できる。その上でグリーンやシェングンをスーパースターへと飛躍させることも可能だろう。

1カ月前、ロケッツの本拠地トヨタ・センターにやって来たデュラントは「僕はロケッツのようなチームに大きな敬意を持っている」と語った。「数年間は苦戦したけど、ドラフトで良い素材を集め、責任感の強いコーチを招き、高い基準の下で戦っている。若いチームが飛躍する条件が揃っていて、そのことを僕は高く評価している。僕がNBAに来た時も若いチームからスタートしたけど、その雰囲気に似ている」

ユドカはデュラントにとって付き合いの長いコーチであり、その縁で昨年夏にはジェイレン・グリーンやジャバリ・スミスJr.と夏のトレーニングを一緒に行った。ロケッツは昨年夏にもサンズにデュラント獲得のオファーを出し、この時は詳細を話し合う段階までいかずに破談になったというが、今シーズンもサンズが機能しないままであれば、夏の話し合いは違う展開になり得る。

ロケッツはサンズを納得させるだけの条件を提示できる。何より大きいのは2025年、2027年、2029年のサンズの1位指名権を保有していることだ。ロケッツはサラリーの調整のために何人かの選手をサンズに送るが、それはコアメンバーではない。ベテランになってもまだまだ決定的な仕事のできるデュラントが加われば、ロケッツは将来有望なチームから優勝候補へと飛躍を果たすだろう。